「コロナ時代のBCP」第3回。想定シナリオ以外の事象が起きた時や、複数の災害が同時発生した際にも有効なオールハザードBCPの策定について解説します。本連載は、日経産業新聞(2021年4月~5月)に連載された記事の転載となります。以下の文章は原則連載時のままとし、場合によって若干の補足を加えて掲載しています。

この新型コロナウイルス感染症(COVID-19)下で大地震が発生したらどう対応すべきか。この問いに自信をもって答えられる日本企業はどれくらいあるだろうか。長期化する新型コロナ禍との戦いは、複合災害への対策の必要性を浮き彫りにした。いま企業には、複数の災害が同時発生した際にも有効なBCP(事業継続計画)、すなわち「オールハザード(全リスク対応型)BCP」の策定が求められている。

2011年3月11日に発生した東日本大震災以降、多くの企業でBCPが策定されたが、その大半は「事象別BCP」であった。事象別BCPとは地震や風水害、感染症などのリスク事象別に、想定シナリオを作り対応策を策定するものだ。この事象別BCPはその性質から、想定シナリオ以外の事象が起きた時や「コロナ禍における大地震」といった複合災害に対応できないという欠点がある。
また、複合災害について想定し得るシナリオをできる限り用意して事象別BCPを策定しようとしても、膨大な時間とコストがかかる。さらに、そうした努力をしても、発生し得る複合災害全てを網羅することは不可能といえる。

この課題に対応するのが、「オールハザードBCP」、すなわちリソース(資源)ベースBCPへの転換だ。リソースベースBCPとは、個別のリスク事象によらず「経営リソースごとにどのような影響が発生するか」に着目して計画を策定することで、複合災害発生時にも「想定外」を極力無くしていくアプローチである。経営リソースとは要員(人)、調達機能、製造機能、物流機能、システム、電力などを指す。

リソースベースBCPの策定の流れとしては、次の3ステップがある。

  1. 災害時でも実施しなければならない、企業にとって重要な事業および業務を洗い出す。
  2. その重要事業・業務を遂行するために必要な経営リソースを洗い出す。
  3. それぞれの経営リソースが不足または停止した際の事前・事後対応策を検討する。例えば、このコロナ禍では人的リソースが圧倒的に不足することが予見されるため、特にリモート対応を万全にしておくことも重要である。

とはいえ、1からリソースベースBCPを策定するのは手間がかかる。まずは既存の大地震用のBCPをベースにすることをお勧めする。大地震はあらゆる経営リソースに影響が生じるので、そのために作ったBCPの要素を一般化することで効率的に「オールハザードBCP」を策定できる。
その際、リスク事象の発生から数日~1週間程度までの初動対応はリスクの種類によって必要な内容が異なるため、個別にガイドラインなどをまとめておきたい。重複する要素は「オールハザードBCP」に集約し、リスク事象別の初動対応ガイドラインは随時種類を広げていく方法が望ましい。

このようにBCPの策定方法を変えることで、「想定外」が発生した際も柔軟に対応できる企業へと変革することができる。
 

執筆者

KPMGコンサルティング コンサルタント 谷 桃子

日経産業新聞 2021年4月20日掲載(一部加筆・修正しています)。この記事の掲載については、日本経済新聞社の許諾を得ています。無断での複写・転載は禁じます。

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