I.変化の兆し

今後数年間、ハードウェアメーカーの設計・製造・販売方法に影響を与えると考えられる、5つの要素を特定します。

1.変化する顧客の期待

顧客は、直感的な操作性、柔軟な価格設定、迅速な納品、良質なサービスなどをハードウェアメーカーに求めています。これらはメーカーのサプライチェーンに新たな課題をもたらしています。さらに、高い柔軟性とIT投資・コストの削減が期待できるアズ・ア・サービス・モデルへの関心も高まっています。

2.ハードウェア利用の進化

ハードウェアの使用場所と用途は拡大し続けており、エッジコンピューティングや在宅勤務の増加により、人々はより密接にハードウェアと接するようになりました。さらに、5Gの普及やIoTの展開により、ハードウェアがあらゆる場所に浸透しています。

3.競争の性質の変化

売り切り型の製品では顧客の囲い込みが難しいため、アズ・ア・サービス型のメーカーは直販を通じて顧客との強い関係を求めるようになっています。これにより、メーカーは迅速にパフォーマンスデータを入手し、メンテナンスの必要性を予測したり、新製品の設計に活かしたりすることが可能になります。

4.経済的・地政学的な力

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)や貿易面での緊張、軍事侵攻による世界経済の混乱とサプライチェーンの問題があるものの、CEOの72%が積極的なデジタル投資を進めています。リモートワークの普及とサイバーセキュリティ脅威の認識の高まりが後押ししています。

5.規制による課題

ハードウェア企業が膨大な量の顧客情報を集めるなか、AIの使用やデータプライバシー、セキュリティに関する規制が強化されることが予測されます。多くの国・地域で個人情報の取り扱い制限が厳しくなり、AIの利用も規制の対象になりつつあります。また、労働条件や安全基準、環境汚染などの社会的問題への対応も求められています。

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II.戦略上必要不可欠な5つの要点

ハードウェア企業は顧客ニーズや規制に対応し、顧客中心の組織へと生まれ変わる必要があります。これにより、卓越したカスタマーエクスペリエンスを提供し、新製品やサービスの迅速な試験と導入、アジャイルなサプライチェーンの確立が可能となります。

1.場所を問わないコンピュータ処理

IoT、5G、AIの活用によりエッジコンピューティングを推し進める
IoT、5G、AIの融合により、エッジコンピューティングへの需要が急増し、多様な企業の参入が予測されます。また、AI利用の主流化は、「常時オン」のオペレーティングモデルが標準になると予測されます。

2.アズ・ア・サービスへの移行の加速

顧客の関心は、ハードウェアをサービスとして提供する方向にシフトしています。これは、資本を他の用途に転用できる機会を生み出し、アップグレードやメーカー変更を容易にします。この新トレンドに対応して、多数のハードウェア企業が市場に参入しています。

ハードウェアにおける顧客戦略の重要性
ハードウェアメーカーは、アズ・ア・サービス市場での競争に対応するため、ビジネスモデルを売り切り製品型からサブスクリプション型に転換し、新たな収益モデルを採用するとともに、新ビジネスモデルに必要な能力を開発する必要があります。

3.ユーザーエクスペリエンスの設計

ハードウェア企業は、「より速く、より良く、より安く」を追求するだけでなく、顧客の利便性を重視する必要があります。また、物理的な製品の販売だけではなく、独自のサービスやエクスペリエンスを通じて価値を提供することも求められています。

4.インテリジェント・サプライチェーン

ハードウェアメーカーは、パンデミックや気候変動などのリスクに対し、サプライチェーンを多様化し、レジリエンスを高めようとしています。ハードウェア企業は顧客中心で需要主導型のサプライチェーンを構築しようとしています。

オペレーションやサプライチェーンにおける3D印刷の役割の拡大
3D印刷はバリューチェーン全体を変革し始めており、プリンターメーカーは、設計から製造、流通に至るサプライチェーン全体を管理しようとしています。

サプライチェーンの分散化
分散化された「マイクロ」サプライチェーンは、アジャイルでローカル化されたカスタマーエクスペリエンスを提供できます。これらのサプライチェーンは柔軟な契約に基づく限定的でアジャイルな「ミニオペレーティングモデル」であり、製品の生産や量、配送ルートを素早く変更でき、新製品の導入も早まります。

5.高まる規制・倫理基準への対応

企業は、気候変動対策、レジリエントなサプライチェーン、ダイバーシティ&インクルージョン、地域社会支援といったESG課題に対応せざるを得ない状況にあります。投資家は非財務的影響の報告を求め、ESG成果に基づく投資決定が増えています。また、顧客は価値観を共有するハードウェアプロバイダーとのビジネスを求めています。

AI倫理規制
新興テクノロジーの利用拡大とAI規制への対応を見据え、ハードウェアメーカーにはAI関連のソフトウェア設計手順の整備が求められています。

III.ハードウェアとKPMG Connected Enterprise

Connected Enterpriseの枠組みを利用することで、企業の各部門が連携し、顧客や従業員、ビジネスパートナーとの緊密な関係を築くことができます。これにより、市場の変化に素早く反応し、新たな機会をスピーディに捉え、顧客のニーズへの効果的な対応が可能になります。

  • Connected Enterpriseのケイパビリティが戦略の成功をもたらす
  • 主要なデジタル・ケイパビリティへの投資がパフォーマンスの向上を促進する

IV.コネクティビティの実現を支援

KPMG Connected Enterpriseは、デジタル・トランスフォーメーションを実現するための顧客中心のアプローチです。ハードウェア企業がConnected Enterpriseへの道のりを加速するために検討すべきポイントは以下のとおりです。

  1. 顧客の要望に寄り添う
  2. アジャイル(機動的)に行動する
  3. レジリエンスを組み込む
  4. 人間らしさを保つ
  5. 新たなテクノロジーを活用する

英語コンテンツ(原文)

Future of hardware

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