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コンクリート壁に投影された光を見上げる女性

監査を変えるプロセスマイニング

監査を変えるプロセスマイニング

企業が自らの経営や財務の状況を公表するために作成する「財務諸表」。その数字に“お墨付き(合理的な保証)”を与えるための監査が「会計監査」です。会計監査では、監査人は数字が生成されるプロセスを正確に理解し、検証します。その過程で大きな武器になるのが、プロセスマイニングです。今回は、プロセスマイニングが会計監査をどう変えるのかを紹介します。

業務プロセスの理解から始まる会計監査

企業などの法人は、株主、投資家などに対して自社の経営や財務の状況を報告するため、毎年「財務諸表」を作成します。ただし、企業自らが作成するものであるため、上場企業または一定規模に達する企業は、公認会計士・監査法人などの会計監査人から第三者の立場で数字の正当性のチェックを受けることが義務付けられています。財務諸表に記載されている数字が株主、投資家の判断を誤らせるほど間違っていないことを確認し、“お墨付き(合理的な保証)”として「監査報告書」を発行します。
しかし、当然ながら最終的な財務諸表の数字だけを眺めていても、正しいかどうかは判断できません。そこで、会計監査では下記のステップを踏んで、財務諸表の数字の正当性を確認しています。

  • 会計監査の手順 
  1. 財務諸表の数字が、どのような業務プロセスやシステムへの入力を経て、生成されるかを把握する。
  2. 1の業務の流れやシステムへの入力で、数字の誤りが起こる誤謬や不正などのリスクがないかを検討する。
  3. 2の数字の誤りや誤謬、不正などを低減されるために、社内でどのようなルール化や取り決め(内部統制)が行われているかを確認。その内部統制が有効だと判断したら、1年間有効に機能していたかをサンプルベースでチェックする。
  4. 3までを十分に検証した上で、期末の財務諸表の数字をチェックする。

このように改めて会計監査の手続きを順序立てて説明したのは、1の業務プロセスを把握することが、会計監査では極めて重要であることを伝えたかったからです。業務のプロセスが正しく把握できなければ、2の誤謬や不正などのリスクを正しく検討できません。当然、3の内部統制の確認も意味を成さなくなるのです。

プロセスマイニングで業務プロセスを正確に把握

公認会計士・監査法人による監査の実務指針を定めた「監査基準委員会報告書」の315の17項には「監査人は、財務報告に関連する情報システム(関連する業務プロセスを含む。)について理解しなければならない」と明記されています。実務指針としても、情報システム、業務プロセスの把握の重要性が記されているわけです。
ここまで説明してきたように、会計監査において業務プロセスの把握は重要である一方で、その実現はこれまで非常に困難でした。『プロセスマイニングで変わる業務改善とBPMの可能性』でも紹介しましたが、会計監査においても、業務プロセスの把握はヒアリングに頼らざるをえなかったからです。ヒアリングという属人的な手法は、回答に不確かな内容が含まれていたり、回答自体が二転三転したりすることもあり、業務プロセスを正確に把握できているという確信を持つことが難しくなります。
そこで、期待される手法がプロセスマイニングです。プロセスマイニングは、事実(イベントログ)に基づいて“業務の流れ”をすべて可視化します。財務諸表の数字が生成される業務プロセスにプロセスマイニングを導入すれば、その業務の流れのすべてを可視化できるので、イレギュラーな手続きで計上された数字の業務プロセスも把握できるようになります。つまり、会計監査の手順1の業務のプロセスの把握だけでなく、2の誤謬(ごびゅう)や不正などのリスクの検討にも役立つわけです。さらに、会計監査を受ける企業にとっては、イベントログの元になるデータさえ渡してしまえば、従来のようにヒアリングための資料を作成するなどの手間が削減できるメリットも生まれます。プロセスマイニングを導入することによって、監査対象の企業は、信頼性が高くなるだけでなく、効率的で負担の少ない会計監査を受けることが可能になるのです。

さまざまな分野に活用できるプロセスマイニング

会計監査だけでなく、内部監査においてもプロセスマイニングは有用です。内部監査は、非効率な業務の改善、過重労働などのコンプライアンス違反や不正経費の調査など、会計監査よりも目的が広範ですが、業務プロセスの理解が必須で、正確なリスク評価が求められる点は会計監査と同じだからです。
ここまで監査におけるプロセスマイニングの有用性を紹介してきましたが、前回紹介したBPM(Business Process Management)を含めて、その活用範囲は多岐に渡ります。現在プロセスマイニングは、経営コンサルティングから、税務・財務・ITなどのアドバイザリサービス、不正調査の分野などへの活用が期待されています。
これまで会計監査は、財務諸表の数字の正当性を証明する監査報告書を受け取るために実施されてきました。しかし、プロセスマイニングを導入することで、企業は監査法人のようなプロフェッショナルファームから、監査報告書だけでなく、自社内では気づけなかったようなさまざまなインサイトを受けとれる可能性が開けるのです。

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