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加速するモビリティ

加速するモビリティ

本稿では、米国において消費者行動の急速な破壊的変革によってもたらされた、公共交通機関が抱える課題を提示し、新技術とテクノロジー主導のパートナーシップの採用により、消費者の期待に応えるための公共交通機関の最適化について考察します。また日本のモビリティ社会についても言及します。

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全米の公共交通機関の利用者は過去10年間で減少し、近年その減少率は加速しています。中でもバス利用者が15%減少したことが大きな要因となっています。
低コストの選択肢の1つであるバスの利用者減少の原因として、移動手段の選択肢が増えたこと、利便性やカスタマイズされた体験がコストに勝ることが多いなどの理由が挙げられます。
そこで消費者の真の望みおよびニーズの理解の重要性、継続利用者を増やすために公共交通機関に求められている変化、そしてそこからもたらされる恩恵について検証します。

ポイント

  • 全米の公共交通機関の利用者は過去10年間で5%減少。その主な要因はバスの利用者が15%も減少したことだと考えられる。
  • 全米で、バスおよび鉄道網を「管理が行き届いた状態」に維持するためのインフラプロジェクトは、財源不足から900億ドル分が実行されないままになっている。
  • 今日の変化しつつある輸送環境の中で、利用者が移動において最重要視することへの理解を深めるためには、従来のデータソースだけでは不十分である。
  • テクノロジーが急速に変化し、交通手段の選択肢も増加するなか、公共交通当局は民間交通サービスとの提携関係やオンデマンド型ソリューションの開発も視野に入れるべきである。

公共交通機関利用者の急激な減少

減少傾向にあった公共交通機関利用者数が、2017年にはついに過去20年で最大の減少率であるマイナス3%になりました(2009年の世界金融危機の余波を除く)。ごく最近では鉄道やLRTの利用者も減少し始めてはいるものの、バスの利用者の減少は際立っています。
その要因として考えられるのが、新技術と移動手段の多様な選択肢の普及でしょう。中でもUberやLyftといった送迎サービスや相乗りサービスが注目されています。また同乗者なしでの自家用車の移動が依然として多く、カーシェアリング、自転車シェアリングや、電動スクーターの利用者も増えています。利用者が複数の輸送形態を選択しているという事実を踏まえ、市当局のリーダーは、これらの選択肢をどのように活用するかが課題です。
さらには、財源不足により、バスをはじめとする公共交通機関を「管理が行き届いた状態」に維持するための多くのインフラプロジェクトが実行されないままになっています。消費者の期待に応える競争力があり、持続可能なサービスを提供するためのシステム近代化に投資する資金が不足しているのです。

消費者の望み(およびニーズ)の理解

今日の変化しつつある輸送環境の中で21世紀の利用者が最重要視するものが何かを理解することが大切です。それによって市当局およびコミュニティは、効果的に対応し、モビリティの進化をデジタル時代に向けて導くことが可能となるのです。こうした考えを実証するために、KPMGはバス利用者の減少に見舞われているデンバー、ヒューストン、サンディエゴの3都市について分析を行いました。その結果は、都心部では交通機関へのアクセスが良いのにもかかわらず、オンデマンド型サービスの柔軟性にはかなわないことを物語るものでした。つまり、サービス地域のカバー率は問題ではなく、価格競争力、利便性、および快適性が行動上のトレードオフに魅力的に映っていることが判明したのです。
また、コストと利便性のトレードオフを評価するために、オンデマンド型の乗合型小型バスであるマイクロトランジットの経済性、およびそれがバスサービスを補完する実行可能性についても分析しました。その結果、マイクロトランジットは利用者のニーズに応え、コスト効率の高いバスの補完サービスを提供できる可能性があることが判明しました。

必要な変化とその恩恵

テクノロジーが急激に進化し、交通手段の選択肢も増加している社会では、公共交通当局は運輸サービスをデジタル化時代の消費者行動に適合させる必要があります。そのために、公共交通当局は以下の3つの手段を講じることができます。

  • 利用者の目的地、価値観、好みなど、消費者のニーズを知るための従来とは異なるデータソースの活用。
  • 輸送サービスをデジタル時代に適合させ、今日の消費者へのサービスを包括的に向上させるパートナーシップの構築。
  • より広範な消費者の要求を満たすオンデマンド型ソリューションの開発。

今日正しい投資を行うことは、競争力の維持に不可欠です。結果として、地域経済の生産性はより高くなり、公共機関の財政はより健全になり、利用者の満足度はより高くなるでしょう。
消費者が公共交通機関から離れつつあることは、公共交通機関が変化し、システムを改善する方法を見つけ出さなくてはならない時が到来していることの明確なサインなのです。

日本独自のモビリティ社会に向けて

米国同様に、日本の乗合バス事業は多くの問題を抱えています。赤字事業者の増加や乗客の減少、高齢化に伴う生産労働人口の減少や定住人口の流出による運転手不足、高齢者の運転免許証の返納や1人暮らしの増加に伴う交通弱者の増加という課題もあります。さらに訪日観光客により、日本のバスはわかりづらく、使いづらいことが指摘されています。日本の公共交通機関が「消費者の好みを理解していないこと」も、これら課題の要因の1つと言えるでしょう。
しかしながら、こうした状況はモビリティの進展に伴って起こった輸送の代替手段のコスト低減が原因ではありません。それ以前の社会問題として存在し、今後さらに大きな問題となっていくことがほぼ確実な状況です。日本の公共交通事業者は、本稿で指摘しているステージの手前の議論をしなければならないのかもしれません。消費者にとっての新しい選択肢が増え、それぞれのプレーヤーが経済性を担保してからようやく「補完」「協業」「共存」が見えてくるものだと思うのです。

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