金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループ報告の公表について

金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループ(以下「DWG」という。)から2022年6月13日、これまでの検討結果をまとめた報告が公表されました。テーマの1つである「サステナビリティに関する企業の取組みの開示」のうち、第9回DWG会議(5月23日)で特に活発な議論があった事項について紹介します。

金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループから検討結果をまとめた報告が公表された。「サステナビリティに関する企業の取組みの開示」のうち、第9回DWG会議で特に活発な議論があ…

1.サステナビリティ全般に関する開示

DWGから公表された報告(以下「DWG報告」という。)では、有価証券報告書において、サステナビリティ情報の記載欄を新設し、「ガバナンス」、「戦略」、「リスク管理」、「指標と目標」の4つの枠での開示を基本とし、「戦略」、「指標と目標」については、各企業が重要性を踏まえて開示の要否を判断する案となっています。第9回DWG 会議では、特に「重要性」について活発な議論が行われましたが、この点、DWG報告では「企業自らが「重要性」をどのように評価しているのかが伝わる開示が必要」、「「戦略」と「指標と目標」を各企業が重要性を判断した上で記載しないこととした場合でも、投資家に有用な情報である当該判断やその根拠を含めた開示を積極的に行うことが強く期待される」とされています。

2.気候変動対応に関する開示

DWG報告は、「国際サステナビリティ基準審議会(以下「ISSB審議会」という。)の気候関連開示基準の策定へ積極的に参画し、日本の意見が取り込まれた国際基準の実現を目指すことが望ましいとしています。その後、ISSB審議会の気候関連開示基準を踏まえ、サステナビリティ基準委員会(SSBJ)において迅速に具体的開示内容の検討を期待するとしています。そのため、現時点においては、有価証券報告書における気候変動対応に関する開示も、上記1.と同様に4つの枠に基づく開示枠組みが示されています。このため、「指標と目標」に該当するGHG排出量についても、重要性の判断を前提とした開示項目とする案となっていますが、特にScope1及び2については国際的にも開示すべき指標として確立しつつある動向を踏まえ、「開示を強く求めるべき」、「重要性の判断によって開示しない場合は、国際的な信頼性の低下に繋がる」といった意見が第9回DWG会議にて示されました。こうした議論を踏まえ、DWG報告では「各企業の重要性の判断を前提としつつ、特にScope1及び2は積極的に開示することが期待される」とされています。

3.人的資本、多様性に関する開示の対応

人的資本や多様性については、以下が有価証券報告書での開示項目として示されています。

(i)中長期的な企業価値向上における人材戦略の重要性を踏まえた「人材育成方針」(多様性の確保を含む)や「社内環境整備方針」を開示項目とする。

(ii)それぞれの企業の事情に応じ、上記の「方針」と整合的で測定可能な指標(インプット、アウトカム等)の設定、その目標及び進捗状況について、「指標と目標」の枠の開示項目とする。

(iii)女性管理職比率、男性の育児休業取得率、男女間賃金格差について、中長期的な企業価値判断に必要な項目として開示項目とする。

上記(iii)の指標は、DWG報告において、「連結ベースでの開示に努めるべき」とされていますが、これは、「特に海外投資家目線では連結ベースでの開示は非常に重要」といった意見が第9回DWG会議にて多く示されたことを反映したものと考えられます。

執筆者

KPMGサステナブルバリューサービス・ジャパン
有限責任 あずさ監査法人
原 征寛

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