2019年におけるオランダ税務アップデート~2020年度オランダ税制改正を含む~

2019年におけるオランダ税務アップデート~2020年度オランダ税制改正を含む~

本稿においては、2020年度オランダ税制改正を含む、2019年中の主要なオランダ税制のアップデートを取り扱います。

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KPMG Insight Vol.35(2019年3月号)「日系企業のオランダストラクチャーに関するオランダ税務論点の概説~2019年度オランダ税制改正を含む~」(以下「2019年記事」という)では、2019年度オランダ税制改正を含むオランダ税制上の主要論点を取り扱いました。本稿においては、2020年度オランダ税制改正を含む、2019年中の主要なオランダ税制のアップデートを取り扱います。
なお、本稿は国際税務研究会 月刊「国際税務」の2019年11月号に掲載された記事を基礎に、2019年12月18日に可決された2020年度オランダ税制改正の内容を反映したものです。本文中の意見に関する部分については、筆者の私見であることをあらかじめお断りいたします。

ポイント

  • APA、ATRなどに係るルーリング制度が改正され、申請対象となる取引に係るオランダとの経済的関連性(Economic nexus)が要求される等、申請要件が厳格化されるとともに、申請内容の要約が匿名で公表されることとなった。十分な事業実体のある企業にとっては、予見可能性の向上などといったメリットが見込まれている。
  • ATAD 2としてハイブリッドミスマッチ対策税制が導入されている。特に外資系企業から買収してきた事業グループなどにおいては、ハイブリッドエンティティなどハイブリッドミスマッチを利用したストラクチャーがしばしば見られるため、留意が必要となる。
  • 2020年度オランダ税制改正は比較的小粒な改正点が多いと評価されているが、いわゆるBEPS 2.0、EUにおけるDAC 6(義務的開示ルール)など国際税務の環境は引き続き大きく変化しているため、最新情報のモニタリングを行うことが望ましい。

I. ルーリング制度についての改正

2019年6月28日、オランダ政府は、APA(Advance Pricing Agreement(移転価格についての事前確認制度)やATR(Advance Tax Ruling(事前照会制度))などのルーリングのうち、国際的な性質を有するものについての制度改正(以下、I.において「本改正」という)に係るPolicy statementの最終版を発表しました。本改正の目的は、ルーリング制度に係る透明性を向上させること、および、潜在的な租税回避行為への対応等であるとされています。新ルールは、2019年7月1日以降に署名・発行されるルーリングに適用されます(年次の税制改正手続きを待たず、2019年7月1日以降において効力が発生しています)。
本改正前におけるルーリング申請に関する要件は次のとおりでした。詳細については誌面の都合上本稿では紹介できませんため、2019年記事を参照ください。

APA
DVL法人については一定の実体要件を充足する場合にのみAPAの申請が可能である一方、非DVL法人についてはAPAの申請にあたって特段の要件の充足は求められない。DVL法人とは、端的には、その70%以上の活動が関係会社から受領するDVL所得(利子、使用料、リース料をいう)を関係会社に支払うものである法人を指す(たとえば、海外関係会社とグループファイナンスを行う法人など)。なお、DVLとはオランダ語のDienstverleningslichaamの略語であり、DVL法人は、実務上、非公式にFinancial service companyなどと英訳されている。

ATR
DVL法人であるか否かにかかわらず、資本参加免税制度の適用に関するATRの申請については、一定の実体要件の充足が求められる。

本改正により、上述のルールが撤廃されたうえで、ルーリング申請対象となる取引についてオランダとの経済的関連性(Economic nexus)がない場合には、ルーリングを取得することができないこととされました。本改正に関するガイドラインにおいて、経済的関連性に関する例として以下が示されています。

「販売活動を行うとともに利子・使用料の収受・支払をしているオランダ法人につき、利子・使用料の収受・支払に関する事業上の機能(Operational functionality)を有していない場合、販売活動に関連するルーリングを取得することは可能であるが、関係会社から収受する利子・使用料に関連するルーリングを取得することはできない。」


また、ルーリング申請対象となる取引についてオランダとの経済的関連性がある場合においても、次のいずれかに該当する場合には、ルーリングを申請することができないこととされました。

  • ルーリング対象となる取引の主たる目的が、オランダまたはオランダ国外の租税を軽減することである場合
  • ルーリング対象となる取引が、法定法人税率9%未満または法人税が存在しない国、もしくは税務執行に非協力的な国に所在する法人との取引である場合

本改正にあたり、本改正前の制度であればルーリングが発行されていたが、本改正後においてはルーリングが発行されない取引として、「株式に関する能動的な管理業務を行っていない持株会社」(資本参加免税制度の適用に関するルーリングが発行されないことなどを意図していると考えられます)などの例示がなされています。新ルールに基づいて発行されるルーリングの有効期間は原則として最大で5年であり、長期間の契約に係る取引などについては例外的に最大で10年とされています。
新ルールに基づいて発行されるルーリングは、そのルーリング内容の要約が匿名で公表され、また、新ルールに基づいて申請されたものの発行されなかったルーリングについても、申請内容と発行されなかった理由の要約が匿名で公表されます。本改正により、ルーリングの発行可否についての透明性が高まるものと期待されています。

II. ハイブリッドミスマッチ対策税制(ATAD 2)

欧州租税回避防止指令(Anti-tax avoidance directive、ATAD)に基づき、ハイブリッドミスマッチ対策税制が導入されました。同案中の主要項目に係る概要は次の1.から3.のとおりです。1.および2.については2020年1月1日以後に開始する事業年度より効力が発生し、3.については2022年1月1日以後に開始する事業年度より効力が発生します。
なお、欧州租税回避防止指令はBEPSプロジェクトを背景にEUで成立した欧州指令であり、CFCルール、アーニングス・ストリッピング・ルール、出国税(Exit taxation)、一般的否認規定(GAAR、General anti-abuse rule)、スイッチオーバールール、ハイブリッドミスマッチ対策税制の6つの柱を有し、すべてのEU加盟国がこれらの規定をそれぞれの国内法に導入する義務があります。ハイブリッドミスマッチ対策税制はその法制化の時期が相対的に遅いため、実務的にATAD 2と呼ばれることがあります。

1. 損金不算入

オランダ納税義務者による支払につき、ハイブリッドミスマッチを起因としてオランダ国外において損金算入される場合、または当該支払に係る受領者がその所在地国で法人税課税を受けない場合には、当該オランダ納税義務者による支払いは、オランダ法人税法上、損金不算入とする。なお、後者の場合には、オランダ法人が他の法人に支払をする際において、当該オランダ法人がオランダ法人税法上Opaque(法人)と取り扱われる一方で、当該他の法人の所在地国の法人税法上Transparent(パススルー)と取り扱われる場合などがある。

2. 益金算入

オランダ納税義務者に対して支払を行う法人において、当該法人の所在地国の法人税法上、その支払が損金算入される場合には、当該オランダ納税義務者が受ける支払は、オランダ法人税法上、(通常、非課税扱いであったとしても)課税所得に算入する。なお、本規定の影響を受けるケースとして、オランダ法人が海外子会社から配当を受領する場合において、当該海外子会社の所在地国の法人税法上、当該海外子会社において当該配当が損金算入される場合などがある。

3. リバースハイブリッドエンティティ

リバースハイブリッドエンティティがオランダにおいて設立等される場合、当該リバースハイブリッドエンティティはオランダ納税義務者として取り扱う。本規定において、リバースハイブリッドエンティティとは、オランダ法人税法上においてTransparent扱いである一方、そのエンティティ(典型的にはパートナーシップ)の出資者(典型的にはパートナー)の所在地国において、Opaqueと取り扱われるエンティティと定義されている。たとえば、オランダのリミテッドパートナーシップであるCV(Commanditaire vennootschap)の出資者が米国に所在する場合において、CVはオランダ法人税法上Transparentと取り扱われるが、米国法人税法上においてはCVをOpaqueと取り扱うことが可能とされており、そのような場合にはCVがリバースハイブリッドに該当することとなる。

III. 2020年度オランダ税制改正

1. 法人税率

2019年におけるオランダ法人税率は25%(20万ユーロまでの課税所得については20%)でした。2019年12月18日に可決された2020年度オランダ税制改正(以下「2020年度の税制改正」という)により、オランダ法人税率は、2020年には(同じく)25%(ただし、20万ユーロまでの課税所得については16.5%)、2021年には21.7%(20万ユーロまでの課税所得については15%)となります。上述の改正内容は、2019年記事で取り上げた2019年度税制改正に基づく2020年・2021年の法人税率の修正となっています。

2. 利子、使用料に係るオランダ源泉税

2019年におけるオランダ国内法においてはオランダ法人が支払う利子および使用料についてオランダ源泉税は課されないこととされていましたが、2020年度の税制改正により、次の改正がなされています(2019年度税制改正の際は、改正方針の発表があったのみで法案の提出はありませんでした)。

  • オランダ法人またはオランダの恒久的施設が、その企業グループに所属する法定法人税率9%未満の国に所在する法人、またはEUのブラックリストに含められている国に所在する法人に対して利子・使用料を支払う場合、もしくはそのストラクチャーが租税回避を目的としたものである場合(Certain abuse situations)には、2021年よりオランダ源泉税を課すこととする。適用源泉税率はその年のオランダ法人税率(標準税率)となる(たとえば、2021年については上記1.に従い21.7%)。租税条約による減免は可能であり、租税条約による減免が可能な場合には、本改正は2024年1月以降に適用される。
  • なお、利子・使用料の受領者が一定の実体要件を充足する場合には、オランダ税務当局が租税回避の事実を立証しない限り、上述の租税回避を目的としたストラクチャーとは取り扱われない。

3. その他

  • 2019年記事のIV.2で取り扱ったDVL法人についての
    Information exchangeに係る実体要件につき、2021年1月より、次の2点の実体要件が追加されることとなった。
    • 10万ユーロ以上の人件費(オランダ賃金税の課税対象となっているもの)が生じていること
    • 最低24ヵ月以上の間、オフィススペースが利用可能であること
  • 2019年度の税制改正により導入されたオランダCFCルールにおいては、CFCが一定の実体要件(リストアップされている要件、詳細は2019年記事を参照)を充足する場合には合算課税が生じないこととされているが、2020年度の税制改正により、当該実体要件を充足している場合においても、CFCが実質的な経済的活動(Substantive economic activity)を有していないことをオランダ税務当局が立証できれば、合算課税が生じ得るよう変更がなされた。なお、実質的な経済的活動についての定義や判断基準は公表されていない。
  • 2020年度の税制改正により、2020年1月1日以後に開始する事業年度において、オランダにおける銀行業または保険業に関する許認可等を有するオランダの銀行および保険会社(非オランダ銀行のオランダ子会社およびオランダ支店を含む)を対象とした過少資本税制が導入された。
  • 2020年度の税制改正により、2021年1月1日以後に開始する事業年度において、イノベーションボックス制度を適用する場合の実効税率が9%(2019年においては7%)とされた。
  • 2020年度の税制改正により、オランダ国内法中の恒久的施設の定義が変更され、いわゆるBEPS防止措置実施条約(MLI)における定義と整合するものとなった。なお、関連する租税条約において恒久的施設の定義が定められている場合、当該租税条約中の定義が国内法に優先して適用されることとなる。
  • 2020年度の税制改正により、非居住用不動産に適用される不動産譲渡税に係る税率が2021年から7%となった(2019年においては6%)。

IV. その他(子会社清算損)

現行のオランダ国内法においては、オランダ法人が有する子会社(その株式が資本参加免税の対象となる株式であるものに限る)が清算した際の清算損は、当該子会社がその所在地国における事業を完全に撤退する場合など、一定の場合に限って損金算入が認められています(たとえば、上述の子会社が同一の企業グループ内の別会社に当該事業の全部または一部を譲渡して事業を継続する場合には、清算損の損金算入は認められない)。
この点に関し、次のような方向性で改正を行うことを検討する旨が公表されていますが、法案はまだ提出されていません。

  • 2021年1月1日以後に開始する事業年度に生じる清算損につき、その清算損の金額が500万ユーロを超える場合には、現行の要件に加えて次の3つの要件のすべてを充足する場合にのみ清算損の損金算入を認めることとする。
    • オランダ法人がその子会社を支配していること(株式の保有割合が50%超である場合など)
    • その子会社が(オランダを含む)EUまたはEEAに所在していること
    • その子会社の解散決議が、原則として、その子会社の事業活動停止日の属する暦年の翌年1月1日から3暦年以内になされていること

執筆者

Meijburg & Co(KPMGオランダ)
パートナー Cees van der Helm

KPMG税理士法人
マネジャー 河崎 嘉人

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