CEOアジェンダとしてのサプライチェーン戦略「第2回 ESG経営時代のサプライチェーン」

SCALe 連載シリーズ - 第2回目のテーマは、ESG経営時代のサプライチェーンです。脱炭素・気候変動、人権などの社会問題、循環型サプライチェーンマネジメント、ESG推進時の税務ガバナンスなどについて、KPMGの各分野の専門家がオペレーション、リスク、税務、ディールの観点から議論します。

SCALe 連載シリーズ - 第2回目のテーマは、ESG経営時代のサプライチェーンです。脱炭素・気候変動、人権などの社会問題、循環型サプライチェーンマネジメント、ESG推進時の..

新型コロナウイルス感染症(以下、「COVID-19」という)の世界的流行は、気候変動、貧困、デジタル化など、さまざまな社会的課題を企業と社会が再認識するきっかけにもなりました。ダメージを受けた社会や経済を復興し、アフターコロナの世界での一層の発展を目指すにあたり、ESG経営の注目度はますます高まっています。

連載SCALe第2回目のテーマは、ESG経営時代のサプライチェーンです。脱炭素・気候変動、人権などの社会問題、循環型サプライチェーンマネジメント、ESG推進時の税務ガバナンスなどについて、KPMGの各分野の専門家がオペレーション、リスク、税務、ディールの観点から議論します。

なお、本文中の意見に関する部分については、参加者の私見であることをあらかじめお断りいたします。

 

POINT 1
ESG経営の実現においてサプライチェーンは中核的な検討領域である。特に脱炭素・気候変動、水資源問題、人権・腐敗防止など、企業は、刻々と移り変わるこれらのテーマに目を配り、対処していく必要がある。

POINT 2
資源や素材を企業間で循環させる循環型サプライチェーンの構築が期待されている。日本ではリサイクルの文化が比較的根付いているとはいえ、政府や自治体、他社など幅広いサプライヤーとの協力が必要になる。

POINT 3
サプライチェーンの見直しを進めていく際には、税務的な影響も考慮しなければならない。将来の税務リスクを予防するには、ESGへの取組みに係る意思決定のあり方や役割分担を想定し、あらかじめグループ内ポリシーを整理しておくことが重要となる。

POINT 4
ESG経営下でのサプライチェーン見直しをトリガーにしたM&Aも今後増加するものと考えられる。また、DDの段階においてもサプライチェーンDDの重要性がますます高まる。

I.ESG視点のサプライチェーンに対する要求

足立 SCALe第2回目のテーマはESG経営です。ESG経営を実現するうえで、サプライチェーンは特に中心的な検討・対応を要する領域です。サステナビリティの視点に立ち、今後中長期にわたって上流から下流に至るまでさまざまなテーマへの対処に取り組むことが予想されます。

ESG経営では脱炭素の話が特に注目されていますが、これはサプライチェーンとして取り組むテーマの1つであり、将来に向けて、より多くのテーマにかかわるリスクと機会を織り込んだ再検討が必要になってくるでしょう。

そこで、ここではまずサプライチェーンに影響を与えるであろう、いくつかのテーマを挙げます。

足立 まずは脱炭素・気候変動です。2050年のカーボンニュートラルを目指した動きが活発化しています。その中で、サプライチェーン全体、すなわちスコープ3を視野にいれた温室効果ガス排出量削減の検討・推進を開始する企業が増えています。スコープ3では、サプライチェーンの川上(原材料を含めた調達)と、川下(自社製品の利用や消費)までのそれぞれを検討の対象とする必要があります。

グローバルに展開する一部の有力企業の取組みが特に顕著に見られますが、サプライチェーンの構造やサプライヤーとの力関係によっては、競合企業とも協調するような動きも求められます。

製造業において排出量の中心を占めるのは言うまでもなく製造工程、つまり工場です。しかし、物流における排出量も見逃せません。また日本に限らず、日本製造業の多くが進出するアジア圏においても、発電における化石燃料の割合は依然として高い状況です。炭素税や国境炭素税の導入、エネルギーミックスの実現に向けた各国の動きが進められる中、企業はこれらの動向を見極めつつ、製造のロケーションを含めたサプライチェーンの在り方を検討することになるでしょう。

岡本 水資源や廃プラスチックの問題も注目を集めていますよね。

足立 現時点において、安全で安定的な水資源へのアクセスを持つ国はそれほど多くありません。水リスクは、今後の気候変動の進展と相まってますます高まるでしょう。2050年には、世界の半数近くの国が水リスクの高い地域になるおそれがあると言われているほどです。

日本は水が豊かな国と思われていますが、実際には、国外の水資源への依存度が非常に高くなっています。バーチャルウォーターという概念を用いて考えると、日本のバーチャルウォーターの輸入量は年800 億トンを超え、世界最大です。したがって、サプライチェーンにおける水ストレスの把握と対応は、今後、製造業にとっても大きなテーマになるでしょう。

そして、近年特に注目されているテーマが生物多様性です。今後数十年の間で、世界中の100万種におよぶ動植物が絶滅の危機に陥ると言われており、それによる自然災害の増加や健康被害、規制強化に伴う事業停止など、多方面への影響が想定されます。生物多様性については、気候変動に続くリスクとして、企業への対応と開示を求める動きが強まりつつあります。

今年の6月には、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の生物多様性版ともいえるTNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)が正式に発足しました。企業は自社事業の自然へのインパクトを評価し、また開示することを今後一層求められることになる可能性があります。また、COVID-19の影響で延期になっていますが、2021年後半にはCOP15にて海洋汚染プラスチック対策を含む2010年の「愛知目標」の改定が行われる予定です。こうした背景から、水と生物多様性の問題についてのグローバルな関心は一層高まるものと思われます。

自社サプライチェーン全体を通じての脱プラスチックへの動きなどは、まさに生物多様性に係る代表的な取組みと言えます。

神津 環境面以外での要求事項はいかがでしょうか?

足立 人権や公正取引においても、サプライチェーン全体でコンプライアンスを徹底していくものと思われます。原材料関連については、2010年に制定されたドットフランク法以来の紛争鉱物関連規制により、一部の企業ではかねてより取組みが進められてきました。近年では、中国の新疆ウイグル地区を産地とする綿に対する米国の輸入規制が知られています。

2015年に制定された英国現代奴隷法の影響もあり、サプライチェーンにおける人権、特に児童労働や強制労働への企業の問題意識が高まってきたことは言うまでもありません。

人権問題を取り扱うNGO団体などによる指摘・改善要求といった活動も活発です。これは企業のレピュテーションにも影響を及ぼしかねないため、法令のみならず、NGO団体などの提言などにも十分な注意を払う必要があります。

しかも、人権問題は調達サイドだけのテーマではありません。自社製品の使用用途や販路によっては、人権侵害に関わる勢力の手に製品が渡るケースもあるからです。サプライチェーンを巡る人権という課題は、その対象も影響も大幅に拡大していることから、安全保障貿易の問題とも併せ、自社のサプライチェーンの再構築を検討し始める企業も出てきています。

II.循環型サプライチェーンの可能性

足立 既存のサプライチェーンにおけるサステナビリティ上の課題に個別に対応するという取組みに加え、サプライチェーンそのものを循環型に作り替えていく動きも見られます。それについてはいかがでしょうか?

丸山 省資源国家の日本は、高度成長期から省資源の観点から素材・原料へのリサイクルを考えていました。ここでは、2つの例をご紹介します。

1つは紙です。町内で回収カーが雑誌、書籍などを回収し、ホチキスの針やカラー加工を除去することで、再び紙資源として利用してきました。日本の古紙使用率は90%超ともいわれ、再生紙資源は海外に輸出されるほどです。もう1つはガラス瓶。かつては、酒屋さんなどに瓶またはケースを返しに行くと、返却料をもらえました。これらの取組みの特徴は、省資源の回収、単一素材、地域ローカル生産・消費・回収モデルにあります。省資源の観点はずっと以前から日本に根付いているのです。

時代は進み、現代では百貨店・スーパーの紙袋はプラスチック製の袋、飲料などの容器は瓶から缶やペットボトルへと変化しました。森林伐採抑制の流れもありますが、ロジスティクスの観点と経済合理性を追求した結果、紙は減らされ、プラスチックへの依存が高まったのです。

しかし、約20年前、再利用の機運が高まりました。家電リサイクル法が2001年(平成13年)に成立し、2003年(平成15年)頃には廃棄物業者の登録厳格化、処理拠点の在庫上限設定、罰金強化といった制度が整備されました。そして、民間企業においても家庭用プリンターのインクカートリッジ再利用、ロジスティクスのパレット共通化など、3Rの旗の下に「リデュース(Reduce)」「リユース(Reuse)」「リサイクル(Recycle)」が推進されてきました。

ただし、それらは統制しやすい事業分野に特定されています。家電リサイクル法の対象は主に4つ。冷蔵庫、洗濯機、エアコン、テレビに限定されていますが、これにより省資源の単一素材の再生時代から複合素材の再生時代に一歩前進しました。一方で、負担を嫌がる一部の消費者や小規模企業による不法投棄にもつながりました。

今、時代が変わり始めています。企業は、ESGという投資家評価、先進国消費者動向に対応を迫られています。そんな中、すでに1企業での循環サプライチェーンマネジメント(以下、「循環SCM」という)は困難になったと言えるでしょう。

特に、流通ではECが急拡大したことから、流通経路からの資源回収が難しくなり、消費者の行動に依存するようになっています。また、資源の再生に関わるノウハウの“キモ”は不純物をいかに除外するかにありますが、新製品製造企業にそのノウハウがあるかは疑問です。政府・自治体の関与なくしては難しいと思われますが、稲垣さん、いかがでしょうか?

稲垣 おっしゃる通りです。メーカーとしては、循環SCMに適用しやすい製品の開発が求められています。そのためには、製品そのものから、作り方、運び方、使われ方、さらにリサイクルでの扱われ方までを包括的に設計する必要があります。

一方で、循環SCMを実現しながら、どのように収益を上げるかという、より高い視座に立ってのビジネスモデルの検討となると、1社単独で実現するのは容易なことではありません。たとえば、廃棄物処理や廃液処理。従来、これらは製造におけるノンコア工程としてアウトソースの検討対象となっていました。しかし、ESG経営の下では内製化すべきとの議論が出ています。

ただ、この領域は専門技術への投資も必要で、規模も求められます。そのため、資金の潤沢な一部大手企業を除けば、1社で賄うことは難しいでしょう。政府や自治体の関与が期待されるところです。また、企業としては自社開発やM&Aでの内製化よりも、大きなプラットフォームへの投資の形が望ましい場合も考えられます。これらのことを考えれば、投資のあり方が多様化する領域であると言えるでしょう。

III.サプライチェーン見直しに際した税務リスク対応

足立 こうしたサプライチェーンの見直しを実務的に進めていくためには、税務的な影響も考慮しなければならないと思いますが、いかがでしょうか?

藤原 ESGへの取組みは各企業において重要なトレンドとして認識されつつあります。いずれは、企業グループにおいてESGの価値観が共有され、今後より具体的に推進されていくことが見込まれています。

ここで注意しておきたいのが、税務イシューの発生です。企業経営はグローバル、しかし課税はローカルであるというのはよく言われることですが、これは課税権が国家主権の根幹をなすものである以上、仕方がありません。

多国籍企業の場合、移転価格税制によって、適切なグループ内の費用負担やグループ内で受けた便益に応じた対価の支払いが求められることになります。そして、移転価格税制は独立企業間において成立するであろう取引条件・価格条件で取引を行ったものとして課税するという原則(独立企業原則)に支えられています。ですから、グループとしてESGを推進していくという方向性が打ち出されたときのために、ESGへの取組みに係る意思決定のあり方や役割(費用)分担を税務の視点でも検討しておくべきでしょう。

また、整合的な費用負担や将来の受益の精算などについて独立企業原則に照らして検討し、あらかじめグループ内ポリシーを整理しておくことも重要です。それが将来の税務リスクの予防に役立つものと考えます。

神津 環境や人権問題などに対してESG経営の観点から企業としての対応を進める際、サプライチェーンへの影響という観点から言えば、調達部材の変更、場合によっては調達先そのものを変更しなければならない状況も想定されます。その際、このような変更が、たとえ短期的なコスト増加や効率性の悪化を伴うとしても、より高次の経営アジェンダであるESG対応として取り組むべきと判断することは合理的なのかもしれません。

しかしながら、このような変更に伴って、サプライチェーンコストにどのようなダウンサイドの影響が見込まれるのかという分析なくして、ESGという錦の御旗の下で直感的な経営判断を行うことは厳に慎まれるべきでしょう。

言い換えれば、ESGやSDGsなど、優先度の高い経営アジェンダに取り組む際にも、マネジメントがこのようなフリップサイドの影響も考慮したうえで適切な判断ができるよう、適時に定量的な分析と報告が行える管理体制を整えておくことが必要だと思います。

藤原 ESGを推進するにあたっては税務ガバナンスも重要になる、ということですね。

神津 既存のオペレーションの変更にあたって予期せぬ税リスクの顕在化を防ぐためにも、税務関連情報を可視化するとともに税務ガバナンス体制の充実化を推進することで、余計な税コスト発生を防ぐことが可能となります。裏を返せば、税務ガバナンスの向上により企業利益の増加が図られ、企業価値の向上や毀損防止につながるということです。税務ガバナンスを充実させること。それがESGに大きく寄与するということは言うまでもありません。

ただし、先に述べたとおり、将来不測の税務リスクを生じさせないために、グループとして推進するESGやカーボンニュートラルに代表される短期不経済になりかねない取組みについては、税コストへの影響など、フリップサイドの影響も踏まえながら、より慎重に行うことをお勧めします。

藤原 移転価格リスクマネジメントの観点で少し補足します。ESGや環境対応などの社内基準による行動要請があると、個々のグループ事業会社にとっては従前のやり方と比べて短期不経済になることが多いと思われます。

このような状況において、たとえば親会社が環境対応方針を強化した結果、損益が悪化したということであれば、「子会社の損益は親会社のガバナンスの結果であるから失った利益を補償すべきではないか」という趣旨で海外税務当局から移転価格に結び付けたチャレンジを受ける可能性も否定できません。あるいは、グループESG推進のために、海外の特定の製造会社に調達活動に係る追加的なコストが生じているにもかかわらず、その便益がグループで共有される、あるいは他の拠点において実現するといったことがあれば、現地税務当局によってある種の無形資産を認定されてしまう可能性もあります。

繰り返しになりますが、移転価格税制はグループではなく、単体企業の経済合理性に基づいた取引を税務上擬制するものです。したがって、ESGへの取組み費用やリスクの負担、将来の便益の供与の対価設定について、将来を見据えて前広に検討しておくことをお勧めします。

たとえば、ESGへの取組みはグループとしての企業価値を高める活動であるため、ブランド構築に近いものとしてブランドオーナーが費用を負担し推進する代わりに、将来はグループ企業にブランド料を課す想定を置く、などの理論的整理がなされることが望ましいケースも出てくるでしょう。したがって、ESGのようなグループ共益活動への貢献を測るKPIも、同時に検討されるべきかもしれません。

神津 関税と税務ガバナンスの観点では、部材の種類が変われば、税番分類(HSコード)の変更を伴う可能性があります。そして、分類が変われば、適用となる関税率にも影響します。また、サプライヤーが変われば、新たなサプライヤーから調達する物品の原産地の判断にも影響が生じる可能性がありますし、原産地が変更されれば、従来適用されていた自由貿易協定による特恵税率や免税が受けらなくなる可能性もあります。その場合、新たに適用可能となる貿易協定についても検討しなければなりません。

既存のサプライチェーンに関するこれらの情報、つまり部材や製品のHSコード分類、特定のサプライヤーから調達している部品などの原産地情報などが可視化できていなければ、サプライチェーンに変更が生じた場合に見込まれる影響額の定量分析ができず、経営判断の質にネガティブな影響を与えることにもなりかねません。ESGやSDGsなどを含む、いわゆるビッグ・イシューとしての経営アジェンダに対してマネジメントが質の高い意思決定を行うためにも、さまざまな想定シナリオに応じた定量分析が適時に実施できる情報の整備と管理体制の構築が求められます。

IV.ESGを推進するM&Aの動き

足立 ESGに限らず地政学の問題を含め、サプライチェーンの継続的な変化を求める要因が多い中で、意思決定の基盤としてのサプライチェーンの可視化が非常に重要であると理解いたしました。では、M&Aの観点からはいかがでしょうか?

稲垣 今、株価指数の算出や信用格付けなどのサービスを手掛ける企業が、ESG評価の専門会社を買収するケースが増えています。これは、それだけESG視点での企業評価が重要な金融情報となってきているということです。

企業側でも、自社のESG評価の向上を主な動機として、M&Aの検討を行うケースが増えてきています。これは、大きく3つに分類できます。1つ目は、ESG技術が進んでいる海外企業(ベンチャー)をM&Aをするケースで、技術を自社に取り込むのが目的となります。2つ目は、環境技術を持っていない海外企業を買収し、自社の高度な環境技術で買収した海外企業のバリューを上げるケースです。3つ目は、製造的なCO2 排出プロセスやビジネスの比率を相対的に下げる目的でM&Aをするケースです。また、製造業による炭素排出量の少ない業種の企業のM&Aも起きています。

一方で、今後ESGの視点でマーケットを捉えるとどの業界・地域が有望か、新規事業戦略を検討するうえでのクライテリアとしても、ESGの存在感が増しています。リスクマネジメントや評価される立場としてのESGだけでなく、より大局観を持った積極的な姿勢でのESGの検討も重要と考えます。

岡本さん、実際、M&Aの現場で起こっていることという観点ではいかがでしょうか?

岡本 はい。私からは、ディールプロセスにおけるESGの考慮についてお話しします。M&Aは、成長戦略達成のための事業投資の一手段です。そのため、中長期的な持続的成長に影響を及ぼすESGの観点がディールにおいても重要視されるのは必然と考えられます。対象会社や事業のESG対応レベルを統合上のリスクや機会と捉え、会社としてのESG方針、領域ごとの対応レベル、責任組織、システム利用などについて、インディールにおいても情報収集を行う必要があります。

これをESG-DD (デューデリジェンス)と捉えると、ESGに関連するDDは、これまでにも部分的には行われていました。工場における土壌汚染などは環境DD、労働法規順守状況は法務DD、意思決定体制・組織運営などは人事・ガバナンスDDです。これらも含め、ESGというより大きな切り口で評価することが求められています。

サプライチェーンの視点では、顧客、サプライヤーを含めたサプライチェーン上における脱炭素、環境負荷物質対応、人権侵害などが対象領域として挙げられます。ただし、対象ごとの重要度、対象とする項目は、業界によって異なってくるでしょう。たとえば食品業界では、人権やフードロス、自動車では脱炭素や環境負荷物質対応などといった形になります。

DDにおいて問題になるのは、限られた期間内に、対象会社から十分に情報が出てこないことです。現実的には、DDフェーズでは対応方針、対応方法について資料開示を求め、あるいは公開情報を確認したうえでマネジメントに確認します。そして、契約後クロージングまでの間に、具体的な資料、取引実績データなどを確認してPMIに向けた施策を検討するといったイメージになります。

特に、事業切り出しのケースでは本社から提供されているシステムやサービスがついてこない場合があるため、注意が必要です。他方、副次的な効果として、これまで通常出てこなかったシナジー評価などのために必要な情報(顧客別売上、主要サプライヤーとの取引状況など)が、ESG評価のために必要だという名目で入手しやすくなることが期待されます。

足立 ありがとうございました。ESGを進めるうえでサプライチェーンの見直しが中核的な取組みになることに加えて、ESGを1つのトリガーにして、サプライチェーンとそれを取り巻く経営そのものの高度化を図ることが大事であると、改めて認識いたしました。

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