本連載は、日経産業新聞(2022年9月~10月)に連載された記事の転載となります。以下の文章は原則連載時のままとし、場合によって若干の補足を加えて掲載しています。

地方創生事業における資金面の課題

デジタルを最大限に活用し市民サービスの効率化と高度化を目指すスマートシティは、人口減少など社会課題が深刻化する日本で今後より重要度を増していくものと考えられます。新しい市民サービスを真に生活の質向上に結び付けていくためには、実証事業や短期的な取組みにとどまらず長期的な実装を目指していくことが必須となります。それにはサービスを提供する事業者が持続的にヒト・モノ・カネ・情報のリソースを確保する必要があります。特に事業を運営するコストをまかなう資金をどう集めるのか、地方創生事業の課題として多くの関係者を悩ませています。

この課題に対し、社会的リターンと財務的リターンの両立を狙う「インパクト投資」が、金融の流れを増幅させる手段として注目を集めています。これまでのインパクトファンドは特定の分野やテーマにフォーカスしているケースが多く見られましたが、新たな傾向として、特定地域で分野横断的に投資する「地域特化型のインパクトファンド」の組成が進められています。

代表例は、一般財団法人社会変革推進財団(SIIF)による休眠預金活用事業です。休眠預金を民間の公益活動にあてる休眠預金活用法に基づき、資金分配団体であるSIIFは2021年から地域インパクトファンドの設立・運営支援を始めています。同財団では沖縄、奈良エリアなどでファンド設立への助成金やインパクト評価の支援を計画しています。地域でインパクト志向の強い企業の成長を促進するほか、ゼネラルパートナーを担うべンチャーキャピタルにリミテッドパートナーとして出資する地域金融機関が人材を出向させることで、長期的に地域人材のファンド運営ノウハウの蓄積やインパクト評価スキルの向上も目指していくといいます。SIIFで休眠預金事業を主導する小笠原由佳氏によると、地方創生の要諦は、エクイティ(資本)性の資金が地域の事業者に流れていることと、特定分野に限定せず地域が必要とする事業を発展させる土台があることが挙げられると言います。

「地域インパクトファンドを通じて、地域活性化に向けた出資に意欲的な企業・団体と、地域課題解決に取り組むスタートアップなど民間事業者をつなぐことで、地域が地域らしくあり続けるために必要な事業を持続的に発展させることを目指しています」(小笠原氏)。

地方創生は行政や単独の事業者のみでの実現は難しいと言えます。地域課題を分野横断で捉え、解決に向けて関係者が連携して街全体を巻き込んだ取組みが求められます。市民への還元が見込まれる事業に効率的に資金を回すエンジンとして地域インパクトファンドが秘める可能性は、非常に大きいのではないでしょうか。

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日経産業新聞 2022年9月20日掲載(一部加筆・修正しています)。この記事の掲載については、日経産業新聞社の許諾を得ています。無断での複写・転載は禁じます。

執筆者

KPMGコンサルティング
シニアコンサルタント 石山 秀明

スマートシティの社会実装に向けて

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