タイ:新型コロナウイルスに対する救済措置(2)

タイニューズレター - タイ政府より公表された、新型コロナウイルスに対する追加の救済措置の概要をお知らせします。

タイ政府より公表された、新型コロナウイルスに対する追加の救済措置の概要をお知らせします。

1. 源泉税率の軽減措置

源泉税の軽減措置について、3月27日付で財務省が「Ministerial Regulation No. 361」を公布しました。前回のニューズレター「タイ:新型コロナウィルスに対する救済措置(1)」で概略をお伝えしましたが、タイ国内にて下表に掲げる所得の支払を行う場合、通常3%の源泉徴収を行うべきところ、2020年4月1日から2020年9月30日までの期間については1.5%、2020年10月1日から2021年12月31日までの期間については、源泉税の申告・納税をオンライン(“e-Withholding Tax system”)で行う場合に限り、2%に引き下げられます(オンラインでない場合は通常どおり3%)。なお、当該源泉税の軽減は、慈善団体への支払には適用されません。

図表 源泉税率の軽減措置

2020年10月1日~2021年12月31日の期間において、2%の軽減税率が適用されるためのオンライン申告・納税(“e-Withholding Tax system”)とは、金融機関等が行う支払代行サービスにおいて、金融機関等が会社の代理人として源泉徴収を行い、会社に代わって源泉税をオンラインで歳入局に納付する制度をいいますが、この制度に関する法律はまだ施行されていません。

なお、オンラインか否かに関わらず、2020年4月1月~9月30日の期間中に上記の報酬の支払を行う場合には、1.5%の軽減税率が適用されます(3月以前の請求書に基づく支払であっても、支払が4月以降であれば1.5%の軽減税率が適用されます)。これにより、所得(報酬)の受領者にとってはキャッシュフローの負担が軽減されることになります。

2. 非上場会社の法人税の確定申告書(PND.50)の提出・納付期限の延長

法人税の確定申告書(PND.50)の提出・納付期限は、期末日から150日以内とされていますが、2020年4月1日から8月30日までの期間中に提出・納付期限を迎える非上場会社については、その提出・納付期限が一律8月31日まで延長されることになりました。これに伴い、法人税の免税恩典の使用をBOIに申請する期限も一律7月31日まで、もしくは法人税の確定申告書の提出期限から30日前までに延長されることになりました。年間売上が2億バーツ以上の法人に要求される「Transfer Pricing Disclosure Form」(法人税の確定申告書に添付)の提出期限も一律8月31日まで延長されます。

これにより、2019年12月決算の非上場会社の法人税の確定申告書の提出・納付期限は、3ヶ月間延長される形となりましたが、2020年3月決算の非上場会社には、実質的に延長が認められていません。これについては、今後の状況に応じて、別途特別な措置が公表されるものと考えられます。タイ証券市場に上場している上場会社には、決算期に関わらず、法人税の確定申告書(PND.50)の提出・納付期限の延長は認められていません。

3. 非上場会社の法人税の中間申告書(PND.51)の提出・納付期限の延長

法人税の中間申告書(PND.51)の提出・納付期限は、半年経過後2ヶ月以内とされていますが、2020年7月1日から9月29日までの期間中に提出・納付期限を迎える非上場会社については、その提出・納付期限が一律9月30日まで延長されることになりました。

これにより、2020年12月決算の非上場会社の法人税の中間申告書の提出・納付期限は、1ヶ月間延長される形となりましたが、2021年3月決算の非上場会社には延長が認められていません。これについても、今後の状況に応じて、別途特別な措置が公表されるものと考えられます。タイ証券市場に上場している上場会社には、決算期に関わらず、法人税の中間申告書(PND.51)の提出・納付期限の延長は認められていません。

4. 個人所得税の確定申告書(PND.90, 91)の提出・納付期限の追加延長

個人所得税の確定申告書(PND.90, 91)の提出・納付期限は、翌年の3月31日とされています。2019年分の確定申告書の提出・納付期限は、すでに2020年6月30日までの延長が認められていましたが、個人の負担を軽減するために更に2ヶ月延長され、8月31日までとなりました。

5. 社会保険料の申告書の提出・納付期限の延長

社会保険料の申告書の提出・納付期限は、翌月の29日までとされていますが、2020年3月~5月分の申告書の提出・納付期限について、以下の通り延長されました。

  • 2020年3月分:2020年7月15日まで
  • 2020年4月分:2020年8月15日まで
  • 2020年5月分:2020年9月15日まで


また、2020年3月から8月までの期間、雇用主と従業員(被保険者)による社会保険料の拠出負担割合が、すでに5%から4%に引き下げられましたが、2020年3月~5月分について、更に従業員による社会保険料の拠出負担割合が4%から1%に引き下げられました。この結果、雇用主と従業員による社会保険料の拠出負担割合は、以下の通りとなります。

  • 2020年3月~5月分:雇用主4%、従業員1%
  • 2020年6月~8月分:雇用主4%、従業員4%
  • 2020年9月以降分:雇用主5%、従業員5%(通常通り)

6. 非上場会社の株主総会及び財務諸表の提出

民商法では期末日から4ヶ月以内に定時株主総会を開催し、財務諸表の承認を行うことを要求しています。新型コロナウイルスの感染拡大を要因として定時株主総会の開催を遅延する場合には、遅延理由を記載した書面を直近の株主リストとともに、配達記録付郵送またはオンラインにて商務省事業開発局へ提出する必要があります。なお、その書面の標準フォームは、以下の商務省のウェブサイトからダウンロードできます。
Department of Business Development Ministry of Commerce(PDF)

また、定時株主総会にて承認を受けた財務諸表は、その定時株主総会の日から1ヶ月以内に商務省事業開発局へ提出しなければなりませんが、上記により定時株主総会の開催が遅延した会社については、財務諸表の提出期限も、その遅延して開催した定時株主総会の日から1ヶ月以内とされます。

KPMGのコメント

今後の状況次第で、更なる特別措置が公表されると考えられます。アップデートがありましたら、再度ニューズレターとしてお知らせいたします。

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