ブロックバスター薬の特許期間満了により、ジェネリック医薬品の売上は2014年から2019年にかけて年間5.7%の増加を記録しました。2019年には、米国で年間売上高が合計約80億ドルに相当する医薬品の特許期間満了が発生し、それらのジェネリック医薬品を創出する機会が開かれています。今後も2025年までは年平均成長率5.4%および売上高4,970億ドル程度の成長が維持される見込みです。

しかしジェネリック医薬品の需要が増加する一方で、価格設定に関しては、購買企業が企業間の統合を進めて影響力を強めています。その結果、供給者の利益に対する圧力が高まり、一部のメーカーは不採算ジェネリック医薬品の生産を中止することを選択しています。さらに、コロナ禍によるサプライチェーンの混乱は、製品の供給不足のリスクをもたらしました。

本稿のポイントはつぎのとおりです。

  • ジェネリック医薬品に対する需要は今後も堅調に推移し、特許期間満了の次の波により、さらなるジェネリック医薬品の創出機会が生じると予想される
  • 価格決定力を強く制限されており、それに加えて競争も激しいことから収益性の低下に直面したジェネリック医薬品メーカーがコスト削減策を実施している。価格だけでなく品質やパンデミックの問題によってグローバルなサプライチェーンが混乱すると生産はより影響を受けやすくなる
  • ジェネリック医薬品業界の下降スパイラルを止める3つの変革シナリオとして、「規模と卓越性の追求」「中間業者の排除」「より価値の高いジェネリック医薬品の開発」が挙げられる

機会の定量化

ジェネリック医薬品使用率は米国が首位を占め、2019年の数量ベースの使用率は90%に達しました。これまでジェネリック医薬品の使用率が低かった他の国々でも、医療費の増加によりジェネリック医薬品の使用が増加しています。日本における使用率は過去10年間で30%から68%に増加し、2020年末には80%に達する見込みです。

図1:ジェネリック医薬品使用率は米国が首位(2019年時点)
図1 ジェネリック医薬品産業の展望2030

今後もブランド医薬品の特許期間満了は続き、特許期間が満了した低分子医薬品の総数は2020年から2026年の間で190から383に倍増します。これはジェネリック医薬品メーカーに重要な機会をもたらし、特に腫瘍治療薬、中枢神経系治療薬、全身性抗感染薬などの医薬品には、他の医薬品よりも大きな潜在的機会があります。

課題の分析

米国では、三大卸購買コンソーシアムによるジェネリック医薬品購入量が全体の約90%を占めるため、こういった大規模購買者が医薬品価格の引き下げに向けて大きな圧力を行使することができます。そのため、多くのジェネリック医薬品メーカーは、米国という世界最大の市場での価格決定力を強く制限されており、それに加えて競争も激しいことから収益性に大きな影響を受けています。

図2:ジェネリック医薬品メーカーは利益率の低下に直面
図2 ジェネリック医薬品産業の展望2030

ジェネリック医薬品企業の大半は利益を維持するために、生産をより安価な市場に委託する傾向にあります。しかし低コストのオフショア生産ではリスクも生じています。2018年から2019年の間に発行された米国食品医薬品局(FDA)警告書の49%、欧州医薬品庁(EMA)コンプライアンス通知の64%がインドまたは中国の生産設備に対するものでした。製薬企業が品質上の課題に取り組む中、コンプライアンス違反によって米国および欧州への供給が妨げられる可能性があります。また同時に、中国およびインドの製薬企業の成長によってジェネリック医薬品の価格は世界中でさらに低下しています。長期的な価格低下に直面し、一部のメーカーは収益性の低いジェネリック医薬品の製造を中止することを選択しており、その結果、供給不足により患者の需要が充足されなくなる可能性があります。

下降スパイラルを止める3つの戦略

現状のままでは、ジェネリック医薬品業界でのコモディティ化と収益性の低下が続くと考えられます。KPMGはこのような状況を変える可能性がある3つの変革シナリオを特定しました。

1.規模と卓越性の追求(水平統合)

大規模な購買コンソーシアムとより効果的に交渉が行えるよう、ジェネリック医薬品メーカーも合併や買収による規模の拡大を検討します。こういった統合は長期的な事業継続を可能にする交渉力と規模をもたらすため、中小企業にとって極めて合理的な選択となる可能性があります。

2.中間業者の排除(垂直統合)

ジェネリック医薬品メーカーは、販売会社の買収または自社流通機能の構築により、バリューチェーンにおいてさらなる収益を獲得することができます。また、原薬の製造能力を取得することで原薬供給者への依存度を低減し、不安定な時期におけるリスクを軽減します。

3.より価値の高いジェネリック医薬品の開発(イノベーションへの注力)

同一のジェネリック医薬品に集中するのではなく、特殊ジェネリック医薬品、付加価値ジェネリック医薬品、バイオシミラーといった、より高い収益性が期待できる医薬品の開発に投資します。

いずれの戦略もジェネリック医薬品市場の現在のダイナミクスを変える可能性がありますが、投資ニーズ、リスクおよび成長の可能性の点では大きく異なります。

結論:焦点を絞った介入

ジェネリック医薬品市場において成長を続けるために、各企業は自社が有する財務的な手段と能力を評価し、独自の戦略的な対応策を策定しなければなりません。対応策は、最終的には上記3つの戦略のいずれか、または、それらを独自に組み合わせたものとなる可能性もあります。ジェネリック医薬品業界が今後直線的に発展する可能性は低いため、KPMGは動的なシナリオ・シミュレーションを利用して必要なトレードオフとリスクを把握することを推奨します。企業は最終的な決定を下す前に次の準備手順を実施する必要があります。

  • 買収ターゲット候補の状況と、それらの状況において新たな疾患や地域に参入することは可能であるかどうかを分析する。
  • 原薬製造への後方統合に関連した政府のインセンティブを適宜把握するためのプログラムを実施する。
  • 自社が「革新的な企業」と「効率的な企業」のどちらとなるのに適しているかを判断し、今後10年間の研究開発における優先事項を示す適切なロードマップを作成する。ジェネリック医薬品市場において成長を続けるために、各企業は自社が有する財務的な手段と能力を評価し、独自の戦略的な対応策を策定しなければなりません。対応策は、最終的には上記3つの戦略のいずれか、または、それらを独自に組み合わせたものとなる可能性もあります。ジェネリック医薬品業界が今後直線的に発展する可能性は低いため、KPMGは動的なシナリオ・シミュレーションを利用して必要なトレードオフとリスクを把握することを推奨します。企業は最終的な決定を下す前に次の準備手順を実施する必要があります。
  • 買収ターゲット候補の状況と、それらの状況において新たな疾患や地域に参入することは可能であるかどうかを分析する。
  • 原薬製造への後方統合に関連した政府のインセンティブを適宜把握するためのプログラムを実施する。
  • 自社が「革新的な企業」と「効率的な企業」のどちらとなるのに適しているかを判断し、今後10年間の研究開発における優先事項を示す適切なロードマップを作成する。

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