「コロナ時代のBCP」第7回。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大防止に向け、多くの企業でリモートワークの導入が急速に進みました。一方で、リスク対応が未整備のまま場当たり的に運用している企業も少なくありません。恒久的な体制構築を実現するためのポイントについて解説します。
本連載は、日経産業新聞(2021年4月~5月)に連載された記事の転載となります。以下の文章は原則連載時のままとし、場合によって若干の補足を加えて掲載しています。
 

コロナ禍で多くの企業が慌ててリモートワークを導入した。しかし、あまりにも突然であったため、急場しのぎの仕組みにすぎないものを「ここまで何とかやってこれたのだから」と、ずるずると使い続ける例もみられる。このような現場の努力だけでリモートワークを運用する企業には、重大なリスクが潜んでいる。恒久的な体制を構築すべきで、そのためには7つの要素が必要となる。

1つ目は「リモートワークの方針」だ。企業環境や風土に沿ったリモートワークの方向性を定め、論点を整理し、方針を決めておく。たとえばセキュリティ対策と効率化が相反する場合、両立を目指しながらリスク許容範囲としてどこまで効率化側に踏み込めるか、またBCP(事業継続計画)と併せてどの規模までの危機に対応するかといったことなどを決める。

2つ目が「組織モデル」だ。リモートワークに加え、有事での柔軟な役割変更を考慮した組織・人材配置、スキル要件を明確にする。できれば変化に柔軟に対応できる企業文化の醸成まで踏み込みたい。

3つ目が「業務プロセス」である。有事での事業継続も視野に、リモート化する業務を選び、場所や担当者によらずオフィスと同等以上の品質・効率・納期を実現する業務体制を構築する。
紙や押印、電話対応などのリモートワーク阻害要因はデジタル技術の活用やデータ整備と合わせて廃止、または別手段への切り替えを検討する。デジタルデータによる顧客や取引先との業務・システム連携までできるのが理想である。

4つ目が「パフォーマンス管理」である。勤務実態、成果をリモートで定量的に把握・評価し、向上させる管理方法を整備する。場合によっては、ジョブ型(職務型)にするなど評価制度の変更と合わせて検討する。

5つ目が「スキル養成・開発」だ。社員の自主性に支えられるリモートワークでは人材のスキル・マインドが業務の質や効率化に直結するため、在宅で鍛錬できる環境整備を怠らないようにする。非対面でのコミュニケーションを前提として教育・研修体系を見直す。

6つ目が「テクノロジー活用」である。リモートワーク環境を提供できている前提で、さらなる高度化として、IT基盤のシンプル化とセキュリティ強化に向けて、社内も含めてすべてのネットワークを疑う新しいサイバー対策手法「ゼロトラスト」への移行も検討する。

7つ目が「リスク管理」である。特に情報漏洩についてオフィスとは異なる脅威に対してガバナンス(統治)ルールの見直し、定期的な情報セキュリティ研修、ミスを前提とした物理的な予防策が必要となる。また、インシデント(事故につながる事態)を早期発見し、事後分析できる環境を整えておくことも大切だ。

このようにリモートワークをきちんと運用するには全体的な取組みが不可欠だ。リモートワークを戦略的なレベルにまで高めるためにも、リスクを踏まえた仕組みを早急に整備することが求められる。
 

リモートワーク推進レベル

レベル1 未導入・場当たり的運用 基本的に出社を必要とし、リスク対策は未整備の状態
レベル2 部分的運用 提供されているサービスのみのリモートワーク
レベル3 組織ごとの合理的運用 品質・効率・管理を伴うリモートワーク
レベル4 全社的な合理的運用 全社横断的な品質・効率・管理を伴うリモートワーク
レベル5 戦略的運用 事業・顧客視点で企業戦略を体現するリモートワークであり、万全なリスク対応ができる状態

執筆者

KPMGコンサルティング シニアマネジャー 二村 悠

日経産業新聞 2021年4月26日掲載(一部加筆・修正しています)。この記事の掲載については、日本経済新聞社の許諾を得ています。無断での複写・転載は禁じます。

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