内部通報制度とは

内部通報制度とは、企業の内部にコンプライアンス上の問題を知る従業員から、経営上のリスクに係る情報を可及的早期に入手し、情報提供者の保護を徹底しつつ、未然・早期に問題把握と是正を図る仕組みのことです。

企業によっては、ホットライン・ヘルプライン・社内通報窓口などと呼称され、制度化されています。
Fraud Survey 2022および、その他のアンケート調査・サーベイでも、内部通報によって、企業不正が発覚する経路は第1位となっています。

企業が抱える内部通報への初期的な悩み

企業の内部通報窓口には、人間関係の悩みや相談等が非常に多い一方で、コンプライアンス上の問題(例えば、ハラスメント行為や不正行為)を見聞きした従業員の多くは、通報をすると自らが不利益を被るのではないか等の不安を抱え、リソースを投入した割には、なかなか早期に問題を把握できていないという実情があります。

日本における「通報者保護」の動き(改正公益通報者保護法)

「通報者の保護が十分ではない」「内部通報が十分に機能していない」等の実態を受け、2022年6月1日に公益通報者保護法の一部が改正されました。保護される通報の範囲が拡大し、規制対象となる企業においては、「公益通報対応体制の整備」および「公益通報対応業務従事者の指定」が義務付されました。

内部通報制度に対する社会的な要求水準の高まり

公益通報者保護法の改正を始めとした日本国内の要求水準の高まりに限らず、全世界的に内部通報制度に対する要求水準が高まっています。
内部通報制度の国際的な規格化(ISO37002)や、内部通報者保護等を定めた国内法の整備をEU各国に求めたEU指令の成立に加え、各国当局のコンプライアンス体制に係るガイダンス文書では「内部通報制度は有効なコンプライアンス体制に必須の構成要素の1つ」とされています。

内部通報制度の「高度化」への課題

多くの日本企業では海外事業の重要性の高まりにより、グローバル通報制度の整備・導入の必要性に直面しています。企業はグループベースで内部通報制度の実効性を高め、不正検知力を向上させることが喫緊の課題となっているといえます。

内部通報制度の実効性を高めるための留意点

国内子会社への内部通報制度に係る法令等の要求事項の具備とあわせて、不正検知力を高める内部通報制度の実効性の向上のために、下記事項が非常に重要なポイントとなります。

  1. 適切な内部通報に係る規程をグループベースで整備すること。
  2. コーポレートガバナンスコード等でも要求されているように、内部通報制度の独立性確保のための制度設計を行うこと。
  3. 内部通報の運営要綱等を整備してグループベースで共有するとともに、制度の周知徹底と信頼確保のための施策、通報のインセンティブ向上策、通報対応ノウハウ向上のための研修などを実行すること。
  4. 従業員アンケートやフォローアップ制度をはじめとした内部通報制度の評価・モニタリング手法を確立すること。
  5. 内部通報の情報判断の際の重要性判断基準を明確化して、グループベースで共有すること。

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内部通報制度の高度化に関するサービス内容

内部通報制度の現状診断と各種提案

内部通報制度の現状を診断することで、内部通報制度の実効性を高めるための改善点を特定し、不正検知力を高めるための具体的な改善施策を提案します。現状診断サービスでは、公益通報者保護法の指針や認証基準をベンチマークとした診断を行うことも可能です。

内部通報制度の高度化のための制度設計と導入の支援

内部通報に係る規程の整備・見直し等を支援する他、内部通報の運営要綱等の整備や運営ノウハウの提供等による支援を行います。KPMGの経験豊富な不正対応の専門家による支援により、規程・運営要綱等の整備・見直しを短期間で効率的に行うことが期待できます。特に、内部通報制度の独立性の確保や重要性判断基準の具備などの具体策に係る運営ノウハウを提供することも可能です。

高度化した内部通報制度の定着化と展開の支援

内部通報の受付・対応ノウハウをグループベースで共有するための実践的なケーススタディを含む内部通報対応に係る研修講師の派遣や教材の作成・提供など、内部通報に係る研修を支援します。また、内部通報制度の様々な周知徹底のための施策や、躊躇なく通報できるための内部通報の信頼度の確保策などについて、具体例を交えた運営ノウハウを提供することも可能です。

内部通報制度のモニタリングと継続的改善の支援

内部通報制度のモニタリングや継続的改善のために、コンプライアンスアンケート (従業員サーベイ)を活用した内部通報制度に係るモニタリング手法の実行や通報の事後的なフォローアップ確認などの具体的な取組みを支援します。

グループ内部通報制度の高度化支援

国内外の子会社における内部通報制度の整備・運用のための支援をはじめ、グローバル通報制度を円滑に整備し、定着化することを支援します。国内子会社については、公益通報者保護法の要求事項の具備のための具体策などを支援します。海外子会社については、グループ行動規範や労使合意など各社において円滑に内部通報制度を整備・運用するために必要な具体策を支援します。また、各国のプライバシー規制の遵守など、グローバル通報制度を円滑かつ確実に整備・運用するために必要な施策について、各企業の実情に応じた助言や運営ノウハウを提供した支援が可能です。