病欠期間中の有給休暇の権利に関する破毀院の判決が財務諸表に与える影響

フランス破毀院は、欧州連合法に基づき従業員は病欠期間中も有給休暇を獲得する権利があるとする、フランス国内法に逆らう判決を下しました。これにより企業は、有給休暇に係る負債を見積るに際して、病欠期間中の従業員に対する有給休暇も過去に遡って考慮することが求められます。

フランス破毀院は、従業員は病欠期間中も有給休暇を獲得する権利があるとする、フランス国内法に逆らう判決を下しました。

フランスの破毀院は、2023年9月13日、欧州連合法に基づき、従業員は病欠期間中も有給休暇を獲得する権利を有すとする判決を下しました。これは、病欠期間(業務に起因する1年間の病欠期間を除く)は、有給休暇獲得計算に考慮しないとするフランス国内法を覆すものです。当該判例により、病欠が業務に起因するか否かに関わらず、病欠期間中の全ての従業員に有給休暇獲得の権利があることが明確化されました。

当該判例は直ちに適用されるため、企業は次の財務報告において有給休暇に係る負債 (IAS第19号)を見積もる際に、病欠期間中の従業員に対する有給休暇も考慮することが必要となります。また、当該判例は従業員が病欠期間中の有給休暇を請求できる期間を特定していないため、従業員が過去に遡って現在または過去の雇用主から病欠期間中の有給休暇を請求する可能性があることに留意しなければなりません。

遡及期間に関しては議論が続いており、雇用主が従業員の有給休暇取得の権利行使に必要な手続きを行ったと裁判所が判断する場合は、賃金請求権の時効期間である3年が適用されると考えられますが、雇用主が必要な手続きを行ったかの判断には不確実な要素があり、行わなかったと判断された場合、欧州連合法が発行した2009年12月1日まで遡る可能性があります。このため、破毀院からの新たな判決またはフランス国内法の改正で遡及期間に関する明確なガイドラインが出るまでは、遡及期間に関する不確実性によるリスクを予測して対応することが求められます。例えば、まず、賃金請求権の時効期間である3年間(2019年5月31日までの期間)において病欠を取得した従業員(退職者も含む)による権利行使を検討し、次に2019年6月1日以降2009年12月1日までの期間において最も重要度の高い病欠を取得した従業員による権利行使を考慮する方法などが考えられます。

在仏日本企業においては、有給休暇に係る負債の見積りに必要となる過去の病欠取得実績に関する情報を収集し、必要に応じて専門家に相談するなど早めの対応をすることが推奨されます。また、本稿は2023年12月15日時点の情報に基づいており、フランス国内法の改正など今後も進展が予想されますので、最新の情報を入手する必要があることにご留意ください。

フランス基準の下では、負債または引当金のいずれに該当するかについて現在議論中です。

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