Brexit後もEU出身スタッフを確保するには

Brexit後もEU出身スタッフを確保するには

英国では、企業はBrexit後に外国人を雇用する際、これまでと違った対応が求められることになりますが、この点について考慮している企業が極めて少ないことをPunam Birlyは指摘しています。

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英国がEUを離脱すると多方面で変化が生じることは、周知のとおりです。人・物・資本・サービスの自由な移動が制限され、規制改正が行われる見込みであるほか、新たな関税・非関税障壁が導入される可能性もあります。企業の大半が変化に備えて準備を進めていますが、私のこれまでの経験から考えると、2021年1月から新たな移民政策の実施が予定されている中で、海外からの労働者を雇用し続けるのであれば、企業はこれまでとは異なる方法での対応が求められると想定されるものの、そのことについて適切に検討を進めている企業はほんのわずかのようです。

そのリスクは非常に大きいものです。必要な行政手続きをすべて行わなければ、数百万の合法的に滞在している外国人が一夜にして不法滞在となるという状況をこれまで英国は経験したことがありません。

対象になるEU市民の数がかなり多いことや、そのような人たちが対応を迫られるプロセスを考えると、合意を得たうえでの離脱、合意なき離脱、どちらにしても一部には不法滞在とされてしまう人が出てくることになるでしょう。英国には現在、約370万人のEU市民が居住しています。メイ英首相の離脱協定案が合意されると、英国居住のEU市民は一人一人が英国の居住申請を行う必要があり、その申請期限は2021年6月に設定されています。

一方で離脱案が合意されなければ、2019年3月29日まで英国に居住しているEU市民のみが、2020年12月31日までに定住(settled)または仮定住(pre-settled)のステータスを申請することが可能です。一方で3月29日以降に英国に入国したEU市民は、追加的な期限付き滞在許可の申請をしなければ、わずか3カ月の滞在許可しか得ることができなくなります。

申請を忘れてしまったり、故意に申請を行わなかったり、あるいは単に正しく申請できなかった(または十分な申請証憑を提示できなかった)英国滞在EU市民も一定の割合存在する可能性を考えると、一部の企業は、想定外だったとしても結果的に不法就労者を雇用してしまう可能性があります。そのため、EU市民の英国滞在の申請に費用が掛からなかったとしても、申請を行わなければ雇用主と従業員双方の負担になると可能性があります。そして、忘れてはならないのは、英国内務省がこの問題に関して、例外を一切認めない相当厳格な基準を適用する可能性もあるということです。

第一に、コンプライアンスの観点から、2021年1月以降は不法に英国に居住しているEU市民を雇用していると認められた企業に対する寛容さが極めて低くなる可能性があります。英国の移民法に基づき、期限までに移民ステータスの登録を行っていないEU労働者は不法滞在とみなされることになるでしょう。

その結果、雇用主に対して、不法就労者1人当たり2万ポンドの罰金が科され、意図的に不法就労者を雇い入れている場合は5年以下の懲役が言い渡され、また、常習的な違反と判断されると事業所が閉鎖される恐れがあります。中小企業だけでなく大手企業にとってもレピュテーションリスクとして懸念要素になり、さらに大きなコストがかかることになるでしょう。

不幸な労働者

第二に、不法滞在のEU市民は英国国民保健サービス(HNS)の利用、運転免許証の取得、銀行口座の保有、住宅の借入、公的給付金の申請、もしくは教育制度の利用ができなくなります。スタッフの福利厚生に関する雇用主の道義的責任はともかく、これらは生産性にもマイナスの影響を与えるとみられる問題です。

人事面での観点から考えて、これは英国において事業を行う企業数が大きく変化する可能性をを示唆しています。定住または仮定住のステータスでEUの労働者全員(および家族全員)を登録させることができる組織には大きな成果になるとみられますが、それ以外の多くの組織にとっては非現実的でもあります。移動の自由を活用し、労働力を強化したり専門的スキルを提供したりするためにEUの労働力に従来依存してきた企業にとっては、以下の対応が必要になると思われます。

  1. このかつてない新たな状況を正確に理解する
  2. 不法就労者を判別する強固なシステムを整備する
  3. 対応が必要な事象に関する新たな期限を正確に認識する

当然ながら一部の企業は、今後他にも困難な事態が生じる可能性があるとしても、英国外からの労働力を調達するという選択をするかもしれません。しかし人手不足の状況にある現在の英国では、特に病院、建設、食品製造、小売などのEUに依存してきたセクターにおいて、かなり厳しい状況になることが予想されます。また潜在的には、深刻な人種差別等の問題が発生する可能性もあります。もちろん不便だからとの理由だけでEU市民の採用を行わないことは不可能でしょう。同様に、オンボーディング(組織に新しく加わった人員に対して提供する研修)で応募してきた候補者がEU出身であることが分かり、国籍をもとに採用を取りやめた場合、法律に違反していることになります。

雇用主として対応が求められる10のポイントは以下のとおりです。

  1. 英国の新たな移民政策がEU労働者、非EU労働者の双方に等しく適用される可能性は高いと考えられるものの、貿易協定の内容次第では一部の労働者が優遇される可能性があるということを理解する
  2. 現行および改正後の移民に関する規則、就労権の申請に関する必要項目、またこれらの手続きをオンラインで行う方法について理解する
  3. 現在のオンボーディングプロセスおよびリソースを見直す
  4. 海外からの従業員向けの移民手続きサポートに関するベストプラクティスを踏まえた方針の策定・文書化を検討する
  5. 社内の移民に関する部署の現状の専門能力と、それを踏まえた専門家による追加的なアドバイスの必要性を評価する
  6. 事前にEU市民従業員を特定し、既存の人事データソースを整理する
  7. EU市民従業員に対するアドバイスやサポートを提供するスケジュールを立てる
  8. 2021年1月以降外国人労働者を雇用する必要がある場合、雇用主のスポンサーとしての登録方法およびその責務を理解する
  9. 戦略的な観点で人事計画を協議する。今後どこで人材を確保するのか、またどのような観点で将来の従業員にとって魅力的な状況を作り出すか。自社のニーズを具現化する中で自動化がどのような役割を果たすのか。
  10. 社内にいるEU市民従業員の声を聞くとともに、コミュニケーションを図る。あなたの組織にとってEU市民が最も重要な資産であるのならば、今こそそれを証明する時です!

本稿は2019年2月22日に掲載された英語版(原文)のコンテンツを和訳したものです。日本語版と英語版との内容に相違がある場合は英語版が優先されます。

How to ensure your EU staff can stay after Brexit

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