「eスポーツ市場拡大の利点」第9回。国内外でeスポーツやゲームを通して、英語・プログラミングなどのスキルやチームワーク・伝える力などのコミュニケーション力を学ぶ動きが教育現場で広がりつつあります。教育面でのeスポーツやゲームの活用例を紹介します。
本連載は、日刊工業新聞(2021年4月~7月)に連載された記事の転載となります。以下の文章は原則連載時のままとし、場合によって若干の補足を加えて掲載しています。

第9回では、eスポーツやゲームが持つ教育的側面について、国内外の事例を取り上げながら、その可能性に言及していく。
eスポーツやゲームを一般的な教育現場で活用するという話は、一昔前であれば非常に逆説的に聞こえていたかもしれない。確かに、進学塾・予備校の日能研が監修した携帯型ゲーム機「ゲームボーイ」のソフト「四角い頭を丸くする」といったゲーム内容そのものが「学ぶ・暗記する」ことを意識したコンテンツであればともかく、現在は大人気シューティングゲーム「フォートナイト」、落ち物パズルゲーム「ぷよぷよ」といったごく普通のゲームが一般的な教育現場で用いられている。

eスポーツやゲームを「一般的な教育現場で活用」するケースは大きく2つに分類される。
1点目は、それらを通して英語やプログラミングなど教育科目・スキルそのものを学ぶケースだ。前述した「フォートナイト」を英語でプレーしながら英語を学ぶ教育サービスや、実際に「ぷよぷよ」というゲームを作ることを通してプログラミングを学べる教材パッケージなどが登場している。
海外に目を移すと、北アイルランドは、ゲーム内で自由にブロックを配置し建築や街づくりが楽しめるゲーム「マインクラフト」を用いた、歴史やプログラミングを学べる教育パッケージをすべての学校に無償提供している。このように、子どもたちがゲームを通して楽しく勉強する機会はさまざまな場所で提供されつつある。

2点目は、eスポーツを通して精神面やコミュニケーション面での学びを得るケースだ。学校での部活動は代表的な例である。米国では2018年秋から大規模な高校eスポーツ選手権を開催している。国内でも2019年から全国高校eスポーツ選手権が始まり、全国各地で公認eスポーツ部が設立された。
多くのeスポーツタイトルはチームゲームであり、試合で結果を残すためにはチームワークが求められる。ある高校のeスポーツ部に所属する生徒の話によると、部活動を通して最も苦労したことは「チームで合わせること」。1つの大きな目標に向けて切磋琢磨するなかで「本質を見抜く力」や「伝える力」を身につけることができたという。

また、部活動に真剣に取り組んでいる生徒ほど高い学習意欲が養われるという話もある。もちろん、ゲームプレーの時間は日々管理し、勉学とのバランスを図ることが活動の前提だ。今後もeスポーツやゲームの教育現場での展開には大いに期待したい。

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日刊工業新聞 2021年6月25日掲載(一部加筆・修正しています)。この記事の掲載については、日刊工業新聞社の許諾を得ています。無断での複写・転載は禁じます。

eスポーツ市場拡大の利点

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