地域金融機関の人事改革

地域金融機関の人事改革

働き方改革が提唱されるなか、地域金融機関の人事に求められていることとは何か。人材の確保、若手のモチベーション低下などの課題とリスクについて解説し、またその解決への方向性を提示しながら、従業員エンゲージメントの向上につながる地域金融機関の人事改革について考察する。

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地域金融機関の人事を取り巻く環境

地域金融機関を取り巻く経営環境は年々厳しさを増しており、地域人口の減少・業種人気の変化により優秀な人材を確保することが困難になってきている。また、職員の働く意識も、仕事とプライベートを分ける傾向が若手中心に高くなり、自宅学習を時間外業務と捉える意識が高いと話す金融機関担当者も多い。さらに、伝統的な地域金融機関のビジネスモデルからソリューション営業・コンサルティング営業へのシフトにより、必要な人材を必要な職場に配置する適材適所の重要性が高まってきている。

地域金融機関の人的課題(仮説)

  • 若手の離職率の高まり
    • 若手職員の離職の増加傾向
    • コミュニケーション不足による不満の高まり
  • 業種人気の変化
    • 優秀人材の確保が困難に
  • 専門人材の不足
    • デジタル人材を含め、ソリューション営業体制を確立するための専門スキルを保有した人材が不足
  • 若手職員の仕事に対する主体性の低さ
    • 仕事よりプライベートを重視する傾向の高まり
    • ロイヤリティの低下
  • 事務の効率化に伴う余剰人材の有効活用
    • マインドセットの切り替えやリカレント教育を含む再教育の必要性
  • 根強い本部・営業店の意識の乖離
    • 営業店のあきらめ感の蔓延
    • 本部の官僚的・受け身の姿勢

課題と放置するリスク

このようななか、地域金融機関の人的資源にかかる課題は次のように考えられる。

これまでのビジネスモデルが頭打ちの状況下で、新たな収益源を獲得するには、現有人材のスキルアップに加え、今後の強化すべき事業や業務に必要なスキルを保有した人材を適切に配置すること(適材適所の実現)が重要である。

また、働き方が多様化する今日では、規則だけでは対応できないことが多くなる。例えば、育児や介護等による時短勤務職員と通常勤務職員との業務負荷の格差の解決、各職員のキャリアアップに関する相談に応じるなどである。これには、管理職のきめ細かな人材マネジメント力が求められる。制度面でも、多様な人材を処遇できるキャリアパスの複線化が必要であり、ゼネラリスト主体の単線かつ年功要素の強い賃金制度を変える必要がある。

これを先送り、あるいは放置すると、若手職員のモチベーション低下や離職、新しい人材の獲得ができない結果、職員の質・量が低下し、事業運営に支障をきたすと考えられる。

放置するリスク

  •  若手職員の銀行に対するロイヤリティの低下、仕事に対するモチベーション低下
  •  新しいビジネスモデルを担う人材獲得が困難
    ⇒人材の質と量の低下

解決に向けた方向性

このような課題解決に必要なことは「適材適所の徹底」 「若手のエンゲージメント(仕事へ主体的に向き合う姿勢)の向上」 「複線型の人事制度」に集約される。

まず、適材適所の徹底を図ることが重要であり、そのためには個々の職員の資質や志向・能力等を明確にしてジョブマッチを図ることが重要となる。

次に、若手職員のエンゲージメントを可視化し、低下させる要因に対して手を打つことも必要だ。下記の図1はKPMGが考える職員のエンゲージメントに影響を与える要因である。例えば、この要因について、10分程度のアンケート質問を通じて職員のエンゲージメントに好影響/悪影響を与えている要因を職員の属性ごとに特定し、スピーディな施策を打つことが考えられる。

最後に、複線型の人事制度においては、複線型キャリアパス、高スキル人材やシニア人材を活用できる柔軟な報酬とそれを支える評価の再構築が必要である(図2参照)。ただし、合理性に欠ける賃金の切り下げや、職員間(正規・非正規/タレント採用とその他 等)の不合理な賃金格差、企業年金・退職金制度の見直しによる退職給付債務の増加や変動リスクに伴う財務インパクトの発生といった状況にも対応する必要がある。

解決の方向性

(1)適材適所の実現(タレントマネジメントの実践)
  • 職員の人材情報の共有(営業店の求める人材と配属された人材のミスマッチの防止)

(2)職員の職業的資質の可視化

  • アセスメントによる職業的資質の可視化
  • 要件を満たす人材がいつ何人必要かの明確化(人材計画策定)
  • 計画と現状のギャップの可視化

(3)効果的な人事施策の検討

  • 職員のエンゲージメント(働きがい)の可視化
  • 属性に応じた効果性の高い打ち手の展開と評価人財育成施策の再検討

(4)人財育成施策の再検討

  • 管理職のマネジメントに関する意識・行動の変革/再教育
  • 職員が成長を感じられるコミュニケーションの促進(定期的に上司と部下が1対1で話し合う「1on1」ミーティング、など)

(5)人事制度改革

  • 複線型キャリアパス、柔軟な報酬とそれを支える評価の再構築
エンゲージメントに与える要因
これからのキャリアコースイメージ

おわりに

これからの地域金融機関は、将来の持続的成長のために、優秀人材の獲得・強化、配置をはじめとした人的資源マネジメントに注力すべきと考えられる。

また、労働市場の流動化・働く人材の価値観の多様化により、従業員エンゲージメント(働きがい)を高めて、共感を創造することが、今後の人事部門にとって重要なミッションとなる。働きがいを追求しながら、働きやすさを整備し、従業員のエンゲージメントを高めていくことにより、組織の生産性向上やイノベーションを達成することが企業成長のカギとなる。

執筆者

KPMGコンサルティング
ディレクター 油布 顕史

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