「コロナ時代のBCP」第6回。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)や米中貿易摩擦などによる、サプライチェーンリスクに対する管理や低減していくためのポイントについて解説します。本連載は、日経産業新聞(2021年4月~5月)に連載された記事の転載となります。以下の文章は原則連載時のままとし、場合によって若干の補足を加えて掲載しています。

世界的なコロナ禍を受けてサプライチェーンの寸断や製品・サービスの供給不能などの事象が突如発生し、多くの企業がその対応に追われた。こうした感染症の流行や貿易摩擦などを踏まえ、グローバルに広がったサプライチェーンリスクを日本企業はどのように管理し、低減していけばいいのだろうか。そのポイントを解説する。

第1に、「現状の事業環境やリスクを踏まえた国内外のサプライチェーンの見直し」が挙げられる。まず、地震や洪水といった従来の自然災害リスクのほか、感染症の拡大による生産の縮小・中断、米中対立の深刻化による禁輸措置の発出、関税コストの上昇など、自社の主要事業のサプライチェーンを停止させる直接的な脆弱性を分析する。その結果を踏まえ、グローバル化すべきサプライチェーンと、国内回帰すべきサプライチェーンを見極める。

2つ目は、「グローバルサプライチェーンに潜むリスクの特定・評価」である。その際、やみくもに多くの事業・製品のサプライチェーンリスクを可視化するのではなく、「自社にとって重要なサプライチェーン」を見定めたうえで、そのサプライチェーンを阻害する重要なリスクを特定し、評価する割り切りが非常に重要となる。
そうした評価の結果、1社のみから購買している部材や、震災リスクが高い地域にある工場から供給を受けている部材、仮に供給停止した場合の影響が甚大な部材などについては、2社からの購買に切り替えたり、在庫を積み増したりするといった対策を講じることになる。また、BCP(事業継続計画)強化に向けて、仕入れ先や生産拠点との連携を強化することも重要となる。

3つ目は、「サードパーティ(外部業者)に内在するリスクの評価と管理の高度化」である。サードパーティとは、部材のサプライヤー、生産委託先、物流会社など、サプライチェーンに関与するさまざまな取引先を指す。
コロナ禍において、供給品の生産・販売数が急減したことで業績の悪化に直面している企業は少なくない。そのため、買い手企業として、サードパーティの財務リスクの兆候を適時に把握することや、財政状況の悪化によって連鎖的に発生しうる不正リスクをモニタリングすることが重要となる。
そうしたモニタリングの結果、財政上の懸念がある場合は、供給品の買い取り保証や資金調達の支援、M&A(合併・買収)による子会社化など個別具体的な支援も視野に入れる必要がある。
日本政府は米中貿易摩擦を踏まえ、海外生産拠点の分散・再配置への補助金も出している。こうした後押しもあり、ニューノーマル(新常態)時代には、消費者の近くで製造・供給するマイクロサプライチェーン化が進むといわれている。事業を取り巻く多様なリスクを精査したうえで、リスクとコストに見あった対策を講じ、サプライチェーンを強靱化することが求められる。
 

【サプライチェーンリスクへの対応方法(例)】

検討ポイント 対応例
事業環境・リスクを踏まえて最適か? グローバル化もしくは国内回帰すべきサプライチェーンの見極め
国際的なリスクの特定はできているか? 米中対立の深刻化によるサプライチェーンへの影響を精査
供給業者をマネジメントできているか? 新型コロナの影響による供給業者の財務状況を確認

執筆者

KPMGコンサルティング
マネジャー 佐藤 悠花子

日経産業新聞 2021年4月23日掲載(一部加筆・修正しています)。この記事の掲載については、日本経済新聞社の許諾を得ています。無断での複写・転載は禁じます。

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