レベル別開示など初めて対応する事項を整理 時価算定会計基準の会計処理・開示上の留意点

旬刊経理情報(中央経済社発行)2022年3月20日特別増大号の特集「3月決算総特集」に「レベル別開示など初めて対応する事項を整理 時価算定会計基準の会計処理・開示上の留意点」に関するあずさ監査法人の解説記事が掲載されました。

旬刊経理情報(中央経済社発行)2022年3月20日特別増大号の特集「3月決算総特集」に「レベル別開示など初めて対応する事項を整理 時価算定会計基準の会計処理・開示上の留意点」...

この記事は、「旬刊経理情報2022年3月20日特別増大号」に掲載したものです。発行元である中央経済社の許可を得て、あずさ監査法人がウェブサイトに掲載しているものですので、他への転載・転用はご遠慮ください。

※WEB上の機能制限によりレイアウトや箇条書きの表示など原稿とは異なる場合があります。ご了承ください。

ポイント

  • 時価を把握することが極めて困難であるとして従前時価を開示していなかった金融商品についても、原則新たに時価を算定して開示することが必要となると考えられる。
  • 新たな開示(時価のレベルごとの合計額、評価技法およびインプットの説明等)が求められる。ただし、現金および短期間で決済されるため、時価が帳簿価額に近似するものについては、時価の注記自体を省略できる。
  • 本3月期末については投資信託の時価は、従前の取扱いを踏襲することができ、レベル別開示も求められない。また、貸借対照表に持分相当額を純額で計上する組合等への出資について、時価の注記をしないことができる。

はじめに

企業会計基準10号「金融商品に関する会計基準」(以下、「金融商品会計基準」という)における金融商品と、企業会計基準9号「棚卸資産の評価に関する会計基準」におけるトレーディング目的保有の棚卸資産の時価に適用する基準として、2019年7月に以下が公表されている。

  • 企業会計基準30号「時価の算定に関する会計基準」(以下、「時価算定基準」という)
  • 企業会計基準適用指針31号「時価の算定に関する会計基準の適用指針」(以下、「2019年時価算定適用指針」という)


また、あわせて、企業会計基準適用指針19号「金融商品の時価等の開示に関する適用指針」(以下、「時価開示適用指針」という)が改正されたほか、関連する企業会計基準および適用指針、日本公認会計士協会の実務指針等の改正も行われた(一連の会計基準等の新設および改正をまとめて、以下、「時価算定基準等」という)。

これらは、2021年4月1日以後開始する連結会計年度および事業年度の期首から強制適用となっており、3月決算企業においては、この3月末に強制適用後初の期末決算を迎えることになる。

なお、投資信託の時価の算定および貸借対照表に持分相当額を純額で計上する組合等への出資の時価の注記に関しては、2021年6月に、改正企業会計基準適用指針31号「時価の算定に関する会計基準の適用指針」(以下、「改正適用指針」という)が公表されており、この3月期の早期適用も可能である。

3月決算企業においては、会計処理についてはすでに時価算定会計基準を反映済みであるものの、開示については、本3月期末決算において、初めて対応する場合が多いと考えられる。

したがって、本章では、時価算定会計基準等による会計処理の変更内容に簡単に触れたうえで、期末決算において新たに求められる開示(レベル別開示、評価技法およびインプットの説明等)の留意点、ならびに投資信託等に関する改正適用指針での取扱いについて説明する。

なお、文中意見に関する部分は筆者の私見であることをあらかじめ申し添える。

「時価把握困難」の概念がなくなることの影響

時価算定基準には時価のレベルに関する概念が新たに取り入れられたことで、たとえ観察可能なインプットを入手できない場合であっても、入手できる最良の情報に基づき時価を算定することとされた。よって、「時価を把握することが極めて困難」という概念は想定されなくなり、これまで「時価を把握することが極めて困難」であるとして、時価の算定が求められなかった金融商品についても、時価の算定が求められるようになった。これは時価をもって貸借対照表価額とする金融商品だけでなく、時価の開示が求められる金融商品についても同じである。

ただし、「市場価格のない株式等」については、例外的な取扱いがなされ、取得原価をもって貸借対照表価額とする従来の取扱いが継続され、時価注記の対象からも除外される。非上場会社の新株予約権や転換社債型新株予約権付社債は、「市場価格のない株式等」を原資産とする金融商品であるが、当該商品自体は、「市場価格のない株式等」には含まれないことには留意したい。

時価を把握することが極めて困難であるとして従来時価を開示していない事例としては、前記に挙げた非上場会社の新株予約権や転換社債型新株予約権付社債のほか、敷金保証金、長期預り金、長期未払金などが見受けられた。時価評価の対象となる金融商品についてはすでに対応済と思われるが、時価評価されていない金融商品についても開示対応が必要となるため、本決算を前に確認しておくことが必要であろう。

たとえば、賃借物件からの退去時期の見積りが困難であるとして、従来、敷金について時価を開示せず、資産除去債務の計上も行ってこなかった会社であっても、今後は最善の見積りに基づき敷金の時価を算定・開示することが必要になるので留意されたい。

その他有価証券の決算時の時価

その他有価証券については、期末前1ヵ月の市場価格の平均に基づいて算定された価額を決算時の時価とすることはもはや認められない。ただし、減損判定において時価が著しく下落したか否かを判断する際には、毎期の継続適用を条件として、取得原価との比較に期末前1ヵ月の市場価格の平均に基づいて算定された価額を用いることは認められている。その場合でも、減損処理される場合には期末日の時価を用いる点には注意が必要である。

新たに求められる開示の概要

時価算定基準の導入に合わせて時価開示適用指針が改正され、「金融商品の時価のレベルごとの内訳等に関する事項」としてIFRS13号「公正価値測定」で要求される開示規定の大部分が新たに導入された。追加された「金融商品の時価のレベルごとの内訳等に関する事項」の概要を図表1に記載している。○が開示の要求される項目を表している。時価をもって貸借対照表価額とするか、時価を注記でのみ開示するか、対象となる金融商品の時価のレベルが何かによって、求められる注記が異なる。
 

図表1 金融商品の時価のレベルごとの内訳等に関する事項

注記項目 貸借対照表価額が時価(※) 注記のみ時価(※)
L1 L2 L3 L1 L2 L3
時価のレベルごとの合計額
時価の算定に用いた評価技法およびインプットの説明    
時価の算定に用いた評価技法またはその適用を変更した場合その旨およびその理由    
時価の算定に用いた重要な観察できないインプットに関する定量的情報          
金融資産および金融負債の期首残高から期末残高への調整表          
企業の評価プロセスの説明          
重要な観察できないインプットを変化させた場合の時価に対する影響に関する説明          

(※)L1=レベル1、L2=レベル2、L3=レベル3

なお、この改正において、現金および短期間で決済されるため時価が帳簿価額に近似するものについては、時価の注記自体を省略することができることとなった。したがって、短期間で決済されるような受取手形および売掛金や支払手形および買掛金等については、時価の注記を省略できるようになる場合が多いと考えられる。

適用初年度である本決算期末においては、前連結会計年度および前事業年度に関する注記は要しない。また、連結財務諸表に注記している場合には、個別財務諸表での記載は不要である。

以下、新たに開示が求められることになった「金融商品の時価のレベルごとの内訳等に関する事項」について、項目ごとに内容を解説していきたい。

(1)すべての金融商品について開示が要求される項目

時価のレベルごとの合計額
この開示は、貸借対照表上で時価評価されているか否かにかかわりなく、すべての金融商品について求められる。ここで、開示が求められる時価のレベルとは何かを解説する。

時価算定基準は、評価技法を用いた時価の算定にあたり、関連性のある観察可能なインプットを最大限利用し、観察できないインプットの利用を最小限にすることを求めている。時価算定に用いるインプットは図表2の通りレベル1、2、3の3つのカテゴリーに分けられ、レベル3よりレベル2、レベル2よりレベル1のインプットを優先的に使用して時間を算定しなければならない。
 

図表2 インプットのレベルの概要

観察可能性 レベル 概要
観察可能 レベル1 時価の算定日において、企業が入手できる活発な市場における同一の資産または負債に関する相場価格であり調整されていないもの。上場株式の株価などは通常レベル1と考えられる。
レベル2 直接または間接的に観察可能なインプットのうち、レベル1に含まれる相場価格以外のインプット。一般的に使われる金利や為替相場はレベル2と考えられる。
観察不能 レベル3 観察できないインプット(観察可能な市場データではないが、入手可能な最良の情報に基づくインプット)。売掛先の信用スプレッドは通常市場では観察不能であり、その場合はレベル3と判定される。


金融商品の時価は、その時価の算定において重要な影響を与えるインプットが属するレベルに応じて、レベル分類される。時価の算定に重要な影響を与えるインプットが複数含まれる場合は、重要な影響を与えるインプットが属するレベルのうち、時価の算定における優先順位が最も低いレベルに当該時価を分類する。イメージとしては、図表3のとおりである。

図表3 金融商品の時価のレベル別分類

図表3 金融商品の時価のレベル別分類

同じ商品であれば、必ず同じレベルになるというものではないが、一般的に想定される時価のレベルと主なインプットをまとめると、図表4のようになると考えられる。
 

図表4 一般的に想定される時価のレベルと主なインプットの例

商品 レベル 主なインプットの例 備考
上場株式

1または2

取引所の取引価格 レベル1となることが多いと考えられる。
保有債券 1または2 金利、信用リスク、または市場価格 レベル2となることが多いと考えられる。
自社発行社債 2または3 金利、自社の信用リスク、または市場価格 自社発行社債の市場データが観察でき、当該市場データをそのまま時価算定に用いる場合は、レベル2とすることが多いと考えられる。
買掛金、
支払手形等
2または3 金利、信用リスク 信用リスク調整をどうとらえるかによると考えられる。
借入金 2または3
売掛金、
受取手形
2または3
貸付金 2または3
金利スワップ(プレイン・バニラ・スワップ) 2または3   レベル2となることが多いと考えられる。
為替予約 2または3 為替相場、
信用リスク
レベル2となることが多いと考えられる。通貨や期間の長さによりレベル3となることもある。

※一般事業会社が保有またか発行していると考えられる商品を前提としている。

(2)時価のレベルがレベル1以外の金融商品について開示が要求される項目

1.時価の算定に用いた評価技法およびインプットの説明
時価のレベルがレベル1以外の金融商品については、時価の算定に用いた評価技法およびインプットの説明を開示しなければならない。

2.時価の算定に用いた評価技法またはその適用を変更した場合その旨およびその理由
時価の算定に用いた評価技法等を変更した場合には、その旨およびその理由の開示が必要である。


従来も時価の算定方法の開示は求められていたが、時価把握困難として時価が開示されてこなかった金融商品についても時価の開示が要求されることで、本項の開示も結果的に拡充されることになると考えられる。また、デリバティブ等について、従前は、「取引先金融機関から提示された価格によっている」というような記載をしていた場合も、どのようなインプットを用いて、どのような評価技法で時価を算定しているのかを記載する必要がある。

(3)時価のレベルがレベル3で、時価を貸借対照表評価額とする金融商品について開示が要求される項目

1.時価の算定に用いた重要な観察できないインプットに関する定量的情報

たとえば、倒産確率、倒産時の損失率、期限前返済率、株式ボラティリティなどがある。

ただし、企業自身が観察できないインプットを推計していない場合は、開示は求められない。これには、たとえば、評価モデルに過去の取引価格をインプットとして投入して時価を算定している場合が挙げられる。また、自ら時価評価の計算を行うのではなく、金融機関や情報ベンダーから入手した相場価格を時価の算定に用いている場合もこれにあたる。提供を受けた価格が会計基準に従って算定されたものであるかどうかは判断が必要であり、当該判断にあたっては、事業会社において入手した相場価格を時価とみなすことができるとされているケース[注]を除き、企業は相応の手続きを実施することが要求されるようになった。

[注] 同一通貨の固定金利と変動金利を交換する金利スワップ(いわゆるプレイン・バニラ・スワップ)、および、為替予約または通貨スワップが対象。
いずれも、レベル2の時価と判断され、インプットがデリバティブの全期間にわたって一般に公表されていて観察可能であり、公表されているインプットの契約時からの推移と入手した相場価格との間に明らかな不整合はないと認められることが前提で、オプションを含む取引は除外される。

2.金融資産および金融負債の期首残高から期末残高への調整表
調整表を作成するにあたっては、図表5の項目の開示が求められる。
 

図表5 調整表の作成で求められる開示項目

(ア)当期の損益計上額および損益計算書上の科目

なお、当期の損益計上額のうち貸借対照表日に保有する金融資産および金融負債の評価損益およびその損益計算書上の科目も開示が必要である。

(イ)当期のその他の包括利益計上額および包括利益計算書上の科目

(ウ)購入、売却、発行及び決済のそれぞれの額(純額表示も可)

(エ)レベル1またはレベル2の時価からレベル3の時価へ、もしくはレベル3の時価からレベル1またはレベル2の時価への振替額および当該振替の理由、振替時点に関する方針(方針の例:振替を生じさせた事象が生じたまたは状況が変化した日、会計期間の期首、会計期間の末日)


3.企業の評価プロセスの説明
たとえば、評価の方針および手続の決定方法や各期の時価の変動の分析方法等を記載することが求められる。

4.重要な観察できないインプットを変化させた場合の時価に対する影響に関する説明
重要な観察できないインプットを変化させた場合に貸借対照表日における時価が著しく変動するときは、当該観察できないインプットを変化させた場合の時価に対する影響に関する説明を注記することが求められる。また、重要な観察できないインプットが複数あり、インプット間に相関関係がある場合には、当該相関関係の内容および当該相関関係を前提とすると時価に対する影響が異なる可能性があるかどうかに関する説明を注記する。

会社法計算書類の開示

時価算定基準の導入にあわせて会社計算規則が改正され、「金融商品の時価の適切な区分ごとの内訳等に関する事項」が開示項目として追加された。この「金融商品の時価の適切な区分ごとの内訳等に関する事項」は、金融商品会計基準等における「金融商品の時価のレベルごとの内訳等に関する事項」と同義であるとされている。

したがって、計算書類においても、重要性の乏しいものを除いて、「金融商品の時価のレベルごとの内訳等に関する事項」の開示は実質的に必要である。ただし、有価証券報告書の提出義務のある大会社以外の株式会社においては、省略できるとされている。また、連結注記表を作成する会社は個別注記表での注記は不要とされており、連結財務諸表に注記している場合に個別財務諸表での記載は不要とされている扱いと整合的になっている。

ここで留意したいのは、「金融商品の時価の適切な区分ごとの内訳等に関する事項」は、時価開示適用指針における「金融商品の時価のレベルごとの内訳等に関する事項」における定めと異なり、具体的な開示項目を列挙してはいないという点である。これは、会社計算規則では、実務上の負担等も考慮し、各株式会社の実情に応じて必要な限度での開示を可能とするためである。よって、時価開示適用指針において「金融商品の時価のレベルごとの内訳等に関する事項」として注記を求められる事項であったとしても、当該事項の注記を要しないと合理的に判断される場合には計算書類において当該事項について注記しないことも許容されることが、法務省の考え方として示されている。つまり、会社法計算書類においては、「金融商品の時価のレベルごとの内訳等に関する事項」と同水準の注記が求められているわけではない。

なお、「金融商品の時価のレベルごとの内訳等に関する事項」はIFRS13号「公正価値測定」の開示規定を取り入れるものではあるが、従前は、IFRS®基準適用企業であってもIFRS13号に基づく該当注記を省略することが可能であった。IFRS基準で要求される注記事項であっても、日本基準において連結計算書類で表示すべき事項に相当するもの以外は、連結計算書類での注記は要求されないためである。しかし、今後は日本基準においても開示が要求されるようになったことで、当該取扱いの対象ではなくなるため、2022年3月期からは、重要性の乏しいものを除いて連結計算書類での金融商品の時価のレベル別開示が必要となることに注意する必要がある。

投資信託と組合等への出資に関する取扱い

(1)2019年時価算定適用指針での取扱い

投資信託、および、貸借対照表に持分相当額を純額で計上する組合等への出資については検討が必要と考えられたことから、2019年時価算定適用指針では経過的な取扱いとされている。

そのため、この2022年3月期本決算においては、投資信託の時価については従来の取扱いが踏襲され、「金融商品の時価のレベルごとの内訳等に関する事項」の開示も要求されない。当該取扱いを適用した投資信託については、当該注記を行っていない旨、および、貸借対照表計上額を「金融商品の時価のレベルごとの内訳等に関する事項」の時価のレベルごとの合計額の注記にあわせて注記する。

また、貸借対照表に持分相当額を純額で計上する組合等への出資については、時価の注記が要求されない。ただし、当該注記を行わない場合、その旨および貸借対照表計上額を金融商品の時価の注記にあわせて注記する。

(2)改正適用指針での取扱い

2019年時価算定適用指針は投資信託および組合等への出資に関する検討を経て2021年6月に改正された。2022年4月1日以後開始する連結会計年度および事業年度の期首から適用されるが、2021年4月1日以後開始する連結会計年度および事業年度の期首から、または、2022年3月31日以後終了する連結会計年度および事業年度における年度末に係る連結財務諸表および個別財務諸表から適用することも可能であるため、次よりその概要を説明する。

1.投資信託
改正適用指針により、2019年時価算定適用指針での経過的な措置は削除され、別途定めがある事項を除き、投資信託についても原則他の金融商品と同様の取扱いを受けることになる。結果として、従来時価を把握することが極めて困難であるとして、取得原価で評価していた非上場の不動産投資信託についても時価による評価が求められることになる。

改正適用指針で新たに定められた投資信託の時価の取扱いの概要は、次の通りである。

主要な市場に該当する取引所において取引価格がある場合、当該取引所の取引価格が時価となる。取引所における取引価格が存在せず、かつ、解約等に重要な制限がない場合は、基準価額を時価とする。ただし、時価算定会計基準における時価の定義を満たす、他の算定方法により算定された価格を利用することもできる。

一方、取引所における取引価格が存在せず、かつ、解約等に重要な制限がある場合には、投資信託財産が金融商品である投資信託と投資信託財産が不動産である投資信託で取扱いが一部異なっている。投資信託財産が金融商品である投資信託は、図表6のいずれかに該当する場合については基準価額を時価とみなすことができる。
 

図表6 基準価格を時価としてみなすことができる要件(※)

 1.  投資信託の財務諸表がIFRS基準または米国会計基準に従い作成されている場合
 2.  投資信託の財務諸表がIFRS基準および米国会計基準以外の会計基準に従い作成されているが、時価の算定に関する定めが、IFRS基準または米国会計基準の公正価値測定の規定とおおむね同等であると判断される場合
 3.  投資信託の投資信託財産について、一般社団法人投資信託協会が定める「投資信託財産の評価及び計理等に関する規則」に従い評価が行われている場合

(※)投資信託財産が金融商品の場合

これに対し、投資信託財産が不動産である投資信託は、投資信託財産が金融商品である場合と異なり、要件の定めなく、基準価額を時価とみなすことができる。

みなし規定に拠った投資信託については、他の金融商品とともに時価の開示を行ったうえで、当該投資信託の貸借対照表計上額の合計額が重要性に乏しい場合を除き、当該取扱いを適用した投資信託が含まれる旨を注記する。金融商品のレベル別開示等は不要であるが、これに代わる注記事項が、投資信託財産が金融商品である投資信託と不動産である投資信託の別に図表7の通り定められている。
 

図表7 みなし規定を適用した場合に求められる追加の開示 

追加の開示内容 信託財産
金融商品 不動産
 1.  基準価格を時価とみなす取扱いを適用しており、レベル別開示の注記をしていない旨
 2.  基準価格を時価とみなす取扱いを適用した投資信託の貸借対照表価額の合計額
 3.  2.の期首残高から期末残高への調整表(※)
 4.  2.の解約等に関する制限の内容ごとの内訳(※) -

(※)2.の合計額に重要性がない場合は開示不要

2.組合等への出資
組合の出資は金融資産であるため、金融商品に関する会計基準では、従来から時価の注記を求めて等へいたが、時価を把握することが極めて困難として注記を行っていないケースもあった。そもそも組合等への出資については複数の会計処理があり、どのようなケースで時価の注記を求めるかについては会計処理のあり方と合わせての検討が必要と考えられた。そのためから、改正適用指針では、貸借対照表に持分相当額を純額で計上する組合等への出資について、時価の注記を行わないことができる旨が示された。ただし、その場合には、次の注記が求められる。

(i)当該取扱いを適用しており、時価開示適用指針に定める時価の注記をしていない旨
(ii)当該取扱いを適用した組合等への出資の貸借対照表価額の合計額


3.適用方法と開示に関する経過措置

改正適用指針が定める新たな会計方針を将来にわたって適用することとされている。この場合、その変更の内容について注記する。また、適用初年度においては、2019年時価算定適用指針の経過措置を適用し金融商品のレベル別開示をしていなかった投資信託に関しては、金融商品のレベル別開示についての比較情報の開示は求められない。

また、本3月期の年度末から早期適用する場合には、前述の求められる注記のうち、以下の注記について省略することができる。

(ア)基準価額を時価とみなす取扱いを適用した投資信託の期首残高から期末残高への調整表
(イ)2019年時価算定適用指針の経過措置を適用し金融商品のレベル別開示をしていなかった投資信託であって、基準価額を時価とみなす取扱いを適用しないものについて、時価開示適用指針でレベル3の時価の金融商品に要求されている期首残高から期末残高への調整表

さらに、適用初年度の翌年度となる来年度においても、前記(ア)(イ)の比較情報は求められない。

執筆者

有限責任 あずさ監査法人
アシスタントマネジャー 公認会計士
山本 智恵(やまもと さとえ)

お問合せ

このページに関連する会計トピック

会計トピック別に、解説記事やニュースなどの情報を紹介します。

このページに関連する会計基準

会計基準別に、解説記事やニュースなどの情報を紹介します。