カタールで導入予定のVATについて

2021年2月5日に配信しました中東ニューズレターを掲載いたします。

2021年2月5日に配信しました中東ニューズレターを掲載いたします。

カタールにおけるVAT税率は広く5%が適用される見込みです。一部の金融や保険サービスを除き、VAT導入により直接、または間接的に多くの産業に影響が生じます。ただ、VAT登録をすることにより支払ったVATを税額控除できるなど、考慮しなければならない点も数多くあります。

要点は下記の通りです。

  • VAT導入スケジュール:2021年中にVAT法が公表される予定です。
  • 対象業者:カタールにおいて課税取引を行うもので年間の課税売上が36万4千カタール・リヤルを超える場合、VAT登録が必要です。
  • VATはコスト増となるのか:VATは取引の各段階で課せられますが、支払ったVATは税額控除できる場合が多いので、即コスト増となることはありません。
  • 税率:5%の標準税率または0%の軽減税率が適用されます。
  • 対象取引:一部の金融サービスや不動産取引については非課税となります。
  • VAT税額計算:カタール政府にVATを納税しなければならない場合、自己申告します。VAT金額が正しいことを証明するため、必要な書類を備え置き、VATに関する情報が正しく記録され計算されるITシステムを使わなければなりません。虚偽の計算や申告は金銭的なペナルティの対象となります。
  • VAT計算期間:1ヵ月以上となっていますが、GCC内においては各国が独自に期間を延ばすこともできます(カタールのVAT法案はまだ提示されていないため、延ばすことができるかどうか、現時点では明確ではありません)。
  • 税額控除:非課税取引のために購入・利用した物に対するVATは、税額控除に利用できません。一方、課税取引と非課税取引の両方に使われるような場合には、一定の按分計算をすることになります。
  • 課税場所:カタール国内で物品の売買がされる場合や、カタール国内の居住者間でサービスの提供が行われる場合、課税場所はカタール国内となり、通常カタールのVAT5%が課せられます。一方、GCC諸国内での取引(例えばカタールのサプライヤーがオマーンの顧客に物品を売却する場合)の場合、GCC内取引となり、リバース・チャージ・メカニズムのもとにVATが課せられます。リバース・チャージ・メカニズムでは、顧客側がサプライヤーに代わってVAT納税とVAT申告の義務を負います(※リバース・チャージ・メカニズムではない通常の場合は、サプライヤー側がVATを徴収してそれを納税、申告します)。すなわち、オマーンの顧客が当該VATを報告し、カタールVAT申告書において当該VATを税額控除します。
  • カタール国内のサービスの受取り手が他のGCC諸国における課税業者でない場合(個人など)、カタール国内でのサービス提供であればカタールVATが適用されます。GCC地域以外から物品を購入した場合には5%のVATが課せられ、カタール関税当局に支払うことになります。GCC地域以外の国からサービスを受けた場合にはリバース・チャージ・メカニズムが適用されるため、VATを直接税務当局に支払います。
  • 取引種類:非課税売上のために購入した物品に係るVATは税額控除できませんが、軽減税率である0%が適用される売上のために購入した物品に係るVATは仕入税額控除できます。例えば、非居住者に対する物品の輸出やサービスの輸出、医薬品や医療関係の器具、国際輸送サービスがこれに該当します。
  • 非課税取引:非課税取引はVATの対象外のため、非課税売上のために係った支払ったVATは税額控除の対象外となります。これには一部の金融サービスや居住用土地・建物取引等があります。その他教育や健康、不動産、国内輸送取引について非課税や軽減税率とすることも認められています(カタールのVAT法案はまだ提示されていないため、この点について現時点では明確ではありません)。
  • 不課税取引:そもそも不課税のためVAT申告書に記載が必要ない取引として、政府に対する法定の料金や寄付、ペナルティなどが挙げられています。
  • Tax Invoice:正確なTax Invoiceは、支払ったVATを仕入税額控除するための証拠となるため、VAT計算においてはもっとも重要です。Tax Invoiceにはサプライヤーや物品・サービス、取引金額、顧客に関するさまざまな情報が記載されている必要があります。

以上を踏まえ、VAT導入前に以下の対応が必要となります。

  • 現行ビジネスにどのような影響があるか特定する。
  • VATの導入により製品価格にどう影響するのかを分析する。
  • 既存のITシステムでVATに対応できるのか分析する。
  • 既存の契約書の文言を変更する必要があるかどうかを分析する。
  • サプライヤーへの支払いのタイミング、顧客からの受取のタイミング、そして税務当局への納税のタイミングを考慮して、VAT導入によりキャッシュ・フローにどのような影響が出るのか分析する。
     

KPMGカタールではVAT導入に関するさまざまなアドバイスを提供しておりますので、サポートが必要な場合はぜひご連絡ください。
 

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