英国経済レポート 2020年6月

KPMG英国では、四半期ごとに英国経済レポートを発行しています。2020年6月号をご紹介します。

KPMG英国では、四半期ごとに英国経済レポートを発行しています。2020年6月号をご紹介します。

都市封鎖が緩和されるにつれて経済は徐々に回復しますが、中期的な見通しやパンデミック後の世界がどのように変わっていくかについては、依然として大きな不確実性があります。本レポートでは、パンデミックの4つの潜在的シナリオと、それらが今後の英国経済の見通しにどのように反映されるのかを概説しています。
ワクチンのタイミングや、COVID-19の効果的な治療法が開発されるか否かにより、2021年のGDP成長率は1%未満から5.5%未満まで変化する可能性があるとしています。

英国経済アウトルック「Hard times」

エグゼクティブサマリー

英国経済は今まさに、深刻な景気後退の真っ只中にあります。都市封鎖とソーシャルディスタンスによる制限により、企業の体力は低下しています。先の見えない今後の景気への不安から消費が抑制されています。

COVID-19のワクチンや効果的な治療法が利用可能になるまでは、経済活動が完全に再開する可能性は低いと言えます。また、パンデミック対策の画期的進歩がいつになるのか不確定であるため、景気回復のスピードや、永久的なダメージが英国経済にどの程度もたらされるのかについて懸念が広がっています。
我々は、英国でパンデミックが根絶される可能性があると思われるいくつかの日付を仮定し、経済の回復のタイミングについて4つのシナリオを検討しました。我々の主要なシナリオにおいては、2021年7月からワクチンが入手可能になると想定しています。
夏の間に都市閉鎖の規制が徐々に解除されるため、2020年下半期から部分的な景気の回復が見込まれます。とはいえ、来年の第1四半期にはEU離脱の移行期間の終了により、さらに経済が縮小する可能性があります。 2021年には、GDPは2.8%上昇すると仮定しますが、その前の2020年にGDPは7.2%落ち込むでしょう。

図表1

図表1

我々の想定する主なシナリオでは、個人消費は2020年に9.5%減少し、翌年にCOVID-19のワクチンや効果的な治療法が行き渡るのが遅すぎた場合、消費を大きく増幅させることができないため、1.3%程度の回復しか見込めないかもしれません。
大きな経済不安と収益減少により、多くの企業は手元資金を維持する必要があるため、2020年の投資額は、12.6%減少する可能性があります。その後はわずかに回復し、来年は約1.8%程度増加すると予測しています。

都市封鎖とソーシャルディスタンスの措置は、当初からホスピタリティー業界や旅行業界に甚大な損害を与えてきました。これらの業界に対する出費の多くは、消費者にとって「必須」ではないと見なされており、消費者は裁量的消費支出を減らし、中期的に財政を修復しようとするため、これらの業界における売上高はさらに減少する可能性があります。

英国ウェストミッドランズ地方は、COVID-19 の影響を最も大きく受けた地域であると言えます。生産量については、英国全体での7.2%減に対し、ウェストミッドランズ地方では9.1%減少しています。これはパンデミックの影響を強く受けたとされる自動車業界やその他の輸送製造業がこの地域に比較的多く集中しているためです。

政府の強力な支援にもかかわらず、現在の危機は労働市場に重大な影響を及ぼしています。パンデミックと闘うために課された都市封鎖措置は経済を衰退させ、失業率は今年平均8.6%となり、2021年には11%となる可能性があります。

図表2

図表2

感染の脅威がなくなるまでは、消費する余裕がないことや消費意欲がなくなることにより、消費者の支出は減少し、需要は抑えられます。失業率の上昇により賃金上昇も抑制されます。今年のインフレ率はわずか1%、来年は0.8%となり、脆弱な経済環境が低インフレを招く可能性が高まります。

図表3

図表3



イングランド銀行の目標を大幅に下回るインフレ率や、労働市場を含む経済のパンデミックの影響からの巻き返しを図るために、金融政策は少なくとも2021年末まで緩和的であり続けるでしょう。イングランド銀行が量的緩和政策を継続している間は、金利は最低水準の0.1%を維持すると思われます。


レポート全文はUK Economic Outlook June 2020(英語PDF:3,411kb)をご覧ください。

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