本連載は、日経産業新聞(2022年9月~10月)に連載された記事の転載となります。以下の文章は原則連載時のままとし、場合によって若干の補足を加えて掲載しています。

拡大するスマートシティへの取組み

スマートシティという言葉は、2000年代から使われ始めました。当初は省エネを目指した街づくりを意味することが多かったのですが、2010年代にはビッグデータの活用を経て、2020年代に入り人間中心、分野横断を目指す「スマートシティ3.0」と呼ばれる現在の第3次ブームとなります。
各省庁も租極的で、経済産業省、総務省、国土交通省、内閣府に加えて、デジタル庁や環境省も含む取組みへと拡大しています。内閣府科学技術・イノベーション推進事務局の日置潤一参事官と渡辺昌彦上席政策調査員によると、政府は今後、スマートシティ、都市OS(データ連携基盤)を100ヵ所構築していくと言います。

現在、国内のスマートシティの取組みは、約170の地域でおよそ280件の実証事業が進められています。さらに約300の地域で導入技術が継続運用されているほか、46地域では都市OSが実装され、今後、長崎や長野、大阪など都道府県主導の都市間連携も進むと期待されます。一方、都市OSの保守・維持管理費の問題からデータを蓄和できずにいる事例や、データ活用を事前に検討せずに都市OSを構築したため十分活用できていない事例も散見されます。
都市OSを構築する際は、構築前にサービスを設計し、浜松市のように都市OSの活用を前提としたオープンイノベーションを通じてサービスを継続して構築していくことが重要となります。

今後の論点としては、次の3つが挙げられます。
1つ目はスマートシティのコアとなるサービスを複数設計、実装できるかという点です。たとえば、病院を予約すると移動から受診、決済までワンストップで受けられるサービスや、自治体向けに災害時の避難所などでのオペレーションのDX(デジタルトランスフォーメーション)化などが期待されます。

2点目はビジネスモデルです。PPP(官民パートナーシップ)やPFI(民間資金を活用した社会資本整備)のような運営・維持管理も含めた枠組みでの公的資金の活用が期待されます。加えて、社会資本整備総合交付金など、PPPの枠組みでは活用できない補助金・交付金も多数存在するため、見直しも必要となります。

3点目はステークホルダー(利害関係者)のマインドセットの変革です。日本は、スマートシティ分野で中国や米国だけでなく、韓国、シンガポール、オーストラリアなどにも後れを取っていると言わざるを得ません。一部のサービスでも世界をリードできるよう、積極的な展開が期待されます。
本連載ではスマートシティの社会実装に向けた課題や取組みを20回にわたって解説していきます。

※本文中に記載されている会社名・製品名は各社の登録商標または商標です。

日経産業新聞 2022年9月9日掲載(一部加筆・修正しています)。この記事の掲載については、日経産業新聞社の許諾を得ています。無断での複写・転載は禁じます。

執筆者

KPMGコンサルティング
ディレクター 大島 良隆

スマートシティの社会実装に向けて

お問合せ