サステナビリティに強い経理財務部門 ~SXに伴う新たなCFOの役割と課題

サステナビリティ・トランスフォーメーション推進による経理財務機能への影響と、環境変化を競争優位性につなげるために対応すべきCFO課題を、「成長」「ガバナンス」「効率」「コンプライアンス」の4つの視点から整理し、解説します。

サステナビリティ・トランスフォーメーション推進におけるCFO課題を、「成長」「ガバナンス」「効率」「コンプライアンス」の4つの視点から整理し、解説します。

サステナビリティへの対応を経営の最優先課題と認識しながら、多くの企業が対応に手をこまねいています。サステナビリティ経営を推進していくうえで、経営の羅針盤としての役割を果たす部署が必要不可欠であり、従来から財務数値を用いて羅針盤としての役割を果たしてきた経理財務部門の変革が一刻も早く求められています。サステナビリティに強い経理財務部門をつくるために必要な事項を洗い出し、優先順位をつけて計画化し、速やかに行動に移すことは、変化を競争優位性につなげるための第一歩となります。そこで本稿では、サステナビリティ・トランスフォーメーション推進による経理財務機能への影響と、環境変化を競争優位性につなげるために対応すべきCFO課題を、「成長」「ガバナンス」「効率」「コンプライアンス」の4つの視点から整理し、解説します。

POINT1
サステナビリティに関係する経営環境の変化は、企業にとってビジネスリスクの要因であると同時に、新たな事業機会を見出す好機でもある。

POINT2
サステナビリティのための取組みを同業他社の状況を見ながら横並びで進めて体裁だけを整えるのではなく、サステナビリティを組み込んだ戦略に基づき、独自の施策を立案・実行し、競争優位性を確保する。

POINT3
サステナビリティ・トランスフォーメーションの推進に伴うCFOの課題解決には、情報の可視化が不可欠である。非財務情報を評価して金銭的価値に換算し、財務情報と統合して扱うことができるようにすることで、サステナビリティを長期戦略に組み込む際のさまざまな意思決定が適切に行えるようになる。

POINT4
サステナビリティ・トランスフォーメーションの推進においてCFOには、1.価値創造のパートナー、2.変革のイネーブラー、3.企業価値のプレゼンターとしての役割が期待されている。

I.サステナビリティ経営の先行企業

1.経営環境の変化を競争優位性につなげる

サステナビリティに関係する近年の経営環境の変化は非常に激しく、企業は意思決定や行動の大きな転換期に直面しています。この変化は、企業にとってビジネスリスク要因であると同時に、新たな事業機会を見出す好機ともいえます。サステナビリティへの取組みは、同業他社を見ながら横並びで進めて体裁を整えるようなものではありません。環境・社会・経済に対して確かな成果をもたらしながら利益を確保するために、自社独自の中長期的な成長戦略を打ち出し、具体的な施策を立案して実行することによりサステナビリティに強い企業への転換を目指すべきです。

(1)投資家の変化
2006年に当時の国連事務総長であるコフィー・アナン氏が発表したPRI(責任投資原則)をきっかけに、ESG課題に対する責任を果たさない企業は投資先から外されるなど市場から厳しい評価を受けるようになっています。機関投資家は財務情報に加え、温室効果ガスの排出量、水の使用量、顧客満足度や女性管理職比率といった非財務情報を「企業の持続的な成長力の源泉」と捉え、長期的な視点で企業を評価し投資するようになりました。企業はこのような投資家の長期的な視点を意識して戦略の策定や投資判断、事業ポートフォリオの組換えをすすめることにより投資家による評価を高め、将来の設備投資、既存事業の拡大、新規事業の立ち上げ、企業買収等の原資調達の安定化につなげることができるため、今後の資金調達戦略上、非財務情報の開示は非常に重要となります。

(2)各国の政策の変化
炭素排出量の削減という課題をとっても、海外では欧州を中心に炭素税の導入、炭素排出権取引市場の開設、ガソリン車廃止の制度化など、国の政策レベルで脱炭素に向けたさまざまな取組みが適用されており、グローバル規模で活動を展開する企業においてESG課題は将来の損失リスクではなく、すでに財務諸表数値にインパクトを与える直接的な経営課題となっています。

わが国では東京証券取引所が、2022年に予定されている市場区分再編で最上位市場に上場する企業に対し、気候変動に伴う業績等への影響を開示することを求めているほか、炭素税の導入、EU等他国政府による国境炭素税導入の議論も進んでおり、将来の競争力確保のために、炭素リスクをはじめとしたESG関連の社会課題への早期対応は日本企業にとって喫緊の課題といえます。

(3)顧客・従業員の変化
近年では、自社製品向けの部品を生産するサプライヤーに対して、再生可能エネルギー100%での生産を要請する企業が現れてきました。購買力の強い企業におけるサステナビリティへの取組みは、グループ内部にとどまらず、取引先を含むサプライチェーン全体を対象とする広範囲な取組みとなりつつあります。また、従業員が自社の気候変動対策への強化を求めるストライキを実施した企業もあります。企業が持続的成長をし続けるためには、顧客企業や従業員のサステナビリティに関する期待に十分に応えられる経営姿勢が不可欠となっています。

2.SX推進のカギは経理財務部門

このように、経営環境の変化を競争優位性へとつなげるためには、サステナビリティの視点を戦略的意思決定に組み込み、ビジネスモデルのレジリエンスを高め、中長期的な成果としての企業価値向上を実現しなければなりません。そのためには、サステナビリティ視点によるトランスフォーメーション(サステナビリティ・トランスフォーメーション、以下「SX」という)の推進が不可欠です。正しい意思決定を行うためには、判断材料となる信頼できる情報が必要になりますが、サステナビリティを意識した経営を推進するには従来の財務情報を基に計算される各種KPI数値だけでは十分とは言えません。SXの推進にあたり必要となるのは、サステナビリティ要素を定量化し、財務情報と統合する新たな情報の枠組みです。

自社の活動の成果を正確に把握し、今後進むべき方向を示す情報を経営者に提供することは、経理財務部門の普遍的な役割です。この役割はSXの推進によって何ら変わることはありませんが、サステナビリティの視点を組み込んだ戦略的意思決定に資する情報をマネジメントに提供するためには、経理財務部門は取り扱う情報の範囲を従来よりも大きく広げなければなりません。今後の経営管理では、従来管理対象外であった非財務情報のKPIへの追加、さらに事業活動の結果を利益だけで評価するのではなく、環境・社会に与えるインパクトも含めて評価する業績管理が求められるようになると考えられます。経営者の新たなニーズに応える情報提供機能を発揮する経理財務部門を整備できるかどうか。それがSX推進の成否を左右するといえます。

3.企業の6割が経理財務機能の見直しは未着手

本年度KPMGが実施した「KPMGジャパン CFOサーベイ2021(以下、「CFOサーベイ」という)」の結果によると、SXの推進にあたり、現在の経理財務部門の体制で十分であると回答した企業は全体の7%しかなく、77%の企業が何らかの改善が必要と認識しています。ただし、そのうちの43%は改善活動に着手していません。改善の必要性についての評価をまだ行っていない企業を含めると、全体の約60%の企業が経理財務機能の見直しに未着手ということです(図表1参照)。

図表1 今後のSXの推進にあたり、現在の経理・財務部門の体制について当てはまるもの(単一選択)

図表1 今後のSXの推進にあたり、現在の経理・財務部門の体制について当てはまるもの(単一選択)

出典:CFOサーベイより抜粋

また、自社の経営課題におけるSXの位置づけについての質問では、32%の企業がSXを最優先課題として捉えていると回答しましたが、残りの68%の企業は、影響の大きさは認識しているものの従来の課題解決を優先する、影響の分析・評価中、影響を測りかねており様子見、という回答に大きく分かれました(図表2参照)。

図表2 経営課題におけるSXの位置づけとして、最もあてはまるもの(単一選択)

図表2 経営課題におけるSXの位置づけとして、最もあてはまるもの(単一選択)

出典:CFOサーベイより抜粋

いまだ対応に取り掛かっていない理由には、制度化や他社の動向を見極めようと慎重になっていること、サステナビリティに取組むことによる経理財務部門への影響範囲や程度が特定できておらず、必要な対応策の優先順位付けができないでいるという2つが考えられます。確かに現時点では、サステナビリティ関連の将来の制度化や同業他社・取引先等の動向など不確実な点は多いですが、GHG(温室効果ガス)排出量の削減など各企業の経営課題としてすでに顕在化しているテーマも多くあります。SXを推進していくために今行うべきことは、横並びで対応する発想から脱却し、サステナビリティを組み込んだ長期戦略の検討、自社のビジネスおよび経理財務部門への影響を評価し、できることから改善に着手することです。まずは経理財務部門が変わり、サステナビリティを意識した経営に必要な情報を社内に提供できるようになることが、サステナビリティに強い企業への変革の第一歩であると考えます。

II.SXによる経理財務機能への影響

1.SXによるCFOの業務領域の拡充

KPMGでは、企業経営においてCFOが担当すべき業務領域を「成長」「ガバナンス」「効率」「コンプライアンス」の4つの視点で分類し、整理しています。従来、「成長」の成果は財務会計上の利益であり、CFOは利益を最大化するための戦略策定や遂行をサポートしてきました。この考え方において、サステナビリティは「ガバナンス」の1項目であり、多くの場合、企業の戦略に組み込まれることはなく、主にIR目的での社会貢献活動等として取り扱われてきました。

しかしながら、SXの最大の特徴は、サステナビリティを「成長」の重要な要素と捉え、長期戦略に組み込むことにあります。「成長」の成果に投資家、政府、顧客・従業員の目線を反映させ、自社の利益+環境・社会・経済価値の向上と定義することにより、他のすべての視点の内容もサステナビリティの観点から拡充すると考えます(図表3参照)。

図表3 CFOの担当領域の変化(拡充)

図表3 CFOの担当領域の変化(拡充)

SXに伴うCFOレーダーの拡充
【成長 Growth】

  • 事業戦略・企業価値に影響を及ぼすビジネス・マテリアリティの特定
  • ビジネス・マテリアリティからESGリスク・機会の特定、重要性・優先度の評価
  • ESG視点を踏まえた事業ポートフォリオの評価と組替えの検討
  • NPVなど従来の投資判断基準にESGの指標を統合した評価ツールの導入
  • 財務・非財務両面からの業績評価制度の設計(非財務KPIの設定)
  • ESG債の利用による最適資本構成(WACCの引下げ)の検討
  • サステナビリティ関連知識と会計の両方に長けた人材の育成・確保、など

【ガバナンス Governance】

  • ESGリスク・機会、および関連する非財務指標(外部経済効果含む)の分析・評価
  • ESG格付け向上のための開示情報の充実
  • ESGリスク・機会のモニタリングプロセスの整備
  • サステナビリティに対応するための経理財務部門の組織体制の整備
  • グループ会社・サプライヤーへのサステナビリティに係る方針、取引ポリシーの共有
  • グループ会社の非財務情報の管理ポリシーの策定、など

【効率 Efficiency】

  • グループ内(場合によってはサプライヤーを含む)の非財務データの一元管理の仕組みの整備
  • 非財務データを効率的に収集・集計・出力を自動化する情報システム設計への関与
  • ESG情報の集計・分析・報告を担当するチームの編成、など

【コンプライアンス Compliance】

  • 今後進む非財務情報の開示基準やESGに係る新たな規制などの情報把握
  • 非財務報告に係る内部統制の設計
  • 内部監査との情報連携の検討、など

出典:KPMG作成

2.経理財務機能の課題

CFOは、SXの推進による業務領域の拡充に対応するため、あるべき経理財務機能の姿について検討し、現状の経理財務機能を評価し課題を整理する必要があります。

(1)「成長」の視点における課題
前述のCFOサーベイでは、SXの推進によりCFOが自身の担当する業務領域のうちどれが重要になると考えているかについても質問しました。最も多く回答があったのはコーポレート戦略(45%)です。次いで、経営計画(39%)、財務戦略(38%)、リスクマネジメントおよび事業戦略(31%)と、企業の長期的な成長計画に大きく関係する項目が並びました。多くのCFOが懸念しているとおり、企業価値向上のための戦略策定や遂行をサポートし、持続的成長をいかに実現するかはSXの本質的な課題です。したがって、CFOは以下のようなテーマに取組まなければなりません。

  • 事業戦略・企業価値に影響を及ぼすビジネス・マテリアリティの特定
  • ビジネス・マテリアリティからESGリスク・機会の特定、重要性・優先度の評価
  • ESG視点を踏まえた事業ポートフォリオの評価と組替えの検討
  • NPVなど従来の投資判断基準にESGの指標を統合した評価ツールの導入
  • 財務・非財務両面からの業績評価制度の設計(非財務KPIの設定)
  • ESG債の利用による最適資本構成(WACCの引下げ)の検討
  • サステナビリティ関連知識と会計の両方に長けた人材の育成・確保、など

上記テーマに対応するためには、これまで扱っていなかった各種非財務情報を評価して金銭的価値に換算し、財務情報と統合して扱うことができるようにする必要があります。

一例をあげると、近年政府によるカーボンプライシング政策(炭素税や排出量取引制度の導入など)が企業の戦略や収益・費用に与える影響への備えとして、多くの企業で独自の炭素価格を設定して投資判断等に活用する内部炭素価格制度が導入されています。炭素の排出量に価格をつけることにより、従来意思決定の際に用いていた会計データと統合して扱うことができるようになり、意思決定や行動を脱炭素の方向に向けることが期待できます。

内部炭素価格の設定にあたっては、公表されている各種外部価格を参考にする方法、過去の投資案件を用いてシミュレーションを行う方法などがありますが、会計スキル、投資計画・管理スキルを基礎として、さまざまな要因や情報を基に戦略との整合性に留意しながら議論を繰り返し、自社にとって最適な価格を決定する必要があります。

海外の先進企業では、炭素排出量に限らず、自社の事業やプロジェクトが環境・社会・経済へ与えるポジティブ・ネガティブ両面の影響を洗い出し、影響の大きさを定量化した結果を戦略策定に活用するほか、ステークホルダーに開示する取組みも行っています。

KPMGが開発したTrueValueメソドロジーは、「企業が創出する価値」を、財務的価値(財務実績)のみで評価するのではなく、環境・社会・地域経済に与えるポジティブ・ネガティブ双方の影響(外部性)も考慮に入れて、財務的価値と非財務的価値の両面で損益を算定・評価します(図表4参照)。

図表4 True Valueブリッジによる価値の見える化
経済・社会・環境側面の外部性を反映したTrue Valueの可視化(例)
財務実績を踏まえ、経済・社会・環境側面のポジティブおよびネガティブな外部性を金額換算し、活動により創出される真の価値(True Value)を算出します。

図表4 True Valueブリッジによる価値の見える化

出典:KPMG作成

SXの推進に伴うCFOの課題解決には、情報の可視化が不可欠です。非財務情報を評価して金銭的価値に換算し、財務情報と統合して扱うことができるようにすることで、サステナビリティを長期戦略に組み込む際のさまざまな意思決定が適切に行えるようになります。True Valueメソドロジーのような情報の可視化方法と活用法を確立すること、そしてそれを運用できる人材の育成・確保が、「成長」の視点では最も重要と考えます。

(2)「ガバナンス」の視点における課題
確実に戦略を遂行し、ステークホルダーの期待に応えるためには、日々のリスク管理とSXに伴う変化に対応できる体制づくり、そしてステークホルダーとの対話の促進が欠かせません。したがって、CFOは以下のようなテーマに取組まなければなりません。

  • ESGリスク・機会、および関連する非財務指標(外部経済効果含む)の分析・評価
  • ESG格付け向上のための開示情報の充実
  • ESGリスク・機会のモニタリングプロセスの整備
  • サステナビリティに対応するための経理財務部門の組織体制の整備
  • グループ会社・サプライヤーへのサステナビリティに係る方針、取引ポリシーの共有
  • グループ会社の非財務情報の管理ポリシーの策定、など

SXの推進に伴い、ESG投資を中心に行う機関投資家が積極的に経営に介入してくるケースも想定されます。また、自社のサステナビリティに対する取組みの開示が不十分な場合には、機関投資家の投資対象から外され、資金を引き上げられるリスクも大きくなってきています。サステナビリティに対する取組みの成果は、長期的に実現することが期待されているため、CFOが企業の窓口となり、投資家をはじめステークホルダーに対して戦略や成果について十分な開示とプロモーションを行い、理解を得ることがこれまで以上に重要になってくると考えられます。

また、リスク・機会を定量的に捉えて、経営に対しアクセル・ブレーキに資する情報提供機能を果たすためには、グループ全体の非財務情報を正確かつ迅速に収集し、レポーティングできるように準備しておく必要があります。そのためには、グループ内での非財務情報の取扱いに関する共通ルールを定め、グループ会社や場合によってはサプライヤーも含め周知しておくことも重要となります。

(3)「効率」の視点における課題
SXの推進により生じる非財務情報の可視化と財務情報との統合、戦略の遂行状況のモニタリング、ESGリスクのモニタリング、各種分析、レポーティング等の作業では、多くの財務・非財務情報を取り扱うことになり、作業負荷の著しい増加、処理誤りによる誤謬の増加が懸念されます。CFOは、デジタルを最大限活用した業務効率化・品質向上のための取組みを促進し、競争優位を創出するよう取り組む必要があります。

  • グループ内(場合によってはサプライヤーを含む)の非財務データの一元管理の仕組みの整備
  • 非財務データを効率的に収集・集計・出力を自動化する情報システム設計への関与
  • ESG情報の集計・分析・報告を担当するチームの編成、など

(4)「コンプライアンス」の視点における課題
財務情報と同様、非財務情報についても正確性を担保する必要があることはいうまでもありません。つまり、CFOは以下のようなテーマに取組まなければなりません。

  • 今後進む非財務情報の開示基準やESGに係る新たな規制などの情報把握
  • 非財務報告に係る内部統制の設計
  • 内部監査との情報連携の検討、など

非財務情報の開示ルールには、GRIスタンダード、SASBスタンダード、CDPガイダンス・質問書、IIRCの国際統合報告フレームワークなど、多くの団体が策定した基準が存在しており、現在は統一基準策定の検討も進められています。このようなルール策定の動向を注視し、制度化された際には迅速に対応できるような備えが必要です。

仮に、まだ経理財務部門の評価・改善に着手していないのであれば、まずは自社のサステナビリティへの取組み方針、あるいはサステナビリティを組み込んだ長期戦略に照らし、上述の4つの視点からCEOとして取り組むべき課題を識別して優先順位を検討し、今すぐに取組くむべきことから対応計画を作成し、行動に移すべきと考えます。

III.SX推進におけるCFOの役割

前章まで、「成長」「ガバナンス」「効率」「コンプライアンス」の4つの視点でサステナビリティに対応できる経理財務部門を整備することが、SX推進のカギであることを説明してきました。SXを成功させ、企業の持続的な成長を確実に実現するためには、CFOが経理財務部門を最大限に活用して企業内において以下の3つの役割を果たすことが重要であると考えます。

  1. 価値創造のパートナー
    SX推進の取組みの内容を適正に評価・可視化し、組織内外の関係者に必要な情報を提供することを通じて、新たなサステナブルな価値の創造を支援します。
  2. 変革のイネーブラー
    ビジネスの仕組みの構築や情報の可視化を通じて、社員、取引先等の組織内外の関係者の意識改革を促し、SXの取組みを推進し、加速させます。
  3. 企業価値のプレゼンター
    企業の持続性・成長性を高める長期戦略、具体的な取組み、将来の企業価値増加の可能性をステークホルダーに報告し、適切な対話を行うことにより、事業に対する利害関係者の理解を深め、良好な関係を構築します。

CFOがこの3つの役割を果たすために、経理財務部門のあり方を再検討し、変化に対して早めの準備を行い、万全の体制でSXを推進していっていただきたいと考えます。

執筆者

あずさ監査法人
アカウンティングアドバイザリーサービス統轄事業部
ディレクター 嘉鳥 昇