「eスポーツ市場拡大の利点」第7回。eスポーツ産業だけでなく、周辺産業の経済拡大にも大きな効果が期待できる技術の進化について解説します。
本連載は、日刊工業新聞(2021年4月~7月)に連載された記事の転載となります。以下の文章は原則連載時のままとし、場合によって若干の補足を加えて掲載しています。

技術の進歩はゲームやeスポーツ産業に多くの恩恵をもたらしてきた。たとえばハードウェアにおけるデバイスの性能やセンシング技術、ソフトウェアにおける通信処理や人工知能(AI)といった技術の進化は、ゲームを通してユーザーに新たな体験を提供可能にした。第7回ではeスポーツ産業で今後、注目すべき技術を紹介する。

注目度の高い技術の1つはクロスリアリティ(XR)だろう。仮想現実(VR)や拡張現実(AR)技術を活用することで、現実では実現が難しい新たなスポーツ体験を創出できる。たとえばプロリーグが設立予定のARスポーツ「HADO」は、現実空間で体を動かしながら、仮想上のエナジーボールを放って戦うという、現実と仮想を融合したスポーツ体験を提供している。XR技術とゲームの組み合わせ効果として特に期待したいのが周辺産業への波及である。たとえばヘルスケア領域では、脳卒中で手足の運動機能が麻痺した患者向けにVR空間を活用し、ゲーム感覚でリハビリを行う試みも出てきている。

教育領域では、算数が学べるVRゲーム「ナンバーハント」などでアクティブラーニング(主体的な学び)を促進している。ゲームならではの体験とVRの没入感で高い学習効果が期待できる。このようにXR技術とゲームの組み合わせは、さまざまな産業への技術移転が可能であり、今後、活用が増加するだろう。

ノンファンジブル・トークン(NFT)も注目すべき技術だろう。従来、ゲーム内で複数のユーザーが同一名称のアイテムを所持していた場合に、それぞれを個別に識別することは困難だった。だが、NFT技術を活用すれば、アイテムに固有のトークンを発行し、それぞれを別のアイテムとして個別に識別することが可能となる。
これにより、たとえば有名なeスポーツ選手が大会中にゲーム内で使用したアバター(分身)といった固有の価値をアイテムに付与できる。すでにゲーム内のユーザー間取引において「アクシー・インフィニティ」というブロックチェーン技術を用いたゲーム内の土地が約1億6,000万円で売買された。

一人称視点のシューティングゲーム「カウンターストライク:グローバルオフェンシブ」では、武器の見た目を変更するという現在は入手できないアイテムが約1,400万円で売買されるなど、ゲームという仮想空間における経済圏は拡大しつつある。今後、NFT技術が普及すれば、ユーザーが仮想空間で所有する資産に対する価値の創出や流動性が促進され、経済圏の拡大につながるだろう。

eスポーツ産業を成長させる技術

ハードウェア技術の例 ソフトウェア技術の例
  • デバイス性能
  • デバイス小型化
  • センシング技術
  • インフラ
  • AI
  • クラウド
  • 通信処理
  • ビジュアル生成

執筆者

KPMGコンサルティング
シニアコンサルタント 水沢 丈

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日刊工業新聞 2021年6月11日掲載(一部加筆・修正しています)。この記事の掲載については、日刊工業新聞社の許諾を得ています。無断での複写・転載は禁じます。

eスポーツ市場拡大の利点

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