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プロセスマイニングで変わる業務改善とBPMの可能性

プロセスマイニングで変わる業務改善とBPMの可能性

業務改善の手法である「BPM(Business Process Management)」は、業務プロセスや業務システムを見直し、最適なプロセスを目指し改善を続けていく取り組みのことです。プロセスマイニングをBPMに取り入れることで、新しいBPMの可能性が見えてきます。今回は、プロセスマイニングで変わるBPMの世界について紹介します。

ヒアリング依存の調査からの脱却

BPMを進めるにあたり、まずは業務プロセスの現状を把握しなければなりません。一般的に業務プロセスの把握は、業務担当者など対象の業務をよく知る人にヒアリングし、それに基づいて業務プロセスをチャート化して整理。さらに矛盾点を洗い出し、必要であればまた別の担当者や別の部署にヒアリングするといった具合に、ヒアリングと整理を繰り返して進めていきます。
このように現状の把握までは、非常に困難を極めます。特に、購買や営業など、定型化しにくいフロントエンド業務の場合はなおさらです。根気がいる作業を一歩一歩積み重ねていきます。
地道に作業を続けてもうまくいかない大きな問題も潜んでいます。ヒアリングされる人は、本当に現場をよく知っている人なのか、現場のすべてを知っている人なのか、その人が知らない業務プロセスはないのかという問題です。ヒアリングの答えが二転三転することも、きちんと説明できる人がいないことも、往々にしてあります。

つまり、ヒアリングの結果として浮かび上がった現状は、あやふやなものに立脚した非常に不確かなことも多く、現状把握が正確にできているとは言い難い状況なのです。
一方、イベントログ(事実)に基づいて業務の流れのすべてを可視化できるプロセスマイニングを導入していれば、現状を事実に基づいて把握できます。実態通りの業務プロセスを可視化できるわけです。
プロセスマイニングの導入により、経営者にとっては、精度の低い情報収集手段になりがちなヒアリングに対するリソース(人員、時間、予算)の削減が期待されます。また、ヒアリングでの現状把握と課題の設定に自信を持てなかったBPM推進担当者は、事実に基づいた現状把握と課題設定が可能になるでしょう。もちろん現場の担当者は、ヒアリングそのものやヒアリングのための準備作業から解放されます。

仮説に基づくKPIからの脱却

一方、BPMにとって重要な意味を持つKPIは、プロセスマイニングの導入でどう変わるのでしょうか。
BPMでは、業務プロセスの改善・改革が期待通りに進んでいるかを検証するためにKPIの設定が重要な役割を果たします。KPIの数値は改革・改善の羅針盤であり、それに基づいて後続の施策の検討や意思決定が行われます。
しかし、現状把握と課題の設定に確信を持てない状況で設定されたKPIは、果たして評価指標として信用するに足るものなのでしょうか。その点、プロセスマイニングが導入されていれば、業務の実態に即したKPIを設定できます。
例えば、ある購買プロセスでリードタイム(発注から納品までに必要な時間)が長い原因は リワーク(再処理)にありそうだとなった場合、プロセスマイニングを導入していれば、業務の流れのすべてが可視化されているため、数値としてリワーク率を確認できます。これまでなら“原因がありそう”という仮説だけで設定されがちだったKPIが、プロセスマイニングなら数値で確認し、“原因がある”と確信した後の設定が可能になるわけです。
結果的にプロセスマイニング導入前後で、設定されるKPI自体は変わらないかもしれません。しかし、仮説で設定されるKPIで実施されるBPMと、原因が確実に特定された後に設定されたKPIで実施されるBPMでは、その信頼性が大きく異なることは明白です。そして、このことはBPMに取り組もうとする経営者に大きな自信を与えてくれるでしょう。

業務プロセスそのものの分析

従来のデータ分析は、プロセス活動の結果が蓄積されたものでした。しかし、今ではプロセスマイニングによりプロセスをシステム上に再構築することができるようになりました。

さらにプロセスマイニングは、実態に即したKPIを設定できるようにするだけでなく、プロセスにひも付いたKPI分析を可能にします。データ分析に“プロセス”という画期的な分析軸を追加できるのです。
さきほどのリワーク率の話なら、プロセスマイニングを導入することで、どんな業務プロセスが含まれており、どのクライアントとのやりとりでリワーク率が高くなるのかを分析できます。例えば、リワークが発生した業務に含まれていたプロセスをランキング形式で表示させることで、“価格改定”が伴うとリワーク率が飛躍的に高くなるといったことが特定できるようになります。ここまで原因を絞り込めれば、具体的な対策を取りやすくなることは言うまでもありません。
これまで業務プロセスに関しては、標準的な業務の流れ(標準プロセスモデル)を設定して、ヒアリングでそれに沿っているか、沿っていないかを確認する程度のことしかできませんでした。一方、プロセスマイニングを導入すれば、業務の流れをさまざまな視点で分析可能になり、業務プロセスに対しても恣意性なく客観的な検証ができるようになります。
BPMを推進する立場の管理者にとって、データ分析に“プロセス”という分析軸が加わることは強力な武器になることでしょう。また、現場の担当者も改善するポイントが絞り込まれているので、明確な目的を持ってBPMに取り組むことができるようになるはずです。

さて、これまでは業務の流れの可視化を中心にプロセスマイニングの概念や効用について紹介してきました。しかし、プロセスマイニングの守備範囲はこれだけにとどまりません。イベントログに基づいたプロセスの可視化は、監査はもちろん、経営コンサルティング、税務、アドバイザリー、フォレンジック、ITアドバイザリーなどの高度なプロフェッショナルサービスにも活用できます。次回は、プロセスマイニングと私たちプロフェッショナルファームが提供する、全方位のサービスについて紹介します。

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