不正リスクに対応したデジタル監査(現在編)

不正リスクに対応したデジタル監査(現在編)について解説します。

不正リスクに対応したデジタル監査(現在編)について解説します。

KPMG FASが行った日本企業の不正に関する実態調査によると、直近3年間での上場企業での不正行為は4社に1社の割合となっており、前回調査と比較してより減少傾向にある一方、新型コロナウイルス感染症発生後、不正リスクが増大したと感じている企業も同じく4社に1社の割合で存在します。対面接触の減少に伴う内部監査の牽制機能の低下などによる不正行為の可能性についての懸念が高まっています。

あずさ監査法人では、こうした不正の兆候を検知するために、デジタル監査のソリューションを開発・適用し、監査業務の強化に取り組んでいます。

具体的には、「財務諸表レベル」「勘定残高・トランザクションレベル」において、不正リスク検知のためのソリューションを展開しています。

財務諸表レベルの不正リスク検知ソリューション

一例として、「不正リスク検知モデル(Fraud Risk Scoring_ai)」「子会社リスクスコアリング(Group Company Analytics)」があります。


不正リスク検知モデル(Fraud Risk Scoring_ai)
過去の不正事例および不正による訂正報告案件をもとに、企業の会計不正が発生するリスクを数値化するツールを開発しました。大局的に不正リスクを捕捉するという観点で、リスク評価時及び意見表明前に、監査現場で活用されています。

また、国立大学法人一橋大学との共同研究により、AI・機械学習を用いて、勘定科目レベルで不正会計を検知するモデルを開発し、2020年2月に特許を取得しました。この技術を活用することで、不正リスクの早期発見・対話につなげることが期待できます。現在も継続的に機能拡大をしています。

デジタル監査の現在地-1

子会社リスクスコアリング(Group Company Analytics)(紹介動画)
すべてのグループ会社の財務データを網羅的に分析し、個社ごとのハイリスク領域を洗い出す子会社リスクスコアリング分析(Group Company Analytics)を行っています。この分析では、統計的手法等を用いて子会社の財務データを全量分析し、リスクを数値化(スコアリング)することで、客観的に各社の異常な財務数値の変動をあぶり出します。多様なリスク指標から、各企業のリスク・特性に応じた指標を用いています。リスク指標は、約50指標と広範囲に設定され、それ以外にもカスタマイズも可能であるため、さまざまな業種に対応することが可能です。従来の連結グループ監査では対象外となるような小規模な子会社等も含め、網羅的にリスクを評価することができるとともに、モニタリングによるグループ会社に対する牽制にもつながり、監査関与先のガバナンス向上に貢献します。

不正リスクに対応したデジタル監査(現在編)-2

勘定残高・トランザクションの不正リスク検知ソリューション

取引や仕訳、業務プロセスなどのデータを可視化、あるいは統計的手法によって分析することで、異常な取引や、不審な業務プロセスを検知するといった勘定残高・トランザクションレベルでのソリューションも現場で展開しています。

ここでは、現場で活用しているソリューションの一部を紹介します。


異常仕訳検知(リフト値分析)(Journal Entry Analytics_Lift Value )(紹介動画)
リフト値等の分析指標を活用したアルゴリズムに基づき、経常的に発生するパターン(勘定科目の組合せ、入力者・承認者の組合せ等)から乖離する異常な仕訳を特定します。

これにより、従来の監査人の知見に基づいたリスクシナリオに加えて、客観的かつ迅速にリスクがある仕訳を特定することで、監査の高度化を進めています。

不正リスクに対応したデジタル監査(現在編)-3

進捗度分析(PCM Analytics)(紹介動画)
進捗度に基づき収益を一定の期間にわたり認識する案件の明細データを活用し、統計的手法を用いて原価の異常な推移や原価の付替リスクを視覚化することで、リスクの高い案件を抽出します。

不正リスクに対応したデジタル監査(現在編)-4

プロセスマイニング(Process Mining)
企業の基幹システム内のデータを抽出して作成したイベントログデータをもとに業務フローを可視化することで、想定されないプロセスや取引を網羅的・客観的に把握し、ルールから逸脱したリスクの高い業務フロー・処理等を検知できます。監査関与先の業務プロセスを見直し、経営・管理を高度にサポートすることができます。

不正リスクに対応したデジタル監査(現在編)-5

証憑改ざん検知モデル(KaizanCheckBot_ai)
PDFの画像処理や、プロパティ情報を分析し、改ざんの兆候を検知するツールです。電子証票の改ざんリスクに対応するため、あずさ監査法人では、監査関与先から入手した資料について、当該ツールを開発し、電子証票の改ざんリスクに対応しています。

不正リスクに対応したデジタル監査(現在編)-6

上記以外にも監査関与先のリスクに応じた分析や取組みは多岐にわたっています。

AIや機械学習を使って経験則の裏にあるロジックを捕捉し、不正発生のメカニズムを正確に理解できれば、より効果的な不正の未然防止策を打ち出すことも可能となります。

あずさ監査法人では、デジタルテクノロジーを最大限に活用して監査DXを推進し、不正リスクのある状況を迅速に検知し適時のアクションと課題解決につなげます。

執筆者

あずさ監査法人
Digital Innovation本部

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