開発途上国によるSDGs達成のためのテクノロジー・フロンティア

デジタルを中心とした高度なテクノロジーがSDGsの迅速かつ効果的な実現にいかに貢献し得るかという点について、先進国と開発途上国の取組みや課題を説明します。

デジタルを中心とした高度なテクノロジーがSDGsの迅速かつ効果的な実現にいかに貢献し得るかという点について、先進国と開発途上国の取組みや課題を説明します。

全世界で猛威を振るった新型コロナウイルスは、いまだに各地に大きな不安を与え続けていますが、一方で、コロナ禍においてオンライン教育やリモートワーク、遠隔医療の普及が加速化したことで、改めて科学技術の重要性が浮き彫りとなりました。

そのようななか、デジタルを中心とした高度なテクノロジーがSDGsの迅速かつ効果的な実現にいかに貢献し得るかという点についても、大きな注目が集まっています。すでに先進国を中心に、バイオテクノロジーやAI、IoT、ロボティクスといったインダストリー4.0技術を活用して、さまざまな社会課題の解決に向けた取組みが進められています。

SDGsはとりわけ、貧困削減や所得格差の是正、教育の向上、より持続可能な環境の創出、ジェンダー平等に力点が置かれています。その意味で、SDGs達成の観点からも、科学技術の進化がもたらす便益を開発途上国にも適切に配分していくことが求められますが、いかにそれらの国々のSDGsの達成にテクノロジーを最も効果的に活用し得るかについては、これまであまり大きな注意は払われてきませんでした。

この度、KPMGの国際開発支援サービス(International Development Assistance Services:IDAS)は、開発途上国によるSDGs達成に対するデジタル技術の役割とデジタル化がもたらす課題の検証を目的としたレポート「開発途上国に向けた新たなテクノロジー・フロンティア(The New Technology Frontier for Developing Economies)」を発行しました。

同レポートでは、開発途上国におけるデジタル技術の活用が、以下のようなかたちでSDGsの達成に寄与することが可能としています。

  1. 人的資本の向上(医療、教育の高度化を通じた国民の健康向上、デジタル人材の育成による所得向上や雇用確保など)
  2. 産業のスマート化(製品のリアルタイムでの需給マッチングによるムダの削減、モバイル活用による金融アクセスの向上など)
  3. 脱炭素エネルギーシステムの構築(再生可能エネルギー、EV等を活用した地産地消型エネルギーシステム、遠隔地でのモバイル決済システムの導入など)
  4. 農業のデジタル化(デジタルプラットフォームの導入による農産物取引の効率化、農業廃棄物の削減、データ活用による農業技術の継承など)
  5. スマートシティの構築(リモートセンシング、IoTによる都市課題の的確な把握、ビッグデータ活用による公共交通量の拡大に伴うCO2削減など)
  6. デジタルガバメントの実現(安全なデジタルIDシステムによる国民の行政サービスへのアクセス向上など)

開発途上国でのデジタル技術の活用には、データの保管、処理、接続性、分析能力などさまざまな面で課題が存在し、その取組みは多くの国で初期の段階にあります。しかしながら一方で、デジタル技術を導入することにより、固定電話や支店方式による銀行システムといった先進国のレガシーシステムを構築することなく同等のインフラを整備できるという利点もあります。これらの国々の成長の原動力となってきた人口ボーナスは、デジタル技能の向上を通じて国民の国境をまたいだ高収入な仕事への就業機会を拡大することにより、より大きなアドバンテージとなるでしょう。

「開発途上国に向けた新たなテクノロジー・フロンティア」のフルレポート(※英文)は、Thought Leadership: The new technology frontier for developing economiesよりご覧いただけます。

執筆者

KPMGジャパン ガバメント・パブリックセクター
国際開発支援サービス(IDAS)
アジア太平洋地域統括
マネージング・ディレクター 柏木 健志

柏木 健志

国際開発支援サービス(IDAS)アジア太平洋地域統括/マネージング・ディレクター

あずさ監査法人

メールアドレス

お問合せ

KPMGジャパン ガバメント・パブリックセクター連載コラム