公的施策の動向と地方創生サステナブルモデル

社会課題の潮流や公的施策の新たな視点を説明したうえで、KPMGジャパン ガバメント・パブリックセクターにおける当面の重点領域としての「地方創生」「ESG/SDGs」「デジタルガバメント」の施策の動向とKPMGの取組みをご紹介し、重点領域を連係させた「地方創生サステナブルモデル」を説明します。

KPMGジャパン ガバメント・パブリックセクターの当面の重点領域である「地方創生」「ESG/SDGs」「デジタルガバメント」と連係させた「地方創生サステナブルモデル」を説明します。

KPMGジャパンは、従来から活動をしていたパブリックセクター向けサービスラインの連携をより拡充させるために、2021年7月、ガバメント・パブリックセクター(G&P)として新たな活動を開始しました。今回は、社会課題の潮流や公的施策の新たな視点を説明したうえで、KPMGジャパン ガバメント・パブリックセクターにおける当面の重点領域としての 「地方創生」「ESG/SDGs」「デジタルガバメント」について、施策の動向とKPMGの取組みをご紹介します。

また、これらの重点領域を連係させた評価モデルとして、KPMGにて検討している「 地方創生サステナブルモデル」をご説明します。

なお、本文中の意見に関する部分については、筆者の私見であることをあらかじめお断りいたします。

POINT 1 地方創生
地方創生の実現に向けた主な公的施策として、PPP/PFI、サステナブルなまちづくり・スマートシティ、そして地域医療提供体制の改革について、その動向とポイントを解説する。

POINT 2 ESG/SDGs
ESG/SDGsのなかでも、脱炭素社会への移行を中心に政策動向や関連するファイナンス、そしてKPMGの取組みについてご紹介する。

POINT 3 デジタルガバメント
2021年5月に参議院本会議で可決されたデジタル改革関連6法案について、当法案の施行により何が変わるのか、また、その変化に対するKPMGの取組みについて解説する。

POINT 4 地方創生サステナブルモデル
「地方創生」「ESG/SDGs」「デジタルガバメント」を含めた各種政策・施策が税収などにどの程度寄与しているのか、それを可視化すべくKPMGがモデル構築を進める「地方創生サステナブルモデル」について解説する。

小林 礼治

KPMGジャパン ガバメント・パブリックセクター統轄パートナー/あずさ監査法人 常務執行理事/公認会計士

あずさ監査法人

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I.はじめに

(1)社会課題の潮流

昨今、公的施策を実施するうえで、中長期的な視点から社会課題の解決を図っていくことがますます重要となっています。近年の社会課題としては、国内に注目すると少子高齢化、インフラの民営化・老朽化対策、気候変動への適応、デジタル化への対応、医療・介護の充実、女性の社会進出などが挙げられます。国内のみならず発展途上国にも視野を広げると、人権問題、貧困の削減、都市への人口集中といった課題もあり、世界は多種多様な社会課題を解決していくことが求められていることがわかります。

今後の日本は、少子高齢化と労働人口の減少を起因として、財源となる税収が減少していくことも想定されます。これは、社会課題の解決に充てるための財源を十分に確保することができない可能性があるということです。しかも、その傾向は、地域的条件や事象が生じる時間軸の差異により、地域間でも相違が生じるものと考えられます。たとえば、都市化が進む地域と過疎化が進む地域とでは人口構成が大きく異なります。これは財源や歳出の内訳に顕著な差異が生じるということで、自治体レベルで見ると、労働力低下の影響をさほど受けずにある程度財源を確保・維持できる自治体と、早期から財政的な逼迫に直面する自治体が出現する可能性があるということを示します。

加えて、昨今の新型コロナウイルス感染症、自然災害やサイバー攻撃のようなエマージングリスクに対する備えも自治体レベルで図っていく必要があります。エマージングリスクとは、一般的に現存もしくは認識していないが、外部環境の変化などにより出現もしくは想定が大きく変化する新興リスクのことです。たとえば、気候変動の影響をとっても、それが新たな感染症の出現や熱中症の増加、もしくは想定外の災害発生などの要因になることが考えられます。

(2) 公的施策の新たな視点

このように、今後、社会が直面していく課題には、今まで経験したことがない新たな事象に起因するもの、課題間における相互依存関係や発生経路が複雑化しているもの、発生自体に不確実性が伴うものなど、さまざまな特質があると考えられます。これらの関係性を事前に整理して施策立案を行い、課題解決を図っていくことができれば、効果的な施策の実行ができますが、これを実際に行うのは困難を伴うと予想されます。

特に、かつてのような大幅な経済成長が見込まれない現状では、全体最適の観点から重点的に取り組むべき課題を絞り込み、限られた資源を効果的かつ効率的に課題解決のために振り向けていくことが肝要となります。これは、単に過去の政策の延長線上に財源を配分するということではありません。中長期的な観点から将来の動向を予測し、資源配分の意思決定をしていくということです。それが実現できれば、持続的な地域社会の発展にも寄与していくことができるでしょう。

このような問題意識から、施策立案に際しては、バックキャスティングによるシナリオ分析の手法を取り入れることが有用になると、KPMGでは考えています。バックキャスティングとは、「ありたい姿」としての未来を予測し、その姿に向かっていくために今なすべき解決策を思考するという手法のことで、未来の考察に際しては、複数のシナリオを想定して分析することが望まれます。また、複雑かつ相互に関連する社会課題の関係性を可視化していくことも必要になると考えます。実際に自治体における政策立案でも、バックキャスティングの手法を元に検討する事例が見受けられます。

(3)3つの重点領域

このような社会課題の潮流や公的施策に関する動向を踏まえて、KPMGでは従来から活動をしていたパブリックセクター向けのサービスラインを一層連携させるために、2021年7月、ガバメント・パブリックセクター(以下、「G&P」という)として新たに活動を開始しました。G&Pでは、当面、以下の3つを重点領域と位置付け、活動を行っていくこととしています(図表1参照)。

  1.  地方創生
  2.  ESG/SDGs
  3.  デジタルガバメント
図表1 3つの重点領域と社会課題(イメージ)
公的施策の動向と地方創生サステナブルモデル_図表1

これらは、令和3年6月18日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2021」(以下、「基本方針」という)とも整合しています。基本方針にも記載がある「グリーン社会の実現」「少子化の克服」「デジタル化」「活力ある地方創り」というテーマは、各重点領域にも関連しています。

以下、各領域における施策動向とG&Pの取組みについて説明します。

II.地方創生

人口急減・超高齢化の進展、将来の地域社会の存続危機という課題意識を受け、2014年に「まち・ひと・しごと創生長期ビジョン」が策定され、地方創生は日本の重要政策として、さまざまな施策が実施されてきました。地方への人口回帰、経済活性化といった目に見える効果の発現にはまだ時間がかかるかもしれませんが、首都圏の企業が地方の活性化プロジェクト(AI・DXを活用した新産業創出、地方公共交通や観光支援など)に積極的に関与する事例が見られるようになりました。また、若い世代も地方創生や地方移住への関心が高まるなど、地方創生の潮流は定着しつつあると言えるでしょう。

地方創生の実現に向けた主なテーマとしては、「行政マネジメントの高度化」「地域活性化事業」「サステナブルなまちづくり・インフラ・市民向けサービス提供」等が想定されます(図表2参照)。これらのテーマは、地域の経済活性化や生活基盤の維持・充実という公共的な目的を、民間的な手法や資金を活用することで達成するものであり、地域の官民学金の各ステークホルダーが相互に連携して取り組む必要があるものです。そのためには、目的達成に向けて、新たな手法・テクノロジーを活用しつつ、各ステークホルダーの利害を合理的に調整するような仕組みが重要になります。以下、主な地方創生プロジェクトの促進に向けた課題について説明します。

図表2 地方創生の実現に向けた主なテーマ
公的施策の動向と地方創生サステナブルモデル_図表2

(1)PPP/PFI

PPP(Public Private Partner)、PFI(Private Finance Initiative)は、民間の資金とノウハウを活用して、公共事業や公共施設の建設・維持管理・運営等を行うという手法です。日本では指定管理制度や公共施設へのPFIなど、多くの導入実績があります。特に近年では、空港・水道・道路等の利用料金の徴収を行う公共施設に対して、コンセッション方式の導入が進んでいます。今後、コロナ禍で厳しさを増す財政状況を踏まえて、PPP/PFIの一層の促進を図る観点から、以下のような取組みが想定されます。

  • 適用対象拡大:再生可能エネルギー導入・DX導入への活用
  • 新たな施設マネジメント(自治体枠を超えた公共施設管理の広域化、異なる種類の公共施設の包括民間委託など)に併せたPPP・PFIの導入
  • 新たなPPP・PFIスキーム:コロナ禍のような事業リスクへの対応、独立採算が困難な収益施設への混合型コンセッションの導入、公共施設の運営・維持管理における民間事業者へのパフォーマンスに応じた対価反映等

(2)サステナブルなまちづくり・スマートシティ

地方都市は、住民の少子高齢化、中心市街地の空洞化、公共交通等の継続困難性等の課題を解決するため、サステナブルなまちづくりを目指す必要があります。

具体的な取組みとしては、下記が挙げられます。

  • コンパクトシティによる人口規模に合わせた市域の見直し
  • 中心市街地のにぎわいを取り戻すための歩行者回遊性の向上(歩道・広場・公園整備)や商店街の再生
  • 文化・スポーツ・自然環境等の生活水準の向上による住民増等

まちづくりにあたっては、官民が連携しながら、地域の強みや機会を活かした取組みを長期にわたり継続する必要があります。

また、スマートシティやMaaS(Mobilityas a service)といったテクノロジーを活用することで、地域課題を解決しようとする取組みも行われています。MaaSで言えば、経路探索・予約などのサービス提供、オンデマンド型などの新たな交通体系の提供、エリアスポンサーからの運営コスト負担を組み合わせた新たな公共交通モデルに向けた検討が進められています。

スマートシティなどは現在、補助金を財源とした実証実験段階に留まっていることが多く、継続的なビジネスモデルを確立することが求められています。そのためには、スマートシティに係るベネフィットとコストを可視化し、ベネフィットを受けるステークホルダーから幅広く収益を徴収する仕組みと、データ利活用のさらなる可能性を検討する必要があります。

(3)地域医療提供体制の改革

医療提供体制の改革には、「地域医療構想の実現」が必要であり、公立病院などを中心とした病床機能の再編(高度急性期・急性期病床の削減、回復期病床の増床)が計画・実行されています。当該再編により、地域において必要な医療が安定的に提供されることになり、地域包括ケアシステムの実現も可能となります。

2025年に向けた病床機能の再編は、新型コロナウイルス感染症の拡大により、その実行が遅れているものの、現状の感染者の受入れ病床数の不足などにより、その必要性はより明確になりました。したがって、今後は再編の検討が加速することが推測されます。そのなかで、多くの公立病院が、より弾力的・自律的な経営が可能となる地方独立行政法人に移行するなど、経営形態の見直しを検討することも考えられます。

上記のような地方創生に係る各プロジェクトについて、G&Pはその専門的知見を活かし、各種事例調査、導入可能性調査、PMO、財務シミュレーション、事業スキーム検討・公募支援等について、行政および民間双方に対する検討支援を提供いたします。

III.ESG/SDGs

脱炭素社会への移行は、欧州を中心に世界各国で目標数値が設定されています。日本でも2021年4月に、菅前首相が地球温暖化対策推進本部で、「日本の2030年度の温室効果ガス排出量を13年度比で46%削減する。同時に50%(削減)の高みに向けて挑戦を続ける」と宣言しました。

この宣言は、わが国の長期目標にもなっている2050年カーボンニュートラル(温室効果ガスの排出を実質ゼロとすること)に平仄を合わせるものです。しかし、経済産業省の現実的試算の上限である30%台後半に官邸目標を積み上げたきわめて野心的な目標となっており、現時点でその達成に向けた明確な道筋は確立されていません。

政治的動向にも多分に左右されたであろう目標数値ですが、これを実現するためには、既存技術の延長線上を超える「飛躍的な技術的・社会的イノベーション」が不可欠です。加えて、国内産業競争力を損なわない政策立案も欠かせません(図表3参照)。

図表3 サステナビリティの潮流と官民に求められる取組み
公的施策の動向と地方創生サステナブルモデル_図表3

「飛躍的なイノベーション」の実現に向けた政策遂行においては、巨額、かつ長期的な公的財源の投入のみならず、国内外の民間ESG投資資金の国内市場への呼込みが重要であることは言うまでもありません。また、この国家的プロジェクトがもたらす政策効果の最大化、たとえば地方創生や新たな成長産業育成もまた重要な政策論点となります。

こうした流れを踏まえ、G&Pでは官公庁、自治体に向け、以下のようなサービスを提供しています。

  • ESG投資、グリーンボンド等の国内外市場規模推計
  • ESG投資促進施策調査(情報開示、格付・スコアリング)
  • 海外政策・規制・市場動向調査、政策の地域経済への波及効果分析
  • 既往のイノベーション施策(研究開発税制等)の効果検証と改善の方向性検討

一方、企業セクターにおいても、経団連の「企業行動憲章」、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)のESG指数連動型長期投資方針の表明、会計数値の企業価値説明能力の低下(Baruch Lev et al2016)等、政治的・社会的要請からESG/SDGsは無視できなくなっています(図表3参照)。

近い将来、リスクとリターンが中心であった従来の企業価値評価指標に、「サステナビリティ・インパクト」が加わることは疑いがありません。そしてそれは、プラスαの要素としてではなく、実質的な経営指標として、ステークホルダーに対する説明責任が求められるものとなるでしょう。

G&Pは、官公庁・自治体向けサービスで蓄積した知見・ノウハウを活用し、民間企業の経営戦略・リスク管理戦略の立案支援、企業活動のインパクト評価支援等のサービスも提供します。たとえば、

  • 国内外のESG/SDGs関連需要・技術・規制の変化を踏まえた市場のメガトレンドの予測、事業の機会と脅威の把握
  • 企業のESG情報開示の向上のためのロジック検討
  • 事業の経済的・社会的インパクト評価、波及効果の推計

などが挙げられます。

言うまでもなく、今日のESG重視の潮流は、日本のみならず全世界的なものです。しかし、SDGsを公的資金のみで達成することは不可能であり、それを上回る規模の民間資金の動員が必要と見られています。また、開発途上国など投資リスクの高い地域でのESG投資への民間資金動員には、開発金融などの公的資金を触媒として活用する「ブレンデッド・ファイナンス」の動きが拡大しています。

日本でも技術協力の提供や開発援助資金の戦略的活用などを通じ、新興国・開発途上国におけるESG投資環境を整備するとともに、国内投資家・企業によるESGプロジェクトへの参画機会を拡大するためのさまざまな取組みが進められています。G&Pでも、以下のようなサービスを通じ、これらの取組みを後押ししています。

  • 開発途上国における再生可能エネルギー導入促進、脱炭素社会構築に向けた戦略・支援策の検討
  • 日本企業による海外ESG事業の形成に関する助言
  • ブレンデッド・ファイナンスなどESG投資向け金融スキームの検討

IV.デジタルガバメント

2021年5月12日、デジタル庁設置法案を含むデジタル改革関連6法案が参議院本会議で賛成多数で可決されました。これにより、これまで諸外国と比較して圧倒的に遅れていた行政のデジタル化に向けた動きが加速することとなります。そこでここでは、当法案の施行により何が変わるのか、また、その変化に対してG&Pはどのような支援ができるのかについて説明します。

2001年のe-Japan戦略を皮切りに、これまで電子政府の実現に向けた政策が推進されてきました(図表4参照)。

図表4 行政のデジタル化の経緯
公的施策の動向と地方創生サステナブルモデル_図表4

今回の行政のデジタル化に向けた動きは、以下の3点に関して、従来と大きく異なります。

1点目は、これまでの行政視点・手段重視の電子化から、国民視点・目的重視でのデジタル化に向かおうとしていることです。過去の電子政府プロジェクトでは、紙で行われていた処理をオンライン化・電子化することに主眼が置かれ、国民の利便性向上は二の次となることがありました。その結果、オンライン化したはいいが、ほとんど利用されず、という残念な結果となっていました。その反省を踏まえ、今回のデジタル化では、国民が行政サービスを利用する目的にフォーカスしています。具体的には、業務プロセス全体を抜本的に見直し、その過程でデジタル技術を活用する、という方針で推進されているというわけです。こうした方針は民間では当たり前ですが、行政の世界では特筆すべき変化であると言えます。

2点目は、共通化・標準化を大胆に進めようとしていることです。各省庁での縦割り行政の弊害は情報化への二重投資等を生んでいます。また、横並び意識は強いものの、自前主義の強い自治体では、他自治体と大きな差異のない業務においてさえ自前のシステムを整備し、それにより多額のコストを負担しています。今回の法案では、各省庁が握っていた情報化投資予算をデジタル庁に集約、コントロールタワーとして投資の適正化を図るとしています。また、自治体に対しては共通的な業務を選定のうえ、同業務を支援するシステムの標準化・共通化を推進するとしています。これまで都度議論の俎上にはあがっていた内容ですが、法案として明記されたことは特筆すべき点と考えます。

3点目は、民間・外部サービスの有効活用という観点です。デジタル庁には多くの民間人材が登用されました。また、これまで自前で構築していたシステムについても、クラウドベースで有用なものがあれば積極的に活用していくとしています。これにより、デジタル化の進展速度が民間並みに早くなることが予想されます。

このように、これまでの政府の電子化に向けた動きと異なり、抜本的な変革が想定される今回のデジタルガバメントの動きに対して、G&Pでは以下の点について関与を深めていきます。

まず、地方自治体のシステム共通化・標準化に関する構想策定や推進支援への関与です。当施策には利害がぶつかるステークホルダーが数多く存在することから、方針策定や推進において強力な舵取り役が必要となります。これは、数多くの大型案件をコントロールしてきた我々の経験が生きる領域です。

マイナンバーの活用範囲の拡大に関する施策への貢献も可能です。マイナンバーの早期拡充・利用用途拡大は、デジタルガバメントの確立に向けた要とも言えるものです。現在、社会保障・税・災害対応の3分野に限定されている活用方法の拡大を推進していくには、国民の利便性向上、行政の効率化、個人情報保護・セキュリティなど、相反しかねない複数のミッションとの最大公約数を導き出す必要があります。MC(攻め)とRC(守り)のアドバイザリー機能を持つ、我々の強みが活かせる領域と考えます。

最後に、地方自治体や準公共分野(教育・医療等)のDXの支援です。直接的に国民と接点を持つ地方自治体や教育・医療分野でのDXの促進は、国民が利便性を感じるうえで非常に重要なウェイトを持ちます。国民視点での業務・組織・制度の抜本的な見直しが必要となる領域でもあり、我々のアドバイザリー経験が最も生きる領域と言えます。

今回のデジタルガバメントの動きが、これまでの電子政府化に向けた一連の動き同様、骨抜きの政策にならないよう、我々G&Pとしても積極的に官公庁・自治体を支援していきたいと考えています。

V.地方創生サステナブルモデルの活用

このように地方創生、ESG/SDGs、デジタルガバメントなど、これから行政が実施すべき政策・施策は多岐にわたります。これらにおいて重要なことは目的の実現、そして成果の創出です。

昨今、行政の世界ではEBPM(Evidence Based Policy Making)というワードが躍っていますが、これも、これまではあまり重視されてこなかった“成果”を重視すべきという示唆であると言えます。

一方、行政には持続可能性、すなわち「サステナブル」の視点の組み入れ余地がまだ多く残されています。さまざまな政策・施策は、継続的かつ安定的に実施されて初めて意味のあるものとなります。民間企業であれば、一定期間に利益を出さない事業は継続することができず、撤退することとなりますが、行政の世界においては、利益の創出いかんによらず、国民の税金事業が継続されることがしばしば発生します。しかしながら、高齢化などにより行政にかかるコストは増加し、少子化・労働人口の減少により税収は減少傾向にある現状を鑑みると、“サステナブル”は非常に重要なキーワードとなりつつあると認識すべきと言えます。

行政における“利益”とは、税収などと読み替えることができます。つまり、さまざまな政策・施策がどの程度税収などの増加に寄与したのか(しているのか)を見極めていくことが、これからはより重要となってくるのです。

G&Pでは、各種政策・施策が税収にどの程度寄与しているのかを判断するために、「地方創生サステナブルモデル」というモデルの構築を進めています。たとえば、住民税は住民数×住民所得、住民数の増加は自然増(出生者数-死亡者数)と社会増(転入者数-転出者数)で決定します。死亡者数を減らすためには医療環境の整備等が、転入者数を増やすためには、地域環境の整備や就労・就学機会の増加等が必要となります。これらを相関関係のある事象として結び付けたモデルが「地域創生サステナブルモデル」です(PDF P.7 図表5参照)。G&Pでは、今後、ESG/SDGs、地方創生、地方DX等の各種施策を提案する際に当モデルを活用し、施策のサステナブル観点での成果をアピールしていこうと考えています。

前述のとおり、今後の社会課題は多種多様なものとなっています。これら社会課題を解決していくには、地方創生サステナブルモデルなどのバックキャスティング手法を有効活用しながら、各課題におけるステークホルダーの意向を組みつつ、官民連携の強化と新たな取組みの推進をしていくことが不可欠となります。

KPMGでは、G&Pの活動を通じて、社会課題の解決とより良い社会の実現に今後も寄与していきたいと考えています。