2021年第3四半期における世界のベンチャーキャピタルによる投資総額は、過去最高の1,717億ドルを記録しました。投資家がレイターステージの超大型取引に継続的に資金を投入し、10億ドル以上の案件が11件と、記録的な数字になりました。

2021年第3四半期は、世界の投資家の間では、ESGおよびクリーンテック、特に電気自動車、クリーンエネルギー、モビリティ、インフラなどの分野に対する関心が高まっています。例えば、EVメーカーのRivianが25億ドル、代替エネルギーインフラ企業のGenerateが20億ドル、バッテリーリサイクル企業のRedwood Materialsが7億ドルを調達しています。

2021年第4四半期は、ESGおよびクリーンテックに加えて、グローバルでは、フィンテックやヘルステック・バイオテック、B2Bサービス、流通・配送が、ベンチャーキャピタルにおいて引き続き魅力的な分野となることが予想されます。現在多くの企業が配送分野に参入しており、これからの数四半期間で地域レベルあるいは世界レベルで大型の統合が行われる可能性があります。

ポイント

  • グローバルでの資金調達額は1四半期を残した段階で、2020年の年間総額に迫る勢い。
  • 2021年第3四半期は、米国と南北アメリカの両方において、ベンチャーキャピタルによる投資が過去最高額を記録し、アジアでも過去2番目の取引額となった。
  • グローバル上位10件の取引は、米国・インド・中国・ブラジルに集中している。

米国

2021年第3四半期における米国のベンチャーキャピタルによる投資総額は828億ドル、取引総数は3,518件でした。10億ドルを超える投資ラウンドも増えて資金調達額の中央値が増加し、膨大な資本が米国のベンチャーキャピタルマーケットに投入されています。

米国の投資家はフィンテックとヘルステックに注目しています。Chimeによる11億ドルの調達、Varoによる5億1,000万ドルの調達など、デジタルバンキングがフィンテック分野の最大規模案件を集めましたが、インシュアテック、ブロックチェーン、B2B金融サービスにも関心が寄せられています。ヘルステック分野では創薬分野の人気が高く、女性の健康管理、ロボティクス、日常な医療手続きにおけるAIの統合といった分野でもベンチャーキャピタルの関心が集まっています。

米国のベンチャーキャピタルの間ではESGへの関心が高まっており、2021年第4四半期は、持続可能なソリューションを提供する企業への投資が拡大することが予想されます。なお今四半期に短期的な減速が見られたIPOおよびM&A活動は、2021年第4四半期には回復することが見込まれます。SPACによって完了するIPOの割合は減っていますが、従来型のIPOとダイレクトリスティングは引き続き注目を集めると予想されます。

南北アメリカ

2021年第3四半期における南北アメリカのベンチャーキャピタルによる投資総額は940億ドル、取引総数は3,934件でした。米国以外ではブロックチェーンへの投資が大きな注目を集めました。

ベンチャーキャピタルブームが続くカナダでは、広範囲の分野で1億ドル以上の投資が見られました。例えば、創薬企業のDeep Genomicsが1億8,000万ドル、旅行会社のHopperが1億7,500万ドル、ブロックチェーン関連企業Blockstream Corporationが1億6,700万ドルを調達しています。今四半期、カナダでは3つの新しいユニコーン企業が登場しました。

ラテンアメリカでは、多くの地域で大規模な投資ラウンドが行われました。コロンビアのRappi、アルゼンチンのTiendanube、メキシコのKavakが、5億ドルを超えるラウンドで資金調達しています。ブラジルではeコマースプラットフォームNuvemshopが5億ドル、不動産会社Quinto Andarが4億2,000万ドルの資金調達を行いました。今四半期、ラテンアメリカでは2社がユニコーンステータスを獲得しました。

2021年第4四半期においても、南北アメリカのベンチャーキャピタルによる投資は堅調であることが予想されます。フィンテックへの投資は流通と配送分野、ヘルステックとバイオテック分野と同様に、依然として大きな注目を集めています。

ヨーロッパ

2021年第3四半期におけるヨーロッパのベンチャーキャピタルによる投資総額は275億ドル、取引総数は1,910件でした。ヨーロッパ全域でフィンテックがベンチャーキャピタルによる大型投資を誘致しています。

国、地域別で見ると、2021年第3四半期はドイツのベンチャーキャピタルによる投資が堅調でした。オンデマンド食料品宅配企業Groverによる9億5,000万ドルのデット資金調達をはじめ、コンテンツプラットフォーム企業Contentful、宇宙テクノロジー企業Isar Aerospace、エドテック企業Coach Hubなど、さまざまな企業が1億ドル超の資金調達を実施しました。

北欧地域における2021年第3四半期のベンチャーキャピタルによる投資では、ゲームやESG関連のソリューションに対する投資家の関心も高水準である一方、フィンテックとSaaSが大きな成功を収めました。今年はまだ1四半期を残しているにもかかわらず、資金調達額はすでに2020年の規模を超えており、北欧地域のベンチャーキャピタルマーケットの将来的な見通しは明るいと言えます。

現在、食料品およびラストワンマイル配送事業がヨーロッパで急増しており、この分野は飽和状態に達することが予想され業界再編が起こることが予測されます。フィンテック分野でも今後数四半期間に大きな業界再編が起こりはじめる可能性があります。また、2021年第4四半期にグラスゴーでのCOP26開催に伴い、持続可能なソリューション、グリーンテック、クライメートテックにも注目が集まると考えられます。

アジア

2021年第3四半期におけるアジアのベンチャーキャピタルによる投資総額は481億ドル、取引総数は2,616件でした。インドのベンチャーキャピタル投資は、四半期の最高額を記録しました。Flipkartによる36億ドルの資金調達をはじめ、PharmEasyとOlaも5億ドルの投資ラウンドを実施しました。今四半期、インドでは9社の新しいユニコーンが登場しています。またインドではIPO活動も活発で、2021年第4四半期はその傾向が強まると考えられます。

中国でのベンチャーキャピタルによる投資は、エドテックやフィンテックなどの特定分野に対する政府の方針と規制変更により、やや減速しました。一方、この規制変更の影響を受けないハードウェア企業や、レストラン、食品配送など消費者市場の企業に代表される複数の分野では、堅調な投資が進んでいます。5Gテクノロジー企業CICT Mobileが5億6,900万ドル、ミルクティー小売企業HeyTeaが5億ドルの資金調達を実施しました。これらの分野は2021年第4四半期も投資が引き続き堅調である一方、多くの分野でベンチャーキャピタルによる投資が減速するとみられます。

日本におけるベンチャーキャピタル投資額は、2021年第3四半期に約14億ドルに達しました。日本では新規スタートアップ社数も増加し、スタートアップがより大規模な投資ラウンドを実施するようになってきています。2021年第4四半期も日本のベンチャーキャピタル投資は増加すると考えられます。

英語コンテンツ(原文)

大谷 誠

KPMGジャパン プライベートエンタープライズセクター統轄パートナー/KPMGコンサルティング 執行役員 商社セクター統轄パートナー

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