IASB、「概念フレームワークへの参照(IFRS第3号の改訂)」を公表

IASB、「概念フレームワークへの参照(IFRS第3号の改訂)」を公表

ポイント解説速報 - 国際会計基準審議会(IASB)は2020年5月14日、「概念フレームワークへの参照(IFRS第3号の改訂)」を公表しました。本改訂は、現行のIFRS第3号の会計処理の要求事項を大きく変えることなく、IFRS第3号において参照する「概念フレームワーク」を、最新のものへ更新することを目的としています。

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要約

本改訂は、IFRS第3号「企業結合」に対して、以下の3つの修正を行っています。

  • 取得日時点において認識される資産と負債の定義の参照先である概念フレームワークのバージョンを1989年版のものから2018年版のものに更新する。
  • IFRS第3号の認識原則に更なる例外を設け、IAS第37号「引当金、偶発負債及び偶発資産」もしくはIFRIC解釈指針第21号「賦課金」の適用対象となる負債や偶発負債について、2018年版の概念フレームワークではなく、IAS第37号もしくはIFRIC第21号に基づき、取得日時点において現在の義務を有しているかを判定する。
  • 取得企業は、偶発資産を認識できないことについて、IFRS第3号の基準内において明確化する。

I. 改訂の経緯

これまでのIFRS第3号「企業結合」(以下、「IFRS第3号」)は、企業結合時において取得した識別可能な資産と引き受けた負債の認識について、1989年に公表された概念フレームワーク(以下、「1989年版」)における資産と負債の定義を満たすものを認識することを要求していた。

この概念フレームワークは2010年と2018年に改訂されており、資産と負債の定義に関しては、2018年に公表された概念フレームワーク(以下、「2018年版」)において1989年版のものから変更されている(2010年の改訂時には、資産と負債の定義は1989年版から変更されていない)。

ここで、IFRS第3号における取得した識別可能な資産と引き受けた負債の認識原則について、参照する概念フレームワークのバーションを1989年版のものから2018年版のものへ変更した場合に、当該変更により意図しない影響が生じることが懸念されていた。これは、2018年版の概念フレームワークの定義に基づいて認識される資産と負債の範囲が1989年版よりも広いと考えられるためである。IASBは、IFRS第3号の概念フレームワークの参照先の変更プロジェクトにおいて、参照先を変更した場合の影響について検討を行い、今回、参照先の変更とともに必要となる対応を行った。

なお、概念フレームワークの改訂内容に関しては、以下の解説を参照されたい。

「財務報告に関する概念フレームワーク」に関するあずさ監査法人の会計・監査ニュースフラッシュ

II. 改訂内容

本改訂においては、現行のIFRS第3号の要求事項を大きく変更することなく、資産と負債の定義について2018年版の概念フレームワークを参照するために、IFRS第3号に対する以下の3か所の修正が行われている。なお、公開草案からの実質的な変更は行われていない。

(1)参照する概念フレームワークのバージョンの変更(1989年版から2018年版へ)
1つ目の修正として、IFRS第3号における資産と負債の定義に関して、1989年版の概念フレームワークを参照している箇所を取り除き、2018年版の概念フレームワークを参照するように置き換えた。


(2)Day2損益が生じる問題に対する対応
IASBは、参照する概念フレームワークのバージョンを更新することにより生じる影響を分析した結果、2018年版の概念フレームワークの負債の定義を満たすことにより取得日時点に認識された負債が、企業結合直後においてIAS第37号「引当金、偶発負債及び偶発資産」やIFRIC解釈指針第21号「賦課金」が適用されることにより、直ちに当該負債の認識が中止され、認識の中止による利得が生じる問題のみが実務上、重要となるものと結論づけた※1
この問題が生じるのを避けるため、2つ目の修正として、IASBはIFRS第3号における認識原則に関する更なる例外を設けた。すなわち、IAS第37号の偶発負債については、現行のIFRS第3号でも認識原則の例外が適用されているが(IFRS第3号第22項-第23項)、今回の改訂では、IAS第37号もしくはIFRIC第21号の適用対象となる負債や偶発負債に関する認識の判定においては、概念フレームワークではなく、IAS第37号もしくはIFRIC第21号を適用して、取得日時点において現在の義務を有しているか否かを判定することにした。当該改訂により、Day2損益の認識を回避するだけでなく、企業結合時に認識される資産・負債の範囲についても、現行のIFRS第3号からの変更は生じないと考えられている。

※1 IFRIC第 21号を適用する場合、企業は、法令で特定された賦課金の支払のトリガーとなる活動を行った時点で負債を認識する。他方で、2018年版の概念フレームワークを適用する場合には、企業が賦課金の支払のトリガーとなる活動の前に何らかの活動を行っている場合において当該支払いの直接のトリガーとはならない活動を行った時点で負債が認識される可能性がある(IFRS3.BC264B)。また、IFRIC第21号はIAS第37号の解釈指針であり、IAS第37号の対象の義務についても同様の問題が生じる可能性があるため、両基準に基づく負債または偶発負債が改訂の対象となっている(IFRS3.BC264D)。


(3)偶発資産の認識禁止に関する記載の明確化

3つ目の修正として、本改訂では、企業結合時において、取得企業が偶発資産を認識してはならないことをIFRS第3号の基準内に記載することにより明確化した。現在のIFRS第3号では、取得企業が偶発資産を認識することを禁止しているが、このことは結論の背景のみに記載されており、今回の改訂に合わせてこの点を明確化した。

III. 適用日

本改訂は2022年1月1日以降に開始する事業年度の期首以降に取得日がある企業結合に対して、将来にわたって適用される。2018年3月に公表された「IFRS基準における概念フレームワークへの参照の改訂」で行われた全ての改訂を適用している場合には、早期適用も認められる。なお、早期適用する場合においてその事実の開示は必要とされない。

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執筆者

有限責任 あずさ監査法人
会計プラクティス部
シニアマネジャー 内田 俊也

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