フィリピン:税務情報7月(CREATE法の施行細則の発行、税務調査等の期日の延長)
財務省(DOF)及び貿易産業省(DTI)は、2021年6月23日、共和国法第11534号(CREATE法)の施行細則(IRR)を発行しました。またRMC No. 80-2021においても、ECQ等の隔離措置による税務調査等の期限の延長日数の詳細がアナウンスされました。
CREATE法の施行細則(IRR)およびRMC No. 80-2021のECQ等の隔離措置による税務調査等の期限延長の詳細について解説いたします。
ハイライト
- 2021年4月11日に発効した税制改革法案第2段であるCREATE法の施行細則であるIRR(Implementing Rules and Regulations)が2021年6月23日に発行されました。本IRRはCREATE法の発効から90日以内に発行することがCREATE法案で定められていました。
- 本IRRでは追加控除(ED: Enhanced Deductions)や特別法人所得税(SCIT: Special Corporate Income Tax)の範囲、現在インセンティブを受けている事業の移行期間(Transition Period)などCREATE法案では明らかでなかった一部規定が明確化されています。
- またRMC No. 80-2021において、ECQ等の隔離措置による税務調査等の期限の延長日数の詳細がアナウンスされました。
※本ガイダンスについては、追加のアナウンスがなされる可能性があります
Department of Finance :
財務省(DOF)及び貿易産業省(DTI)は、2021年6月23日、共和国法第11534号(CREATE法)の施行細則(IRR: Implementing Rules and Regulations)を発行した。
以下はIRRの重要な規定である。
税金及び関税のインセンティブ
- 登録事業者(RBEs: Registered Business Enterprises※1)はCREATE法のもと規定された以下のインセンティブを受ける権利を有する。
- 所得税免税(ITH: Income Tax Holiday)
- 特別法人所得税(SCIT: Special Corporate Income Tax)
- 追加控除(ED: Enhanced Deductions)
- 資本設備・原材料・部品等の輸入に関する関税免除
- 0%VAT及びVAT免税
- COVID-19ワクチンの輸入に関する他のインセンティブ
- 石油製品の輸入に関する他のインセンティブ
※1RBEとは、個人、パートナーシップ、法人、外国法人のフィリピン支店またはフィリピンの法のもと組織される他の事業体のいずれかでIPAに登録したものをいう。(FIRBによって決定された一部のサービス事業者を除く。)
インセンティブの適用期間 (所在地及び産業の優先度合に基づく)
輸出事業者の活動 | |||
---|---|---|---|
所在地 / Industry Tiers | Tier I | Tier II | Tier III |
マニラ首都圏(NCR) | 4 yrs. ITH + 10 yrs. ED/SCIT 5 yrs. ITH |
5 yrs. ITH + 10 yrs. ED/SCIT |
6 yrs. ITH + 10 yrs. ED/SCIT |
NCR周辺及び大都市(Metropolitan areas or areas contiguous and adjacent to NCR) | 5 yrs. ITH + 10 yrs. ED/SCIT |
6 yrs. ITH + 10 yrs. ED/SCIT |
7 yrs. ITH + 10 yrs. ED/SCIT |
その他の地域(All other areas) | 6 yrs. ITH + 10 yrs. ED/SCIT 7 yrs. ITH |
7 yrs. ITH + 10 yrs. ED/SCIT |
7 yrs. ITH + 10 yrs. ED/SCIT |
輸出事業者の活動 | |||
---|---|---|---|
所在地 / Industry Tiers | Tier I | Tier II | Tier III |
マニラ首都圏(NCR) | 4 yrs. ITH + 5 yrs. ED |
5 yrs. ITH + 5 yrs. ED |
6 yrs. ITH + 5 yrs. ED |
NCR周辺及び大都市(Metropolitan areas or areas contiguous and adjacent to NCR) | 5 yrs. ITH + 5 yrs. ED |
6 yrs. ITH + 5 yrs. ED |
7 yrs. ITH + 5 yrs. ED |
その他の地域(All other areas) | 6 yrs. ITH + 5 yrs. ED |
7 yrs. ITH + 5 yrs. ED |
7 yrs. ITH + 5 yrs. ED |
暫定規定及びその他の規定
- CREATE法の効力発生前より存在する登録済プロジェクトまたは活動は、戦略的投資計画(SIPP)に発表される基準及び条件を前提として、規定期間、本法に付与されたインセンティブの登録及び適用をする資格を有する。その場合には、RBEはその登録証明書及び税務インセンティブの証明書を返上するものとする。
- 発注日または対応する信用状の開始日が反映された注文、船荷証券日が反映された積荷、2019年Executive Order No. 85の効力期間中である資本設備・原材料・部品等を注文したAuthority to Import(CAI)またはAdmission Entryの有効な証明書を有する既存のRBEsは、CAIまたはAdmission Entryの期限または税法のセクション311※2のもとその移行期間まで関税免除の権利を有するものとする。
※2税法のセクション311は、「Investments Prior to the Effectivity of This Act.」の項目であり、改正前の投資に関する移行期間について規定されている。(次行参照。)
CREATE法の効力発生前の投資
- CREATE法の効力発生前に、ITHのみ付与されたプロジェクトまたは活動は、登録時に特定されたITHの残存期間、その適用が引き続き許可されるものとする。
- ITHが付与されたが未だインセンティブの適用をしていないプロジェクトまたは活動は、登録時に特定された期間ITHを利用できる。
- ITH及び総稼得所得(GIE)に対する5%優遇税率が付与されたプロジェクトまたは活動は、両インセンティブにつき最大10年とすることを条件に、その登録の条件に特定された期間ITHを適用でき、その後GIEに対する5%優遇税率のインセンティブの適用が許可されるものとする。
- GIEに対する5%優遇税率を現在適用しているRBEsは、10年間、5%でのその税務インセンティブを引き続き適用することが許可されるものとする。
- 輸入にかかるVAT免税及び現地調達にかかる0%VATは、関係するIPA(PEZAなどの投資促進機関)でその登録済みプロジェクトまたは活動の登録期間中、輸出事業者の登録済みプロジェクトまたは活動に直接かつ独占的に使用される商品及びサービスにのみ適用されるものとする。
- Revenue Regulations(RR)No. 9-2021に沿って、以下の取引は12%VAT課税の対象とされる。
1. フィリピン中央銀行(BSP)のルールに沿った、原材料・梱包材の非居住者購入者への販売で、フィリピン国内輸出事業者の製造・加工・梱包に使用するためにその輸出事業者へ出荷されるもの
2. 年間総生産の70%を超える輸出売上のある輸出企業への原材料または梱包材の販売
3. EO No. 226(1987年オムニバス投資法)及び他の特別法のもとでの輸出売上4.BSPのルールに沿った、フィリピン国外で事業を行う他の者のための商品の加工・製造・再梱包でその後輸出されるもの
5.年間総生産の70%を超える輸出売上のある輸出事業者のために、商品の加工・converting・製造をおこなう下請け業者または請負業者によるサービス提供 - VAT登録RBEsによる0%VAT売上に起因するInput Taxの超過分は、RR No. 13-2018のもと規定されたガイドラインを条件に、還付または税額控除の適用ができる。
- (CREATE法によって改正された)税法のセクション311のもと移行期間の終了後は、すべての適用される諸税が適用されるものとする。
IRRは大衆紙に公表後、ただちに効力を発するものとする。
(本issuanceの全文はこちらからご確認ください)
Revenue Memorandum Circular (RMC) No. 80-2021 :
内国歳入庁(BIR)は、マニラ首都圏およびその近隣4州(ラグナ州、カビテ州、ブラカン州、リサール州)、また他の適用される管轄における強化されたコミュニティ隔離措置(ECQ: Enhanced Community Quarantine)の宣言により、税法のセクション223に沿った税務調査及び徴収に関する期間を一時停止したRMC No. 52-2021を補完するRMC No. 80-2021を2021年6月25日付で発行した。
RMCは、移動制限により特定活動に制限があることから「隔離措置」の定義はECQ及びMECQの両方を含むことを主張した。この理由により、税務調査及び徴収に関する期間はECQ及びMECQの実施地域では一時停止されるものとする。その一時停止で、関係するBIRオフィスはAssessment Notices、Warrants of Distraint and/or Levy、Warrants of Garnishmentを発行することに、その隔離措置の解除から60日間に加えてECQ及びMECQの実施された特定の地域の日数と同等の追加日数を与えられるものとする。
延長された期日の決定を容易にするため、BIRはマニラ首都圏およびその近隣4州のCase 1(IATF Resolution Nos. 107-A、108-A、109-A、113-Aに基づくとする。)及び他の短いECQ及びMECQの実施をCase 2及び3として、延長された期日の計算方法を示す以下の表を提供した。
従来の期日 | RMC No. 136-2020による期日 | CQ及びMECQの宣言による期日 | 宣言されたECQ 及びMECQの日数 | |
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Case 1 | 15 April 2021 | 30 August 202 | 15 December 2021 | 47 days + 60 days |
Case 2 | 15 April 2021 | 30 August 2021 | 19 November 2021 | 21 days + 60 days |
Case 3 | 15 August 2021 | 30 December 2021 | 28 March 2022 | 28 days + 60 days |