「ネットワーク」という概念は過去のものに。5Gが生み出す新たな可能性 #読む5G

「ネットワーク」という概念は過去のものに。5Gが生み出す新たな可能性 #読む5G

いよいよ商用開始が目前に迫った5G。大きな特徴としては、これまでの世代のモバイル網と比べて、通信データの遅れが極めて小さくなる「超低遅延」、4Kビデオや8Kビデオのような大きなデータを送受信できる「広帯域」、そして、これまで以上に多くの端末やIoTデバイスを接続することができるようになる「多端末接続」という3点が挙げられます。

茶谷 公之

KPMG Ignition Tokyo代表取締役社長兼CEO/KPMG Japan CDO

KPMG Ignition Tokyo

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このような特徴から「5G」で繋がるネットワークは、われわれにまったく新しい世界を見せてくれることになるでしょう。それによる大きな変化や可能性を示す前に、コンピューティングに視点をおいてデータ通信の歴史を少し振り返ってみたいと思います。

メインフレームから1人1台へ

コンピュータは、当初、1台のメインフレームと呼ばれる巨大なコンピュータを、時間分割などの手法を用いて、ユーザーが分け合って使うかたちでした。いまから70年前の1950年ごろの話です。メインフレームコンピュータは、寸法的や重量的には業務用冷蔵庫のような大きなサイズでしたが、性能的には現在のスマートフォンの足元にも及ばないものでした。

その後1980年後半頃から、メインフレームからミニコンへといったダウンサイジングの波が加速し始め、パソコンと呼ばれるパーソナルコンピュータにOS(オペレーティングシステム)が搭載され、オフィスに普及しはじめます。

先端的な企業では、このころからオフィス環境は「コンピュータが1人1台」という時代となっていきます。私が新卒で1987年に入社したソニーでは、まだそのころは1つの課に1台しか設置されず、課の人間で共同利用していたのを覚えています。

1人1台へと普及していったパーソナルコンピュータ、通称パソコンは、社内ネットワーク、そしてインターネットへと接続する進化を遂げたことで、オフィスの仕事スタイルを大きく変えてゆきます。

文書データや計算データをファイルの形で作成し、それを会社が保有し管理しているデータセンターに置き、随時そこから取り出して仕事をするようになります。元々パソコンはそれほど大きなストレージ(記憶装置)を備えていないので、共通のデータセンターを置き、それを電子書庫的に使いながら発展していきました。

クラウドコンピューティングで一変

そして、1990年代のウェブブラウザの発明と普及を契機として、アプリケーションをパソコン上で動作させるよりも、データセンターのサーバ上で各種サーバアプリケーションを動作させるような使い方が広がって行くことになります。つまり、パソコンとデータセンターやサーバセンターが、ある意味、対になって急速に普及し、多様な業務アプリケーションを提供してゆきます。

このころは、まだコンピュータは主に業務用途で、個人でコンピュータを保有し、使っている人はそれほど多くはありませんでした。というのも、まだ家庭には光デジタル回線もADSLなどの高速回線もまだ入っておらず、一部のコアユーザがISDNなどのいまから見るとかなり低速なデジタル回線を使って、インターネットなどを活用し始めたところでした。多くの人は、まだアナログモデムを使って極めて細々とした帯域でインターネットに繋いでいました。

ところが、携帯電話網の普及とスマートフォンの誕生から、黎明期のメインフレームを遥かに越えるコンピューティングとストレージを個人が持つようになり、しかもそれを、常時、携帯する時代となりました。

本格的なスマートフォンの普及が始まって、まだ15年も経っていないのですが、われわれの生活は大きく変わりました。そして、普及が始まった当時に存在していたモノやサービスが、次々とスマートフォンのアプリケーションとなっていきました。

スマートフォンは個人が保有していることから、何か事件やニュースがあると、膨大な通信トラフィックが、サーバへと世界中から押し寄せるようになりました。すると、こういったユーザの本能的で突発的な通信トラフィックニーズには、旧来型のデータセンターやサーバセンターでは対処できなくなりました。

そこで生まれてきたのが、柔軟に計算資源や記憶資源を提供できる構造を持った「クラウド」と言われるコンピューティング機能です。

これまでは計画経済的に通信トラフィックや計算ニーズを無理やり予測して、サーバ調達やストレージ調達、ネットワーク帯域調達を行う必要がありました。しかし、クラウドの誕生によって、インターネットや社内ネットワーク上で多様な社内外向けサービスを提供する必要があった企業は、非常に難易度が高いが精度の高くないネットワークトラフィックの需要予測やコンピューティング需要予測から解放されることとなりました。予算策定において担当者と意思決定者を悩ませていた需要予測問題が不要となったのです。

ここまでの変化、あるいは進化は、あくまでもサーバとクライアント端末の間で起こってきたもの(サーバ・クライアントモデル)ですが、5Gは、この関係性を新しいものにすると考えています。

5Gの「超低遅延」「広帯域」「多端末接続」の可能性

「超低遅延」、つまり遅延が小さいということはどういうことかというと、「繋がった先が近くに感じる」ということ。「広帯域」というのは、繋がった先の様子がリアルに見えるということにほかなりません。そして、「多端末接続」ということは、5Gネットワークを通じて、無限に近い入出力信号をやり取りできるということになりますので、ネットで接続した先が、あたかも皆さんのすぐ隣りに存在しているかのような感覚を得られるということになります。

これまでの4Gでは、使っている私たちにまだ、繋いだり切れたりする「ネットワーク」という意識が残ってしまっていたものが、5Gではヒトとコンテンツの関係において、「ネットワーク」という意識が消えていくということになるでしょう。そして、それは新たなコンテンツの誕生を意味するものと考えられます。

例えば、遠くに住む老親と5Gの「超低遅延」「広帯域」を活用して、親と自分の部屋の2つを常時接続させてしまえば、それはあたかも「遠隔同居」という新たな世界ができるのです。親の健康状態もセンサー経由でコンピュータがモニタし、分析してくれるサービスも可能になっていくでしょう。

5Gは、「超低遅延」「広帯域」「多端末接続」といった特徴をふんだんに取り入れる事でコンピューティング空間に仮想的に我々が存在する様なSF映画が描いてきたようなまったく新しい世界を見せてくれることになるでしょう。

※この記事は、「2020年3月5日掲載 Forbes JAPAN」に掲載したものです。この記事の掲載については、Forbes Japanの許諾を得ています。無断での複写・転載は禁じます。

執筆者

KPMG Ignition Tokyo
代表取締役社長 兼 CEO
茶谷 公之

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