特別買収目的会社(SPAC):取得時におけるワラントの会計処理-IFRS-ICニュース

IFRS解釈指針委員会ニュース -「SPAC:買収時のワラントの会計処理」については、2022年10月のIASBの会議において審議された内容を更新しています。

「SPAC:買収時のワラントの会計処理」については、2022年10月のIASBの会議において審議された内容を更新しています。

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概要

委員会は、特別買収目的会社(SPAC)の取得にあたりSPACの株主に対して企業が新規に発行するワラントがIFRS第2号「株式に基づく報酬」の適用を受けるかについて質問を受け取りました。対象のワラントは、IFRS第2号の適用対象になる場合には持分決済型の株式報酬とされる一方、IAS第32号「金融商品:表示」の適用対象になる場合には金融負債になると考えられています。

スキームの概要は以下のとおりです。

  • SPACは、現金以外の資産を保有しておらず、IFRS第3号「企業結合」の事業の定義には該当しない。企業(事業会社)がSPACを取得する目的は、SPACが保有する現金及びその上場ステータスの獲得にある。
  • SPACは株主(設立株主及び一般株主)に対し普通株式及びワラント(SPACワラント)を発行している。普通株式は資本性金融商品、一般株主が保有するSPACワラントは株式上場時に発行されたもので金融負債にあたる。一方、設立株主が保有するSPACワラントは、SPAC設立時に設立者が提供したサービスの対価として発行されたものである。
  • SPACの株主に対し、SPACの普通株式及びSPACワラントの法的な取消と交換に、企業は普通株式とワラントを新たに発行する。SPACは企業の100%子会社になり、企業はSPACの代わりに上場企業となる。
  • いずれの株主もSPACの従業員には当たらず、また企業によるSPACの取得以降に企業に対して株主から提供されるサービスはない。
  • 企業がSPACを取得する際に発行する普通株式及びワラントの公正価値は、SPACの識別可能純資産の公正価値を上回る。

ステータス

SPACの取得は事業を構成しない資産(グループ)の取得であるため、取得者である企業は「識別可能な取得資産・引受け負債」を識別し認識します。SPACワラント(負債)が引受け負債に該当するか(したがって、新規ワラントは取得の対価としてではなくSPACワラントの代替として発行されたものであるか)については、事実と状況により判断します。

企業はSPAC取得により上場ステータスを獲得しますが、この上場ステータスは無形資産の取得には該当しません。しかし、SPACの取得のために企業が発行した金融商品の公正価値は取得した識別可能純資産の公正価値を上回っていることから、当該差額をもって、株式報酬取引の一環としての株式上場サービスが測定されることになります。

一方、企業は普通株式を発行し、SPACの現金と株式上場サービスを取得、SPACワラントに係る負債を引き受けます(または普通株式とワラントを発行し、SPACの現金と株式上場サービスを取得します)が、発行した金融商品にどのIFRS®会計基準が適用されるのかについて、委員会は以下と結論付けました。

  • 株式上場サービスを取得するために発行した金融商品には、IFRS第2号を適用する。
  • 現金の取得(及び、該当する場合はSPACワラントに関する負債の引受け)のために発行した金融商品には、IAS第32号を適用する。

以上より、委員会は、IFRS会計基準上の扱いは明らかであるとして、本件を基準設定プロジェクトには追加しないことを決定しました。本アジェンダ決定の内容は、2022年10月のIASBの会議を経て確定しました。アジェンダ決定の詳細についてはASBJのサイトに公開されているIFRIC Update(2022年9月)への補遺をご参照ください。

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