「コロナ時代のBCP」第5回。正確性や迅速性が求められるBCP(事業継続計画)遂行に備えて、定型業務やコミュニケーション手法のデジタル化が必要です。BCPのデジタルトランスフォーメーション(DX)推進に向けて重要なポイントを解説します。本連載は、日経産業新聞(2021年4月~5月)に連載された記事の転載となります。以下の文章は原則連載時のままとし、場合によって若干の補足を加えて掲載しています。

「備えあれば憂いなし」と言うが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行に際し、どれだけの企業が事前準備を怠らず、混乱なく過ごせたであろうか。さまざまな企業で業務のデジタル化を急いでいるが、災害時対応なども想定したデジタル投資の判断ができていた企業は、どれほどあったであろうか。

一般業務だけでなく、情報の正確性や意思決定の迅速性が求められるBCPについても、その遂行に備えて定型業務やコミュニケーション手法をデジタル化しておくことが必要となる。「BCPのデジタルトランスフォーメーション」を推進するうえで、重要な2つのポイントについて紹介する。

1点目は「BCPとDX化は切り離して考えてはならない」である。新型コロナ下で多くの企業が「BCPの再構築」と「業務のDX化」の両方を経営計画に掲げているが、別々に推進している事例も多い。その考え方を見直したい。
具体的には、定型業務を自動化するRPAや人工知能(AI)、ペーパーレス化などのデジタル技術を、有事の際の優先業務に率先して導入することが望ましい。コスト削減や業務迅速化などの目的に加え、災害などの際にも優先業務を遠隔または無人で止めることなく遂行できる方法も考慮したDX計画を立案することが重要である。

2点目は「災害時コミュニケーションツールの導入と平時からの活用」である。災害時コミュニケーションツールとは、安否・被災情報を自動的に収集・集計してリアルタイムでモニタリングする機能や、チャット機能やファイル共有機能により対応内容・情報を可視化することが可能なサービスである。
巨大なサプライチェーンを抱える企業においては、各工程の数多ある取引先との情報共有に混乱をきたすとチェーンが断絶し命取りになる。そのため、情報を一元管理できるデジタルツールの導入は不可欠である。
しかし、有事のためだけに導入したツールは情報が更新されず、操作が不慣れなため、実際の災害時には用をなさなかったケースも多い。リモートワークが一般化した今だからこそ、災害時コミュニケーションツールを平時のツールとしても活用し、有事の対応力強化とともにコスト削減といった副次的効果も享受できるよう進めていただきたい。
取引先も含めてツールを導入する際には、先方のメリットを訴求することも重要である。たとえば、ツールを無償で提供し先方の社内間でのコミュニケーションにも活用してもらう、平時の連絡や情報共有も当該ツールを使ってもらい業務の効率化を図るといったことが考えられる。

備えとは有事に限った準備ではなく、平時から脈々と積み重ねられた経験・対応をいう。ぜひ、日ごろからさまざまな経験・対応を積み上げながら、デジタルという手段をもって最適かつ柔軟なレジリエント(回復力ある)組織を作り上げていただきたい。
 

BCPを考慮したDXのポイント
・災害時の初動対応計画書を共有することも考えたクラウドサービスの導入
・業務の効率化と災害時を想定したRPA化の推進
・災害時とリモートワークの両方に使えるデジタルコミュニケーションツールの導入

執筆者

KPMGコンサルティング
シニアコンサルタント 小出 悠太

日経産業新聞 2021年4月22日掲載(一部加筆・修正しています)。この記事の掲載については、日本経済新聞社の許諾を得ています。無断での複写・転載は禁じます。

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