日本のデジタルビジネストランスフォーメーションはなぜ遅れているのか

「製造業のDX ハイブリッド社会に向けて」第3回。デジタルビジネストランスフォーメーションが遅れているとされる日本の製造業について、KPMGのグローバルCEO調査を基に解説する。

「製造業のDX ハイブリッド社会に向けて」第3回。デジタルビジネストランスフォーメーションが遅れているとされる日本の製造業について、KPMGのグローバルCEO調査を基に解説する。

KPMGインターナショナルは毎年「KPMGグローバルCEO調査 」を実施している。2019年の調査結果によると、世界の経営者は経済が既に未知の領域に突入したと理解しており、不確実な時代における経営モデル、組織のデジタル変革(DX)、最高経営責任者(CEO)の役割を進化させる必要性を強く感じていた。

日本企業については「ビジネスモデルを見直し、競争優位性を維持できるための仕組みが確立できている」と答えた割合が主要11ヵ国中10位だった。「自社の成長はビジネスの常識をチャレンジ・破壊する能力に強く依存することに対して、強く同意する」と答えた割合も下から2番目。日本の経営者は未知の領域におけるビジネスを確立する決意が定まっていないようだ。
日本の製造業は働き方改革の影響もあり、定型・非定型業務の一部をRPA(ロボットによる業務自動化)化し始めた。人工知能(AI)を用いた不良品検査工程の自動化、物流倉庫への無人ピッキングシステム導入なども行っている。

しかしながら、DXについて和書と洋書で訳に違いがあることに注目したい。和書ではそのほとんどで、DXを「デジタルトランスフォーメーション」と記載し、洋書では「デジタルビジネストランスフォーメーション」と書いている。デジタル技術を利用する点で手段は同じでも目的が大きく異なっている。
日本の製造業は既存事業における部分(部署)最適や個別(機能)最適でDXに取り組むことがほとんどで、新たなビジネスを実現するために全体最適でDXを推進する企業は少ない。この点で言えば、日本はデジタルビジネストランスフォーメーションが遅れている。加えて、既存事業の中での取組みに終始する日本の製造業の利益率は高くはなく、営業利益率が10%超の企業は少ない。
もちろん、製造業である以上、製品・サービス分野において、技術革新を前提とした研究開発による事業成長というビジネスモデルを捨てる必要はない。ただ、同時並行で進める新たな事業領域でデジタルビジネストランスフォーメーションが必要となる。

社会がハイブリッド(複合)型へ変化し、不確実性の高い市場下で成長するには、機動性を持ってデジタル基盤上で新たなビジネスを始めなければならない。米ゼネラル・エレクトリック(GE)の燃料費削減ソリューションはその代表例だ。製造業もデジタル基盤上で新たなビジネスに取り組むべき時期に突入したのではないだろうか。

※本文中に記載されている会社名・製品名は各社の登録商標または商標です。

日刊工業新聞 2020年6月22日掲載(一部加筆・修正しています)。この記事の掲載については、日刊工業新聞社の許諾を得ています。無断での複写・転載は禁じます。

製造業のDX ハイブリッド社会に向けて

お問合せ