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New Normal時代に向けて進化するデジタル監査

Disclosure&IR誌(ディスクロージャー&IR総合研究所発行)2021年5月号にあずさ監査法人の解説記事が掲載されました。

Disclosure&IR誌(ディスクロージャー&IR総合研究所発行)2021年5月号にあずさ監査法人の解説記事が掲載されました。

I はじめに

2020年の年初より全世界的に感染が拡大した新型コロナウイルス(以下、新型コロナ)は、経済社会の至る所に大きな影響を与えた。新型コロナ感染者数を抑制するために変化した社会環境・生活習慣の一部は、コロナ禍終息後も元には戻らず、今後の「New Normal」に置き換わっていくであろう。
監査業務はこの数年で全世界的にデジタル化の波が到来し、もとよりデジタル技術を活用した監査(以下、デジタル監査)が積極的に推進・展開されていた環境であった。それでもなお「New Normal」時代の到来により一層のリモートワークが求められ、業務のデジタル化が進められる中で、いくつかの課題も浮上してきた。この後の章では、監査のリモート化およびデジタル化の現状と、その結果どのような課題が生じてきたか、また今後の対応について考察する。

II 「New Normal」時代の監査の現状

1. 監査リモート化の現状

(1) コミュニケーション態様の変化
新型コロナ感染者数を抑制するため、全世界でとられた施策の一つが接触機会の低減であった。我が国においても、政府から各企業のリモートワーク率として70%が目標数値として示され、特に緊急事態宣言下では、多くの企業がリモーワークへの対応に追われることとなった。監査法人もまた例外ではなく、監査のリモート化が急速に進行した。
監査業務の中で、リモート化の影響を最も受けたのが、被監査企業と監査人のコミュニケーションである。被監査企業を訪問して行う対面での会議やインタビューが制限されたため、複数拠点間や三者以上の同時接続が可能なMicrosoft Teams※1、Cisco Webex※2といったビデオ会議に適したツールが、リモートワーク環境下において必須のコミュニケーションツールになった。
しかしながら、これらのツールで従来の対面のコミュニケーションを全て補完できるわけではない。従来の対面での会議やインタビューの場で当然に行われていた、表情やボディランゲージ、雰囲気といった非言語的なコミュニケーションは、リモート開催の場で同じように実行するのは難しい。その結果、監査の大前提となる信頼関係の構築や、ときに監査において非常に重要となる「違和感」をとらえることが難しい局面が生じることもある。
また、最初の感染拡大と重なった2020年3月期の決算業務は、従来の業務についてビデオ会議ツールを利用することで遂行できたものの、リモート環境でのコミュニケーションが常態化した「New Normal」時代においては、リモート化によって不足しがちな深度あるコミュニケーションを補完することを含め、業務自体のさらなる見直しを行う必要がある。

(2) 被監査企業グループに対する往査の制限
接触機会を低減するために人の移動が制限され、被監査企業への訪問が制限された。それは本社のみならず、工場や子会社、支店、営業所といった拠点への往査も困難となっている。特に、目が届きにくい海外子会社へのアクセスが制限されることで、会計監査の一つの機能である不正への牽制機能が効きにくくなり、監査上のリスクに繋がっている。
このようなリスクに対しては、海外子会社の現地監査人とのコミュニケーションの内容や方法を見直すのみならず、日本の親会社が収集した子会社のデータを分析し、親会社監査人が日本にいながらにして子会社の適切なリスク評価を行うことが一つの解決法となる。当法人では、親会社監査人が子会社の財務データを一括・網羅的に分析する子会社リスクスコアリングを実施している(詳細は後述する)。

(3) 監査証拠(証憑)の電子ファイル化
「New Normal」時代に恒常化するリモート化の波は、監査業務自体にも大きな影響を与えている。監査人は従来、監査証拠の一部として紙の証憑を直接閲覧して確かめる監査手続を行っていた。しかしリモート化が進んだことで、紙の証憑をPDF等の電子ファイルに変換してインターネット経由で入手する機会が著しく増加している。しかし、日本公認会計士協会からリリースされている「PDFに変換された証憑の真正性に関する監査上の留意事項」(リモートワーク対応第3号)で示されているとおり、PDF等の電子ファイルに変換した証憑は、変換過程において故意または不注意によって情報が変更されるリスクがあり、原本(紙)の証憑よりも証拠力が弱いとされている。そのため、リモート環境下で入手した電子ファイルの監査証拠については、必要に応じてその真正性を確かめる追加手続が求められる。
証憑の記載内容の変更や削除、すなわち改ざんが行われるリスクへの対応策として、原本の確認のほか、電子ファイル作成関与者への質問、他の監査証拠との整合性の確認、(電子ファイルの原本の発行が被監査企業の外部者による場合)原本の発行者への直接確認、プロパティ情報の確認といった手続が挙げられる。さらに、当法人では、電子ファイルの改ざんリスクを検知するツール「KaizanCheckBot_ai」を開発し、すでに監査現場に導入している。電子ファイルの改ざん手法には様々なパターンが考えられるため、KaizanCheckBot_aiでは、それに対応する検出手法を複数適用し、改ざんのリスクが高い箇所を特定する。具体的には、検知対象の電子ファイルをKaizanCheckBot_aiに投入すると、肉眼では判別困難な編集作業の痕跡を浮かび上がらせるための画像処理や、ファイルに付されている日付等のプロパティ情報の抽出および検証を行うことができる。監査人はKaizanCheckBot_aiの処理結果を理解し、より詳細な調査につなげていく。

New Normal時代に向けて進化するデジタル監査_図表1

2. 監査デジタル化の現状

(1) 監査業務で活用するデータの領域拡大
監査業界では、コロナ禍以前から、積極的な監査手続や周辺業務をデジタル化する取組みがなされていたが、「New Normal」時代に入り、その勢いが増している。
特にデータ分析手続は、リスク評価手続、その後のリスク対応手続のいずれの段階においても利用されるが、その重要性はこの数年で急激に高まっている。各企業においてビジネスのデジタル化が進むにつれて、従来は紙の書面あるいは属人的に蓄積していた情報がデータ化される。これにより、監査人が利用可能となるデータの領域が拡大し、監査業務で活用できるデータ分析の領域も拡大・高度化している。
監査業務で活用できるデータ分析領域拡大の例として、オルタナティブデータやビッグデータを利用した監査手続の開発・実用化が挙げられる。当法人は2021年3月に、宇宙航空研究開発機構(以下、JAXA)からデータ提供と利用技術に関する助言を受け、JAXAの衛星搭載船舶自動識別システム(AIS)実験(SPAISE)により取得した船舶の位置情報データを監査手続に応用し、船舶の資産評価や人件費や燃料費等の船舶運行費用の検証に利用することを公表している。このデータ分析事例は、国内監査法人初となる人工衛星データを利用した監査手続として注目を集めている。
なお、このように非財務データを含む多様なデータを活用した監査手続を拡充していくためには、信頼性の高い非財務データの取得・蓄積が不可欠である。

(2) 多様なデータ活用による将来予測の実施
データ分析は、人工知能(AI)を活用することで、見積りの将来予測といった局面でも監査業務に活用することができる。例えば当法人では、固定資産の減損要否判定に関する見積り(事業計画等)の妥当性を検討する際に、評価支援ツールを導入している。現状は被監査企業の過去実績を根拠とした将来予測がメインとなっているが、今後は同業他社のベンチマーク情報やマーケット情報等の外部データも活用することで、より広範なデータを用いて客観的な指標を織り込んだ将来予測を行うことも視野に入れている。

(3) 監査アプローチの変化(網羅的監査)
デジタル化によって監査人が利用可能となるデータの領域が拡大し、かつテクノロジーの発達によりデータの処理能力が向上したことで、監査の伝統的なアプローチそのものが変化しつつある。具体的には、従来サンプリングベースで検証して母集団を推定する監査アプローチが主流であったが、デジタル監査の高度化により、データ全量を網羅的に検証して異常点を発見する監査アプローチへ変わっていく。
当法人で取り組んでいる子会社リスクスコアリングやプロセスマイニングといった分析は、網羅的な検証アプローチの一例と言えるだろう。子会社リスクスコアリングは、被監査企業の連結システムに含まれる子会社の財務データに対し統計手法を用いて分析し、一定のリスクシナリオに基づいてスコアリングすることで、客観的にリスクの高い子会社やその領域を特定する分析である。これは、従来の連結決算監査では対象外とされがちな海外の小規模子会社やノンコアビジネスを含めて網羅的にリスクを把握できる分析手続である。プロセスマイニングは、ERP(Enterprise Resources Planning)システム等に含まれるトランザクションデータを抽出・加工・整形してイベントログを作成し、専用ツールに取り込んで業務プロセスのデータ処理パターンを網羅的に可視化するものである。これは、通常の業務フローとは異なるフロー・プロセスを洗い出し、リスクの高いトランザクション等を識別する分析である。いずれも監査対象とするデータの領域は、従来の監査と比較して著しく拡大している。

New Normal時代に向けて進化するデジタル監査_図表2

(4) 監査プラットフォームの活用(リアルタイム監査)
デジタル監査が高度化すると、データ授受の頻度が高くなり、かつデータの容量が増加する。そのため、従来電子メールやデータ共有サーバを通じて行っていたデータ授受は、監査プラットフォームを通じたものへと移行している。現状では、いずれの手法においても手作業でデータのアップロード/ダウンロードをしていることが多いが、今後は被監査企業のERPシステムに抽出プログラムをインストールするケース、API(Application Programming Interface)連携によったデータを抽出するケースなど、データ抽出・受領の自動化が進むであろう。さらに監査プラットフォームを活用することで、被監査企業の各種システムから監査プラットフォーム(すなわち監査法人のサーバ)にデータを連携し、プラットフォーム上でデータ分析や監査手続をタイムリーに実施することができる。また、同じプラットフォーム上で分析や手続の結果を被監査企業と共有することも可能となる。
現在、当法人ではKPMGのデジタル監査プラットフォームであるKPMG Claraを展開しており、データの授受のみならず、監査上識別した課題・タスクとその進捗状況の共有、監査役会等への報告物の一元管理をすることができる。さらに今後、データの授受・分析・結果報告等の循環プロセスをより円滑に行なえるよう、KPMG Claraのさらなる機能開発・強化を継続的に行っている。
現行の監査では、決算期末後から決算発表までの期間に集中して実施する監査手続が多い。これに対して当法人では、将来は取引の発生と並行して監査人がERPシステム等から自動連携されたデータをリアルタイムに検証することで、旧来の監査より大幅に前倒しして監査を終了するリアルタイム監査(継続的監査)に進化させていくことを目指しており、KPMGClaraがそれを支える監査プラットフォームとなる。

New Normal時代に向けて進化するデジタル監査_図表3

(5)監査の自動化
監査のデジタル化は、監査の高度化に資するだけでなく監査の自動化・集約化にも有効である。当法人では、デジタル化によって人的ミスを回避しつつ、監査をより効果的に実施できるツールの開発・展開を積極的に行っている。
例えば、監査証拠(証憑)として入手したPDFファイルの情報を光学的文字認識技術(Optical Character Recognition)を活用して読み取り、会計データ等と突合し、不整合部分を検出する証憑突合自動化ツール「MatchingBot_ai」を開発し導入している。従来、証憑突合は監査人が目視による手作業で実施していたが、このツールを導入することによって、多くの件数をより正確に短時間で完了させることが可能となった。さらに、監査のリモート化にあわせて開発された前述の改ざんリスク検知ツールKaizanCheckBot_aiを併用することで、監査リスクの低減と監査手続の自動化を同時に達成することができる。

New Normal時代に向けて進化するデジタル監査_図表4

他にも、有価証券報告書等のドラフトデータについて、財務諸表数値の計算チェックや関連する数値間の整合性チェックを自動で行い、不整合箇所を検知する開示チェックツール「DisclosureBot_ai」などが、監査現場で効果的に活用されている。監査の自動化に資するデジタルツールは、株式会社KPMG Ignition Tokyo等のKPMGグループ会社と協働し、今後も順次開発・導入していく予定である。

III 今後の展望

「New Normal」時代には、各企業のビジネスのデジタル化が、コロナ禍前の想定より相当程度早く進むものと考えられる。このような社会の潮流がある以上、デジタル監査の高度化を実現して、より効果的に、かつ被監査企業にインサイトを提供できるような付加価値のある監査を達成することが、社会からの期待に応えることといえるであろう。
なお、デジタル監査の高度化を実現するためには、監査人と被監査企業を含む外部との連携が重要になってくる。
今後の高度なデジタル監査の実現にむけて、課題とされる事項および解決の方向性について考察する。

1. データの標準化と一元化

(1)  現状の課題
デジタル監査実現における現在の最大の課題は、必要なデータの標準化と一元化と言えるであろう。我が国では特に、企業が現場の業務に合わせてシステムを独自に開発しているケースや、汎用ERPシステムを利用していたとしても、一部の機能を利用していないケース、逆に独自機能をアドオンするなどのカスタマイズをしているケースが散見される。
また、企業グループ内においても会社によって使用するシステムが異なることがある。このような状況においては、監査人が被監査企業のシステムから利用したいデータを網羅的に取得することが困難であったり、取得できたとしても分析や加工のための前処理に相当の工数を要することがある。

(2) 対応策
データの標準化・一元化のためには、統一したシステムを企業及びそのグループ各社に導入し、業務プロセスとデータを標準化し、データ処理を自動化するといった対応が理想ではある。しかしながら、そのためには金銭的・時間的な制約が大きく、現実には難しい。
その対応策の一つとして、シェアード・サービスおよび共通データベースを活用することが挙げられる。例えば、統括会社が企業グループの共通データベースを構築し、子会社の財務情報(仕訳、経費など)を収集することで、被監査企業と監査人が共通でデータを利用するケースである。被監査企業も監査人もグループ会社を同一データで比較・分析することができ、監査人はグループ各社のデータをまとめて仕訳や経費に関わる監査手続を実施することができる。また、一つのトランザクションIDでトランザクションの開始から終了まで追えるような特定の状況に限られるが、トランザクションの固有ID・アクティビティ情報・タイムスタンプ情報の必要な情報だけでも一元管理できれば、プロセスマイニング分析を活用することもできる。プロセスマイニング分析は、業務フローの可視化および現状把握に利点があるため、被監査企業のインサイトにも繋がるであろう。
今後企業のデジタルトランスフォーメーションの状況に応じて、データの標準化・一元化への取組みも進むと考えられる。しかし、すべてのプロセス・すべてのデータについて標準化や一元管理をすることは現実的でないため、対象の選択と集中がポイントとなる。特にデータの一元管理はそれ自体が目的ではなく、一元管理したデータを活用して何を実施したいのかを明確にしたうえで、一元管理する領域と仕組を決定すべきである。

2. 現物・現場確認

(1) 現状の課題
今後、デジタル化によって監査証拠となる証憑を電子ファイルで確認し、リモート化によってビデオ会議ツール等を通じて被監査企業とコミュニケーションを取ることが主流になると、将来は現物・現場を直接確認せず、データを介した監査手続が中心的になっていくであろう。
しかし、データだけでは現物の実在性や状態、現場の状況を確認することは難しく、特に、現場視察を含めた棚卸立会や工場等の往査の対応には課題がある。

(2) 対応策
それらの課題を補完すると考えられるのが、ドローンや衛星写真を活用して棚卸資産の保管現場や棚卸資産そのものを撮影したり、棚卸資産をカウントする被監査企業の従業員にスマートグラスを貸し出して監査人自身が視察するのと近い環境を作り出すといった、リモート棚卸立会の実施である。ドローンや衛星写真の活用については、棚卸資産の個体識別を行うことは難しい点や、特に我が国ではドローンの飛行領域に制限がある点など、実用化にあたって多くの課題がある一方、オーストラリアなど他国では、広大な土地にある資源などの棚卸やその視察の手法として導入が進んでいる。また、スマートグラスによる棚卸立会は、現状は視覚のみに頼らざるを得ないところが課題であるが、例えばあらゆる製品・部品にICチップを搭載し、スマートグラスで棚卸資産を見るだけで品番や数量を認識できるように進化すれば、棚卸資産の実在性をより正確に確認できる。
また、複数のWebカメラを用いた現場のリアルタイム状況の確認も対応策として挙げられる。遠隔地・海外の工事現場・工場等のカメラ映像を本社で確認し、同時に監査でも確認するといった活用がすでに始まっている。
なお、このようなデジタルテクノロジーの実用化が今後進むと考えられるが、デジタル化を基本としつつも、人間による往査とデジタル化をどのように組み合わせて監査手続に現場・現物確認を織り込んでいくかを監査人が検討し、監査リスクを低減していく必要がある。

3. 人材育成

(1)  現状の課題
データドリブンな監査手続を実行するには、監査人が従来の業務経験・知識に加えてデータやテクノロジー、統計手法等を理解し、分析ツールを活用して監査手続に適用できる人材の育成が不可欠である。しかし現状では、従来の監査人としての能力に加え、デジタルに関する高い能力も兼ね備えた人材は極めてまれな存在となっている。

(2)  対応策
当法人を例にとると、テクノロジーとデータを活用したデジタル監査の実現に向けて、デジタル人材育成プログラム「Azsa Digital Academy(以下、ADA)」を策定し展開している。ADAは、会計士だけでなくIT監査人やデジタル専門部署のデータサイエンティスト等も対象とした総合的なプログラムであり、会計士だけにとらわれない多様なメンバーで構成される「将来の監査チーム像」と「デジタル人材としてあるべき階層とそれぞれの役割」を定義している。そして、階層別の役割と必要とされるスキルを明確にしたうえで、研修やOJTを組織的に実施する環境を構築している。
ADAにおける各階層の認定を受けるためには、専用の研修プログラム受講に加え、実務経験等の要件も含まれる。2021年6月末までに、監査業務に従事するプロフェッショナル全員が第1階層「デジタルアシスタント」の要件をクリアすることを予定しており、また今後3年間で第2階層「デジタルマイスター」以上のデジタル監査の中核となる人材を2,500名超まで育成することを目指している。

4. 企業と監査人の連携

(1)  現状の課題
監査は被監査企業と監査人の連携の上に成立している。そのため、効果的かつ効率的なデジタル監査の実現のためには、監査人だけでなく企業側のビジネス・業務プロセスのデジタル化が不可欠である。

(2)  今後の連携のあり方
デジタル監査における効果的かつ効率的な連携とは、具体的には、前述のとおり被監査企業のERPシステム等のデータと監査プラットフォームの連携が挙げられる。また、連携はデータのみにとどまらず、データ分析の企画や分担実施、その結果の共有についても、被監査企業と監査人が連携することが望ましいと言える。
つまり、単にデータを共有するだけではなく、経理や内部監査部門と共に、どのような視点の分析が有用なのか意見交換しながら分析を実施し、結果を共有し、被監査企業側の知見も交えながら、さらなる高度化を目指す循環プロセスを構築することが重要である。
被監査企業は財務諸表を作成する責任を負い、監査人は財務諸表を監査する責任を負うが、共に利害関係者に対して適正な財務諸表を開示するという目的は同じである。内部統制評価や分析手続など、両者の作業や手続が重複する部分も多いため、アイディアを共有し役割を分担することで、双方の業務の効率化が図られ、被監査企業のガバナンスの強化と監査の品質向上に繋げていくことができる。特に、被監査企業の内部監査と監査人の外部監査は、監査対象は異なるものの、データドリブンに手続を進化させていくという共通点があるため、内部監査部門と監査人の連携はより重要になると考えられる。

IV おわりに

コロナ禍を契機に社会・経済のリモート化とデジタル化が加速し、被監査企業も監査人もデジタル監査への対応が不可避となりつつある。現在のデジタル監査には、データの標準化・一元化、現場・現物確認の限界などの課題がある。しかし、課題を着実にクリアし、被監査企業と監査人が高度に連携することにより、双方にとってより付加価値のある監査が目指せる好機でもある。被監査企業にとっては、デジタル監査はガバナンス強化や経営改善のインサイトとなり、また監査対応の効率化につながる。監査人にとってもデジタル監査の推進が監査の品質向上と自動化・集約化に繋がり、被監査企業に対してより有用なインサイトを提供できる。現在の課題を克服し、被監査企業と監査人の双方がWIN-WINとなる関係を構築・強化すること、これが目指すべきデジタル監査の将来像であると考える。

以上

脚注

※1 Microsoft、Microsoft Teamsは米国Microsoft Corporationの米国およびその他の国における登録商標または商標です。

※2 Cisco Webex は、Cisco Systems、 Inc.またはその関連会社の米国およびその他の国における登録商標または商標です。
 

執筆者

有限責任 あずさ監査法人
Digital Innovation部長
公認会計士
丸田 健太郎(まるた けんたろう)

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