【第2回~TCFDを旅する~】TCFDと欧州サステナブルファイナンス

【第2回~TCFDを旅する~】TCFDと欧州サステナブルファイナンス

TCFDを旅する ~サステナビリティを目指して~ 第2回:今後、色々なテーマを少しずつ取り上げることになりますが、今回は、TCFDと欧州サステナブルファイナンスというテーマのその1となります。

加藤 俊治

KPMG サステナブルバリュー・ジャパン/LEAD of TCFD/Taxonomy group

あずさ監査法人

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I.欧州サステナブル・ファイナンスに関するアクションプラン公表の背景

第1回(TCFDコンソーシアムがグリーン投資ガイダンスを公表)で触れましたようにTCFD提言は、気候関連リスクの開示に関するフレームワークです。そして同提言の前提はパリ協定でした。

パリ協定、地球温暖化やそれによる異常気象、自然災害の増加などに対応していくにはコストがかかることは想像に難くないと思います。必要なコストを公的資金で全て賄うことは難しく、民間資金を導入することになります。民間資金を導入するとしても、資金拠出する民間側としては本当にその資金が地球温暖化対策などの環境問題や社会問題等に投入されるのか、不安になる場合があり得ます。大量の民間資金を環境問題等に代表されるサステナビリティに関するプロジェクト等に確実に引き込むためには、大きな仕組みが必要です。

この仕組みとして欧州では、欧州委員会(EC)がサステナブルファイナンスに関するアクションプラン(Action Plan : Financing Sustainable Growth 以下、欧州アクションプラン)を2018年3月に公表しています。欧州では、パリ協定に基づいて2030年までに温室効果ガスの排出を1990年と比較して40%削減することを目標としており、そのためには毎年1,800億ユーロが必要とされており、欧州アクションプランはそこに民間資金を引き込むための枠組を提示しています。

TCFD提言への対応もその中に含まれています。欧州アクションプランに基づいて、ECは非財務情報の開示ガイドラインを補足するものとして2019年6月に気候関連情報の開示に関するガイドラインを法的拘束力のないnon-bindingで、新たに法的義務を課すものでない(no create any new legal obligations)ものとしつつも公表しており、TCFD提言の11項目を網羅した内容になっています。
欧州はこの分野で最も先進的な取組を行っており、その動きを概観することは今後のグローバルな動向を予測するうえで有益ではないかと考えます。
以下では、欧州アクションプランのもとになったECのサステナブルファイナンスに関するハイレベル専門家グループ(HLEG)が2018年1月に公表した最終報告書(以下、HLEG最終報告書)からお話を始めさせて頂きます。

II.HLEG最終報告書の概要

1.8つのKey recommendations

HLEG最終報告書では、その後の欧州サステナブルファイナンスの骨格となる8つのKey recommendationsを冒頭で掲げています。

(1)EU共通タクソノミーの確立
タクソノミーとは分類という意味です。
民間資金をサステナビリティに関連したプロジェクト等に誘導するためには、投資家等のマーケット参加者に対して、「何がサステナブルなのか」を明確に提示する必要があります。それが明確でないと、サステナビリティに貢献するための投資資金がそうでない投資プロジェクトに投入される(いわゆるグリーンウォッシュ)ことになり、投資家等に不測の損害をもたらすリスクが生じます。

そこでEU共通タクソノミーを設定するによって「何がサステナブルなのか」を明示することが必要であると考えられました。

主な提言

  • 2018~2019年までにタクソノミーを開発する。
  • サステナビリティに関連する法令・基準では、タクソノミーを使用する。

(2)長期投資とサステナビリティ選好度に関する各市場参加者の役割の明確化
投資家の中にはESG投資を重視し、サステナブルな投資プロジェクト等に資金投入することを積極的に推進するケースがあります。そこでサステナビリティに関する選好度をインベストメントチェーン全体で活用するために、各市場参加者のサステナブルファイナンスにおける役割を明確化することになりました。

主な提言

  • 年金基金は加入者・受益者等のESG要素を含む広範な顧客利益と選好度を理解する。
  • アセットマネジャーは、ESG要素を含む顧客利益と選好度を理解する。またリターン見込、リスクなどの情報を顧客に提供する。
  • アセットオーナー、投資仲介業者は、顧客等のESG選好度が投資戦略に反映されているか等に関する情報を開示する。

(3)サステナビリティに係るリスクと機会に関する情報のディスクロージャールール整備
事業会社の株式に投資する場合も、サステナブルな投資プロジェクトに投資する場合もその投資対象にどのようなリスクがあるのかを投資家が理解するためにディスクロージャーは重要です。開示されていなければ、投資リスクを理解できないことから、その投資案件には資金が集まらない可能性が高くなります。

そこでサステナビリティに配慮した長期の投資意思決定には、長期のサステナビリティに関するリスクと機会に関するディスクロージャールールの整備が必要と認識されました。このHLEG最終報告書が最終化される前にTCFD提言が既に公表されていたことから、以下のような提言がなされました。

主な提言

  • EUレベルでTCFD提言に賛同表明する。
  • TCFD提言に準拠した開示、その他のESGに関連した任意の開示を推進する。
  • 非財務情報開示について、EUがグローバルなリーダーシップを発揮する。

(4)個人投資家向けアドバイスの充実
個人投資家は機関投資家と異なり、投資案件に関する十分な情報を収集することが難しくなります。そこで投資アドバイスが必要になるのですが、その際にESG選好度などを考慮することを求めるものです。

主な提言

  • その投資がどのようにサステナビリティに関連しているのかを投資アドバイスの際に常に確認できるように制度を整備する。
  • グリーンラベルを確立することで、個人投資家による商品選別を推進する。

(5)グリーンボンド等の基準の整備
サステナビリティに関する投資対象としてグリーンボンドは最も代表的なものです。このグリーンボンド基準を欧州が整備することで、サステナブルファイナンスを推進することを目指すことになりました。

主な提言

  • 上記のEU共通タクソノミーの検討と並行してEUのグリーンボンド基準を開発する。

(6)「欧州サステナブルインフラストラクチャー」の設立
ECのユンケル委員長が2014年に提起したユンケルプランなど欧州には巨大な投資計画が作られてきた経緯があります。これに倣って、サステナブルファイナンスについても大きなストラクチャーを作ってこれを推進しようとする動きです。

主な提言

  • 欧州サステナブルインフラストラクチャーを設立することで、サステナブルなインフラプロジェクトへの投資を加速する。

(7)ガバナンスとリーダーシップ
サステナブルファイナンスを担う金融機関等に対して、サステナビリティの視点からのガバナンスの強化とリーダーシップの発揮を求めるものです。

主な提言

  • 金融機関の取締役・取締役会がサステナアビリティに関するリスクに対処できるように、取締役等の選任に際して適格性の基準を見直すことを検討する。

(8)サステナビリティに関連した欧州金融当局の監督等の見直し
サステナブルファイナンスを契機として、その推進に適合するように金融当局の監督行政等を見直すものです。

主な提言

  • 投資家の投資目的と投資期間のミスマッチの解消をモニタリングする。
  • EU加盟国間で監督行政にバラツキが生じないようにシングルルールブックに基づく監督行政を行う。

ご紹介:TCFD及びEUタクソノミーに関するKPMGジャパンのサービス等

KPMGジャパンでは、GSDアプローチによるTCFDアドバイザリーサービスを提供しています。
また、EUタクソノミーに関するご相談を受け付けています。
詳細は、ページ内の「お問合せフォーム」もしくは「ご依頼・ご相談 RFP(提案書依頼)」からお問い合わせください。
 

※ GSDアプローチとは、Gap analysis(TCFD最終提言とのギャップ分析)、Scenario analysis(シナリオ分析)、Disclosure analysis(開示内容・手法の妥当性分析)を指します。

執筆者

KPMGジャパン
コーポレートガバナンスCoE/TCFDグループ
テクニカルディレクター 加藤 俊治

TCFDを旅する ~サステナビリティを目指して~

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