本簡易診断は、安全保障を巡る国際的な緊張関係が高まる中、米国輸出法規制の改変や、追加関税政策の施行などの動きをふまえ、「安全保障輸出管理」「輸出入における税務対応」といった観点から、自社における輸出管理対応状況に重要な漏れがないことを点検するものです。

1.安全保障輸出管理リスク

Q1.貴社において、規制対象国・地域向けの取引が、どの程度発生していますか。

  • OFAC規制・EARで制裁対象あるいは禁輸・規制対象となっている国・地域(例えば、イラン・北朝鮮・スーダン・シリア・キューバなど)向けの取引が多い場合は、特に注意が必要です。加えて、 それらの国・地域と地政学的に近い国(シンガポール、マレーシア、UAE等)を経由する迂回取引についても、リスク認識を持つことが重要です。
  • なお、OFAC規制・EARの規制内容は頻繁に更新・変更されるため、常に最新の規制内容に基づき、輸出管理を行う必要があります。

Q2.規制対象となる貨物・技術等の取扱いが、どの程度発生していますか。

  • 米国の製品・部品のうち、軍事用としても民生用としても利用可能(デュアルユース)な商用品等、あるいは技術・ソフトウェア等が、EARの規制対象です。
  • なお、EARの規制内容は頻繁に更新・変更されるため、常に最新の規制内容に基づき、輸出管理を行う必要があります。

Q3.業界内で過去に違反事例が、どの程度発生していますか。

  • 米国内外を問わず違反が発生しており、いずれも厳しい罰則が科せられています。OFAC規制においては金融機関、EARにおいては輸出者となるメーカー(電子機器・航空機等)の違反事例が特に多く発生していますが、例えば輸出者でない運送事業者についても、不正輸出に加担したとして処罰された事例があるため、注意が必要です。

2.安全保障輸出管理体制

Q4.貴社の経営陣は安全保障貿易コンプライアンスに十分なコミットメントができていますか。

  • 経営陣は、安全保障貿易リスクを効果的に管理するために、(1)コンプライアンス担当部門に十分な権限と自立性を与えるとともに、(2)組織の事業やリスク等をふまえ、十分なリソース(人・ナレッジ・IT等)を確保する必要があります。
  • また、経営陣はコンプライアンス担当等との定期的なミーティングを含めた直接の報告ラインを設けるなど、トップコミットメントを通じて、コンプライアンスプログラムの現場への浸透を図ることが肝要です。

Q5.専門知識のあるスタッフが、独立した立場から十分な監査・モニタリングを実施できていますか。

  • OFAC規制・EAR遵守のため、内部または外部監査を通じ、コンプライアンスプログラムの有効性を定期的に確認する必要があります。なお、監査機能には、経営陣直属であることや、独立性があること、スタッフが十分なスキルを有していることなどが求められます。
  • 監査・モニタリングで発見された不備等については、適切かつ迅速な対応および是正が必要です(「違反時の対応および是正」参照)。

Q6.事業やリスクなどを踏まえ、従業員および関係者(顧客、ビジネスパートナー等)への十分な教育機会の提供や、必要な情報の共有をしていますか。

  • 各企業は、OFAC規制・EAR遵守のため、従業員および適切な利害関係者(顧客、取引先、仕入先、ビジネスパートナーなど)に対し、十分な教育機会の提供や、必要な情報の共有をする必要があります。特に、リスクの高い事業を行う部署・子会社や監査指摘事項が見られる部署等に対して、より優先的に行われなければいけません。
  • また、研修プログラムには、全ての関係者が容易にアクセス可能な資料・リソースが含まれている必要があります。

Q7.最新の規制内容に基づき、該非判定手順(許認可の取得手順を含む)が確立されていますか。

  • 制裁対象の国・地域や特定の個人・団体等に関与する取引でないか、輸出・再輸出する貨物・技術等が規制対象品目でないか等を確認するため、最新の規制内容に基づき、各取引の該非判定を行う必要があります。なお、米国の公表する制裁リスト(SDNリスト)には、船舶・航空機材の名称も掲載されており、また、リスト掲載者が直接的または間接的に50%以上の所有権を有する法人も制裁対象に含まれるため、注意が必要です。
  • 規制対象品目の輸出・再輸出時には原則として許可申請が必要ですので、取引の際には、許可申請の取得状況について確認する必要があります。

Q8.最新の規制内容に基づき、対象となる文書が適切に保管されていますか。

  • OFAC規制・EARが求める要件を踏まえて、記録管理に関する手順を定めた上で、同手順に沿って対象となる文書を適切に保管する必要があります。
  • なお、対象文書は、定められた時点から5年間保存する必要があります。
    注:OFAC規制での時効年限は、過去6年間です。

Q9.違反や潜在的な問題点が迅速に発見される体制が整備されていますか。また、発見された違反等に対し、適切かつ迅速な是正処置が行われていますか。

  • 違反の懸念に対して、適切かつ迅速に、是正措置等をとることができるように、社内外の報告制度を整備する必要があります。また、経営陣により、従業員等に対して違反懸念の報告を奨励することが求められます。
  • さらに、発見された問題や統制上の脆弱性に対しては、可及的速やかに改善し、違反の再発防止策を講じなければなりません(再発防止策の運用開始に時間がかかる場合には、それまでの間、暫定対応を行う必要があります)。

3.輸出入における関税対応

Q10.米中追加関税措置の対象となる貨物がある場合、その削減対応策または免除に向けての取組みができていますか。

  • 例えば、米国に輸入する貨物が追加関税措置の対象となる場合であっても、適用除外リストに該当するものは、手続きにより将来の追加関税支払いの免除や過去に支払った追加関税の還付を受けることができます。また、米国に輸入する貨物については、ファーストセールの適用により、米国輸入時の関税評価額を引き下げることで、結果的に追加関税支払いを削減する、といった対応策があります。今後、米中以外にもこのような追加関税が発生するケースも考えられるため、各国の動静に留意し、適切な対応を検討することが重要です。

Q11.アンチダンピング関税への適切な対応はできていますか。

  • 輸出先の国においてアンチダンピング関税が課されているかどうかを確認する必要があります。課されている場合には当該製品が課税要件に該当しない条件を確認し、輸出先の当局に対してその旨を説明することで、アンチダンピング関税の課税を回避することも可能です。

お問合せ