欧州における義務的開⽰ルール(DAC6)の概要と⽇系企業における留意点

月刊「国際税務」7月号に寄稿された記事を紹介します。

月刊「国際税務」7月号に寄稿された記事を紹介します。

この記事は、月刊「国際税務」2021年7月号に掲載したものです。

発行元である国際税務研究会の許可を得て、あずさ監査法人がウェブサイトに掲載しているものですので、他への転載・転用はご遠慮ください。

2018年欧州連合(以下、EU)は、EU指令2011/16 を修正する形で、特定の国境を跨ぐ取引に係る税務上のアレンジメントについて義務的開⽰を規定するEU指令(EU理事会指令2018/822)、通称、DAC6指令(Directive Administration Cooperation number 6:報告対象クロスボーダーアレンジメントに関する税務分野における義務的情報開⽰及び⾃動情報交換)について合意している。DAC6指令は、特定の仲介者(以下、4.(1)を参照)及び納税者(以下、4.(3)を参照)に対して、EU加盟国の税務当局に「報告対象クロスボーダーアレンジメント」を報告することを義務付けており、アグレッシブなタックスプランニングに該当する可能性のある取引等を報告する必要がある。仲介者⼜は納税者からの情報開⽰後、当該情報は集中管理⽤データベースを経由して、四半期ごとに他のEU加盟国の税務当局と⾃動的に交換されることとなる。DAC6指令の目的は、潜在的にアグレッシブなタックスプランニングに該当し得る取引等に係る情報を早期に税務当局側で把握することにある。

報告義務を負う可能性が⽣じる⽇本の仲介者は、⼀般的にEUの「ネクサス(EU域内における経済的関連性)」を⽋いているため、EU加盟国の税務当局に対象取引を報告する義務はないが、EU域内における経済的関連性を有する多国籍企業、つまりEU域内に税務上の居住者と⾒なされるEUエンティティ(オランダにおいてはいわゆる非公開会社となるB.V.やオランダにおける恒久的施設(PE)などが含まれるものと考えられる)がある場合は、DAC6の報告義務が適⽤される場合がある。EUエンティティが、EUネクサスを⽋く仲介者(例えば、⽇本の仲介者)によって「アドバイス」された報告対象クロスボーダーアレンジメントを実施する場合、または「内部」で独⾃に検討の上、アレンジされた報告対象クロスボーダーアレンジメントを実施する場合は、EUエンティティは常に⾃らが当該アレンジメントを報告する義務を負う。仮に報告対象取引について報告を実施しない、⼜は要求される期限内に報告を⾏わない、若しくは事実と異なる報告がされた場合は、厳格な罰則規定が適⽤される可能性があるため、注意する必要がある。罰⾦額は、EU加盟国ごとで⼤きな幅があり、例えばポーランドでは最⼤EUR2.5百万に達する可能性がある⼀⽅、フランスでは最⼤EUR1万となっている。DAC6指令については、全てのEU加盟国において、各国で当該指令に対応する法律を制定することが求められているが、DAC6指令内の専門⽤語について同指令内で明確に定義されておらず、⼀定の解釈の余地が⽣じる部分がある。従って、EU加盟国間で各国内法による同制度の実装にあたり、取扱いの相違が⽣じる可能性があり、⼀⽅のEU加盟国において報告不要であるものの、他⽅のEU加盟国においては報告対象と⾒做される可能性がある。

本稿においては、DAC6が与えるEUエンティティへの影響の⼤きさを踏まえ、可能な限りオランダにおけるDAC6に関する実務執⾏状況を含め、DAC6指令における専門的な取扱いについて解説を⾏うこととする。⼀定のアレンジメントがDAC6指令の下で報告対象クロスボーダーアレンジメントに該当するか否かを評価するにあたり、以下の4つのステップに従うことが推奨されることから、本稿においても以下のステップに応じて、⽇系グローバル企業にとって重要なDAC6の検討事項について詳説することとする。

i.クロスボーダーアレンジメントの定義の確認及びクロスボーダーアレンジメントに該当するか否かの判断
ii.当該クロスボーダーアレンジメントが報告対象であるか否かの判断
iii.報告義務者の判断
iv.報告対象クロスボーダーアレンジメントの報告時期及び報告内容

本記事は以下よりPDFにてダウンロードいただけます。

執筆者

Meijburg&Co.(KPMGオランダ) GJPシニアマネージャー 宮本健⼀
Meijburg&Co.(KPMGオランダ) パートナー Cees van der Helm
Meijburg&Co.(KPMGオランダ) シニアマネージャー Arichi Mohamed
Meijburg&Co.(KPMGオランダ) タックスコンサルタント Willem Hermans
 

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