グローバル企業のBCP策定に必要なポイントとは

「レジリエンスを高める」第11回 - 自然災害だけでなくテロや労働争議など、グローバルに対応可能なBCP策定のポイントについて解説する。

自然災害だけでなくテロや労働争議など、グローバルに対応可能なBCP策定のポイントについて解説する。

2014年6月に閣議決定された「国土強靭化基本計画」に基づく「国土強靭化アクションプラン2014」では、起きてはならない最悪の事態の例として、サプライチェーンの寸断などによる企業の国際競争力低下が例示されている。この中で、2020年までの目標として「大企業はほぼ100%」「中堅企業は50%」の事業継続計画(BCP)の策定率を目指すという指標が定められている。
ただし、多くの日本企業で策定されているBCPは、対象が日本国内にとどまっているケースが多い。日系のグローバル企業は、日本国内にグループ本社、海外では米国、欧州、アジアなどの地域統括会社、それぞれの地域内の製造子会社、販売子会社等で構成され、それぞれの会社はサプライチェーンによって国境を越え密接に関連している。そのためグローバル企業のBCPを策定するには、各子会社や事業・商品等の重要性、サプライチェーン上の重要性を踏まえたグループ会社全体の組織・事業の考慮が必要となる。KPMGコンサルティングが14年に実施した「事業継続マネジメント(BCM)サーベイ2014」では「海外拠点BCPは必要」と回答した企業が52%あった一方で、既に策定済と回答した企業は2割に満たない状況であった。

海外拠点BCP策定状況

では具体的にどのような考え方でグローバルBCPを策定すればよいのだろうか。海外拠点では「大震災」よりも「洪水」「火山の噴火」「テロ」「労働争議」などのリスク事象が発生する可能性が高いケースが多い。各拠点におけるリスク想定を行い、それぞれの地域・拠点に応じて対応する必要がある。一方で、対策には「共通部分」が多いため、日本の本社で構築した大震災などのケースをベースに「経営リソースへの影響」に着目し計画を策定することで標準的な計画の策定が可能となる。
例えば「経営リソース不足時の優先復旧製品の特定」「要員不足を想定した拠点内・拠点間での多能工化」「サプライヤーの機能停止を想定した複数社購買や部材の標準化」「生産機能の停止を想定した代替生産体制の確立」「有事における生産インフラ・主要サプライヤーとの情報共有体制の確立」などが挙げられる。
またグローバルBCPの策定にはISO22301:2012(事業継続マネジメントシステムの国際規格)を活用することをお勧めする。取得しなければならないというのではなく、グローバルでBCPを語る際の共通言語とすることができるためである。要求事項をかみ砕き自社として目指すべき水準を設定したうえで、グローバル共通のポリシーやチェックリストを策定し、展開することがグローバルBCP策定の第一歩になる。

日経産業新聞 2017年11月21日掲載(一部加筆・修正しています)。この記事の掲載については、日本経済新聞社の許諾を得ています。無断での複写・転載は禁じます。

執筆者

KPMGコンサルティング
シニアマネジャー 土谷 豪

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