日系企業のオランダストラクチャーに関するオランダ税務論点の概説~2019年度オランダ税制改正を含む~

日系企業のオランダストラクチャーに関するオランダ税務論点の概説

本稿においては、日系企業のオランダストラクチャーに関し、2019年度オランダ税制改正を踏まえた上でオランダ税務上の主要論点の概説を行います。

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欧州市場への好アクセス、優れた物流とテクノロジーのインフラ、教育レベルの高さや多言語に対応できる人材、魅力的な税制などといったオランダの強みを背景とし、様々な日系企業がオランダに持株会社、グループファイナンス会社、物流統括会社や販売会社などを有しています。日本における2017年度税制改正により、原則として日系企業のオランダ子会社が本邦タックスヘイブン対策税制の射程内となったことから、既存のオランダストラクチャーの見直しを進めている日系企業が多くみられます。本稿においては、日系企業のオランダストラクチャーに関し、2019年度オランダ税制改正を踏まえた上でオランダ税務上の主要論点の概説を行います。なお、本稿は国際税務研究会 月刊「国際税務」の2018年11月号に掲載された記事を基礎に2018年12月18日に可決された2019年度オランダ税制改正の内容を反映し、かつ、誌面の都合からBEPS防止措置実施条約に関する記述を削除したものです。本文中の意見に関する部分については、筆者の私見であることをあらかじめお断りいたします。

ポイント

  • 相対的に低い法人税率、100%免税が認められる資本参加免税制度、30%ルーリング制度など、オランダ税制は欧州諸国の中で依然として魅力的である。
  • オランダにおける実体要件は2019年度オランダ税制改正の対象とならなかったものの、今後強化されていく可能性がある。日本のタックスヘイブン対策税制や租税条約などの観点と併せて総合的にオランダにおける実体を再考・モニタリングしていくことが望ましい。
  • 欧州租税回避防止指令に基づきオランダ国内法にCFCルールが導入された。欧州租税回避防止指令上、CFCの定義における保有資本割合の要件など日本のタックスヘイブン対策税制と比較して厳格な点がある。オランダCFCルールの観点からオランダ子会社傘下のストラクチャーをチェックすることが望ましい。

I. 法人税率

2018年におけるオランダ法人税率は25%(20万ユーロまでの課税所得については20%)でした。2018年12月18日に可決された2019年度オランダ税制改正(以下、「2019年度税制改正」という)により、2019年のオランダ法人税率は25%(20万ユーロまでの課税所得については19%)となり、かつ、今後段階的に法人税率が引き下がり2021年には20.5%(20万ユーロまでの課税所得については15%)となります。

II. 資本参加免税制度

資本参加免税制度は、一定の適用要件を充足する場合に、オランダ法人が保有するオランダ国内外の株式からの配当、当該株式に係る譲渡益の全額を免税とする制度です。資本参加免税制度の適用要件を充足する株式に係る株式譲渡損は、一定の場合における事業撤退時における清算損などの例外を除き、オランダ法人税法上、全額損金不算入として取り扱われます。
資本参加免税制度の適用要件は、原則として、Shareholding Test(5%以上の株式保有)及びMotive Test(ポートフォリオ投資に該当しないこと、又は、ポートフォリオ投資に該当したとしても適格ポートフォリオ投資に該当すること)の2点ですが、Motive Testを充足しない場合においてもMinimum Tax Test(当該株式の発行法人の利益が、オランダ法人税制に照らした場合に10%以上の税率で課税されていること)又はAsset Test(当該株式の発行法人の総資産の50%未満が「事業に関連しない資産又はその資産から生じる所得が軽課税対象又は非課税である資産」であること)を充足すれば適用要件を充足するとされます。なお、上述の適用要件は概要であり、詳細な規定が別途定められていることに留意ください。実務上、資本参加免税制度の適用要件の充足の確認に関し、投資先法人の状況などを踏まえて毎年モニタリングするような税務コンプライアンス体制を確立することが望ましいと考えます。
資本参加免税制度の適用を受ける場合、当該適用対象となる配当・譲渡益に係る源泉税は、オランダ外国税額控除の対象とならず、損金算入も認められません。なお、オランダ財務省が2018年2月23日に公表したレター(以下、「2018年財務省レター」という)において、「企業グループのオランダにおける実体が十分でない場合に当該グループのオランダ中間持株会社が資本参加免税を適用できないように税制改正をすべきか否かの調査を2020年から実施することを考えている」旨を明らかにしています。

III. 配当、利子、使用料に係る源泉税

1. 現行法における取り扱い

オランダ国内法上、原則として、オランダ法人が日本親会社に支払う配当については15%のオランダ配当源泉税が課されます。しかしながら、2018年度オランダ税制改正を受け、2018年1月1日以降、日本親会社が5%以上の株式保有をしており、かつ、そのストラクチャーがオランダ配当源泉税の免税を目的としたものでなければ、オランダ配当源泉税は免税として取り扱われます。日蘭租税条約における配当源泉税の免税に係る適用要件のうち株式保有割合に係る要件は「50%以上の保有」であるため、上記国内法の改正により、日本親会社にとってのオランダ配当源泉税免税のための株式保有割合に関する要件は緩和されたこととなります。
オランダ国内法上、オランダ法人が支払う利子及び使用料についてはオランダ源泉税は課されません。

2. 2019年度税制改正による影響

2019年度税制改正により、以下の内容が定められました。

オランダ法人が支払う利子・使用料が軽課税国に所在する法人又はEUのブラックリストに含められている国に所在する法人への支払いである場合若しくはそのストラクチャーが租税回避を目的としたものである場合には、当該利子・使用料につき2021年よりオランダ源泉税を課すこととする(租税条約による減免は可能)。

IV. 実体要件

1. 実体要件のリスト

現行のオランダ国内法においてオランダ法人に求められる実体要件の概要は図表1のとおりです。DVL法人の意義及び各実体要件と各関連規定の関係については、次の2.から5.を参照ください。

図表1 オランダ法人に求められる実体要件の概要
図表1 オランダ法人に求められる実体要件の概要

2018年財務省レターにおいて、上記実体要件に加えて以下の2点の実体要件が追加されることが提案されました。この点は2019年度税制改正に含められなかったものの、依然として、近い将来に上記に関する税制改正が行われる可能性があります。

  • 10万ユーロ以上の人件費が生じていること
  • 最低24ヵ月以上の間、オフィススペースが利用可能であること

2. Information exchange

International Assistance in the Levying of Taxes ActのArticle 8において、DVL法人という会社定義に該当するオランダ法人については、図表1中の(1)から(6)及び(8)から(11)の実体要件を充足しない場合、オランダ税務当局が、充足しない実体要件を、当該法人のDVL所得(利子、使用料、リース料をいう。以下同じ)が生じ、かつ、租税条約や欧州指令などの減免規定を適用している国の税務当局に自主的に提供することを定めています。DVL法人とは、端的には、その70%以上の活動が海外関係会社から受領するDVL所得を海外関係会社に支払うものである会社を指します(例えば、海外関係会社とグループファイナンスを行う法人など)。なお、DVLとはオランダ語のDienstverleningslichaamの略語であり、DVL法人は、実務上、非公式にFinancial service companyなどと英訳されています。
上記規定に基づいてオランダ税務当局が海外税務当局にDVL法人の情報提供を行うこと自体が自動的に課税関係を引き起こすものではないですが、当該情報提供が海外税務当局においてDVL法人の実体が乏しいのではないかとの懸念を引き起こし、当該当局が租税条約等の適用についてチャレンジをするといった課税リスクが想定されます。また、海外税務当局のチャレンジが実際になくとも、状況によっては、会計上の引当の要否の議論が生じるなどといった可能性もあると思料されます。
2018年財務省レターにおいて、上述のInformation exchangeの規定をInternational holding companyに該当するオランダ法人にも適用することが提案されました。この点は2019年度税制改正に含められなかったものの、依然として、近い将来に前記に関する税制改正が行われる可能性があります。

3. 法人税の課税所得計算への影響

Corporate Income Tax ActのArticle 8cにおいて、DVL法人が図表1中の(10)の実体要件を充足しない場合、当該DVL法人は単なるIntermediaryと取り扱われ、DVL所得の受益者ではないという整理の下、オランダ法人税の課税所得計算上、当該DVL法人のDVL所得は除外され、当該DVL法人が実質的に果たしているサービス機能に係る所得(典型的にはコストプラスに基づくハンドリングフィーなど)が課税所得に含まれる旨定められています。その場合、上記規定が適用されることで課税所得は減少し得る一方、上述の整理に従い、DVL所得について課された外国源泉税はオランダ外国税額控除の対象外となり、また、損金算入も認められません。
さらに、図表1中の(10)の実体要件を充足しない場合、オランダ税務当局は、その旨を源泉地国の税務当局に情報提供することとなります。従って、源泉地国の税務当局が租税条約等の恩典の適用を否認するリスクが高まると想定されます。

4. Advance Pricing Agreement

多くの国と同様、オランダにおいてもAPA, Advance Pricing Agreement制度(移転価格についての事前確認制度)が存在します。非DVL法人については実体要件の充足に関わらずAPAを申請することができますが、DVL法人については図表1中の(1)から(9)及び(11)の実体要件を充足する場合に限りAPAの申請をすることが認められています。

5. Advance Tax Ruling

ATR, Advance Tax Ruling(事前照会制度)とは、以下のクロスボーダー取引・ストラクチャーをはじめとする様々な項目につき、課税関係をオランダ税務当局に事前に確認する制度です。

  • 中間持株会社などについての資本参加免税制度の適用
  • ハイブリッドエンティティ又はハイブリッドファイナンス
  • 外国法人のオランダにおける恒久的施設 など

DVL法人及び非DVL法人の双方につき、上記資本参加免税制度に関するATRについては、図表1中の(1)から(9)及び(12)の実体要件を充足する場合若しくはオランダにおいて能動的な活動を行っている又は行う予定である場合に限り申請をすることが認められています。

6. 参考 税務上の居住地国

オランダで設立・登記された法人は、多くのオランダ国内法上、オランダ居住法人と取り扱われ、前述の実体要件の充足はオランダ国内法上のオランダ居住性と関係しません。ただし、たとえばオランダで設立された法人の取締役の大部分が他国で勤務し、当該法人の経営が実質的に当該他国で行われている場合など、当該他国の税務当局より当該法人の税務上の居住地国が当該他国であるとチャレンジを受ける可能性があります。その場合、租税条約における所謂タイブレーカールールに基づき両国税務当局が協議をするなどといったプロセスが考えられ、その結果、オランダで設立された法人の税務上の居住地国が他国と取り扱われ、オランダ税法上の非オランダ居住法人と取り扱われる可能性があります。

V. 支払利子損金算入制限規定

1. Article 10a (Tainted transaction loans)

Corporate Income Tax ActのArticle 10aにおいて、次の取引に関する借入に係る支払利子の損金算入を認めない旨が定められています。

  • オランダ法人から関係会社への増資のために行われる、当該オランダ法人による当該関係会社からの借入
  • オランダ法人から関係会社への配当又は資本の払い戻しのために行われる、当該オランダ法人による当該関係会社からの借入 など

ただし、事業上の目的に基づく借入である場合や、借入元である関係会社において受取利息に対する十分な課税が生じている場合などには、それらを証明することで上記損金不算入規定の適用を回避することが認められています。

2. Article 13l及びArticle 15ad

2019年度税制改正により、2019年から以下の支払利子損金算入制限規定が廃止されました。

  • Article 13l(資本参加免税制度の対象となる投資のための借入が過大である場合の支払利子損金算入制限規定)
  • Article 15ad (オランダ連結納税グループに算入するオランダ法人の買収のための借入が過大である場合の支払利子損金算入制限規定)

3. Earnings-stripping rules

欧州租税回避防止指令に基づく2019年度税制改正により、2019年からオランダ税法にアーニングス・ストリッピング・ルール(Earnings-stripping rules)が導入されました。同ルールにおいては、オランダ法人における損金算入可能な純支払利子は税務上のEBITDAの30%に制限され、この制限は連結納税単位で適用されます。ただし、最初の100万ユーロまでの純支払利子は上記ルールの適用外とされます。2016年6月17日において存在する借入については既得権条項の手当がなく、また、グループ比率ルールの手当もありません。

VI. CFCルール

欧州租税回避防止指令に基づく2019年度税制改正により、2019年からオランダ税法に次のCFCルールが導入されました。

  • オランダ納税者が非オランダ法人の株式の50%超を直接又は間接に保有する場合若しくはオランダ国外に恒久的施設を有する場合、当該法人又は恒久的施設はCFCと取り扱われる。
  • 上記50%超保有の判定はオランダ納税者の関連者(当該オランダ納税者と25%以上の資本関係がある法人など)と併せて行われ、かつ、当該関連者が有する保有割合がそのまま(プロラタ計算を行うことなしに)オランダ納税者の保有割合としてカウントされる。従って、たとえばオランダ法人が非オランダ法人Aの株式を25%保有し、非オランダ法人Aが非オランダ法人Bの株式を50%超保有する場合、非オランダ法人Bは当該オランダ法人にとってのCFCに該当する。
  • 法人税が存在しない国又は法定法人税率が9%未満の国に所在するCFC、若しくは、EUのブラックリストに含められている国に所在するCFC(ただし、当該CFCが2ヵ国の居住者であり、かつ、EUのブラックリストに含められている国以外の居住地国の法定法人税率が9%以上である場合のCFCを除く)については、原則として合算課税の対象となる。上記の国のリストについては以下のオランダ政府のウェブサイトにて公表されている。
    Netherlands publishes own list of low-tax jurisdictions in fight against tax avoidance
  • 合算対象となる所得は、一定の受動的所得(一定のマイノリティ投資に係る配当及び株式譲渡益、受取利子、使用料、リース収入など)のうち期末までに未配当のものから関連費用を控除した後の金額である。
  • CFCが以下のいずれかの要件を充足する場合には、合算課税は生じない。なお、以下要件の充足についてはオランダ納税者が立証責任を負うとされているものの、合算課税免除にあたっての形式的な要件(申告書別表の提出や文書化の要否など)の有無は2019年2月1日現在において明らかにされていない。
    • (i)図表1中の(1)から(6)の実体要件(「オランダ」とある箇所を「CFCの居住地国」と読み替える)、(ii)10万ユーロ以上の人件費が生じていること、(iii)最低24ヵ月以上の間、オフィススペースが利用可能であること、の全てを充足すること
    • CFCが実体のある経済的活動を行っていること
    • 上述の受動的所得の合計額がCFCの課税所得の30%未満であること
    • CFCが一定の金融サービスを行っていること

VII. 30%ルーリング制度

30%ルーリング制度は一定のオランダ駐在員についてのオランダ個人所得税に関する優遇制度であり、同制度の適用がある場合、最長8年間、雇用所得(役員報酬を含む)の30%が非課税と取り扱われるなどといったメリットがあります。2019年度税制改正により、2019年以降、上述の8年間の適用期間が5年間に短縮されるとともに、既存適用者に対する2020年末までの期間における既得権条項が設けられました。

VIII. おわりに

前述の通り、BEPSプロジェクトや欧州租税回避防止指令などに従って、オランダ国内法の改正の動きが進んでいます。また、2018年財務省レターにおいて、「オランダが税務目的の導管国に利用されることや国際的にそのようにみられることは、オランダへの投資環境という観点から望ましいことではなく、これから変革していかなければならない」旨を表明しています。日系企業においては、上述のオランダ国内法、本邦国内法、(オランダからの投資先など)第三国の国内法、及び租税条約など、様々な税の観点から、オランダストラクチャーを最新の税法や実務に照らして再考・モニタリングしていくことが望ましいと考えます。

執筆者

Meijburg & Co(KPMGオランダ)
アムステルフェーン事務所
パートナー Cees van der Helm
マネジャー 河崎 嘉人

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