RPAに続く業務プロセス改革、「プロセスマイニング」への期待

KPMGジャパンが4月に東京で開催したセミナーの参加者へのアンケートから、業務プロセス改革に向けた課題意識の高さが浮き彫りになりました。

KPMGジャパンが開催したセミナーの参加者へのアンケートから、業務プロセス改革に向けた課題意識の高さが浮き彫りになりました。

業務改革の新手法「プロセスマイニング」を解説するセミナーを開催

近年、就労人口の減少や働き方改革の進展などを背景に、国内のあらゆる産業分野で業務プロセスの改革が急務となっています。そのための手法として、定型業務を自動化するRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)への注目が高まっていますが、ノウハウが未整備なこともあってか、まだ効果は限定的というのが現状です。

こうしたなか、KPMGではRPAに続く新たな業務プロセス改革手法とされる「プロセスマイニング」をテーマにしたセミナーを開催しました。プロセスマイニングとは、各種システムのログデータの蓄積によって業務プロセスの処理パターンを可視化することで、非効率業務など改善すべきポイントを明確にする手法のこと。RPAの効率的・効果的な導入を支援するツールとしても期待されています。

各業界から参加、監査部門や企画部門が中心

参加者は、業種別では製造業が約3割と最も多く、モノづくり産業における業務プロセス改革への注目度の高さを物語っています。部署別では監査部門や企画部門を中心に幅広い部署から参加されており、役職別では、執行役員なども含めた経営層が1割を占めました。こうしたデータから、業務プロセス改革は、古くからある経営課題ですが、依然として関心が高く、新しい効果的な方法論を探索している様子が見て取れます。

グラフ:参加者内訳(N=138)

グラフ:参加者内訳(N=138)

参加者の5割が業務品質改善や内部統制強化への期待を語る

セミナー参加の目的としては、「業務品質の改善」が回答の5割近くに達しており、「事務処理」を筆頭に「購買」「営業」など幅広い業務プロセスにおいて品質や効率の向上を高めていくことが重要課題と認識されていることが分かりました。

一方で、注目すべきなのが「不正リスクへの対応」「内部監査の高度化・効率化」など、内部統制に関する回答の多さです。ここから考えられるのは、競争環境の厳しさだけでなく、コーポレートガバナンスに対する社会的要請の高まりもまた、業務プロセス改革の大きな要因となっているということです。

グラフ:プロセスマイニングツールを活用したい領域や業務プロセス(N=113、複数回答可)

グラフ:プロセスマイニングツールを活用したい領域や業務プロセス(N=113、複数回答可)

プロセスマイニングを活用したい背景には多様な回答が寄せられましたが、なかでも目立ったのがRPAに関する回答です。特に、「RPAを推進しているが、業務のムダがどこにあるか判然としないのがネック」など、その活用ノウハウが確立されていないことを窺わせる回答が多く、プロセスマイニングが注目される大きな理由の1つに、RPA推進上の課題を解決するためのツールとしての期待があることが分かります。

このほか、「評価者ごとに個人差が出がちな判断基準を統一したい」「業務プロセスのバリエーションが豊富で課題把握が困難」など、業務改革を進める上で多くの課題に直面している様子が伝わってきます。これらの声を踏まえると、企業に問われているのは「不定型かつ複雑な業務プロセスをいかに定型化するか」「その品質や効率性を評価する基準やルールをいかに構築するか」といったテーマです。今回のセミナーへの反響から、プロセスマイニングが、その解決策として大きな可能性を秘めていると言えるでしょう。

9割以上が「役立った」と評価するものの、導入までの課題は多い

セミナーの感想としては、「とても役に立つ」「どちらかといえば役に立つ」を合わせて肯定的な評価が9割を超えています。一方で、外部専門家の起用にはまだ慎重な企業が多く見られることから、業務プロセス改革に関心はあるものの、外部専門家を活用するようなプロジェクトを組成し、早急に取り組むほどの確信を持つには至らず、検討候補の一つとしてリサーチしている状況のようです。

その背景には、RPAなど既存の改革手法に着目したものの、思うように導入が進まない、導入しても効果が見えないといった反省もあるのかもしれません。プロセスマイニングが定着するためには、そのメリットや導入手法、そのために必要な社内基盤などについて、具体的な事例をより深く理解していく必要があるでしょう。

グラフ:セミナーの感想(N=113)

グラフ:セミナーの感想(N=113)

グラフ:外部専門家起用の有無(N=113)

グラフ:外部専門家起用の有無(N=113)

講演内容については、「人の主観に頼らないログデータでの分析は有効だと思う」など、プロセスマイニングに対する期待感を示したコメントが多く見られました。
一方で、「アナログ的な業務プロセスが多い」「ツールを活用できるデジタル人材が社内にいない」などを理由に「導入は時期尚早」とするコメントもありました。また、RPAと同様、緻密な準備と計画、そして導入するための仕組みがあってはじめて効果を発揮するという慎重な意見もあり、プロセスマイニングを活用するには一定の社内基盤が必要との認識が見られます。

まとめると、

  • 業務効率化を支援する新たな手法「プロセスマイニング」は、幅広い業種の企業から注目されている。
  • プロセスマイニングに注目する部署は多様だが、特に効果が期待されているのが業務の効率化と内部統制の強化。
  • 具体的な導入に向けては、より具体的な情報収集や社内基盤が必要。

今回のセミナーで明らかになったように、業務プロセスの可視化による業務改革は、業種を問わず喫緊の課題であり、RPAに続く手法として、プロセスマイニングに大きな期待が寄せられています。一方で、プロセスマイニングを導入するためには、より詳細な情報収集や綿密な計画が欠かせません。

KPMGジャパンは今後も、プロセスマイニングを駆使した業務プロセス改革について、きめ細かな情報を提供いたします。

お問合せ