欧州中央銀行のTLTROIIIプログラム(IFRS第9号及びIAS第20号に関連)-IFRS-ICニュース

IFRS解釈指針委員会ニュース -「欧州中央銀行のTLTROIIIプログラム(IFRS第9号及びIAS第20号に関連)」については、2021年6月のIFRS-IC会議で新規に取り上げられました。

「欧州中央銀行のTLTROIIIプログラム(IFRS第9号及びIAS第20号に関連)」については、2021年6月のIFRS-IC会議で新規に取り上げられました。

関連基準

IFRS第9号「金融商品」、IAS第20号「政府補助金の会計処理及び政府援助の開示」

概要

IFRS-ICは、欧州中央銀行(ECB)による第3次貸出条件付長期資金供給オペレーション(TLTROIII)の借入人である銀行における会計処理についての質問を受け取りました。TLTROプログラムの下で銀行がECBから借入れることができる金額及びその借入に適用される変動金利の参照金利(COVID-19の影響を受け、現在、0.5%のスプレッドがここから控除される)利率は、当該銀行における企業や個人への融資実績の達成状況にリンクし、利払いは満期時等の一括払いとなっています。質問の内容は以下のとおりです。

a.TLTROIIIは、市場金利よりも低利の貸出であるか否か、及び、市場金利よりも低利の貸出である場合、借入人である銀行は当該便益にIFRS第9号とIAS第20号のいずれを適用するか

b.銀行が市場金利よりも低利での借入の便益にIAS第20号を適用する場合、

i.当該便益を認識する期間をどのように評価するか
ii.当該便益を、表示上、TLTROIII負債の帳簿価額に加算するか

c.銀行はどのように実効金利を計算するか

d.銀行は負債に付された条件(融資実績の達成状況)の評価が見直されたことにより生じた見積り将来キャッシュ・フローの変更について、IFRS第9号B5.4.6項を適用して当初金利による償却原価の再測定として会計処理するか

e.銀行の貸出行動またはECBが行うTLTROIIIプログラムへの変更に起因する、過去の期間におけるキャッシュ・フローの変更をどのように会計処理するか

ステータス

IFRS-ICの暫定的決定

IFRS-ICは、TLTROIIIへの参加により生じる金融負債はIFRS第9号の範囲に含まれるため、借入人である銀行がTLTROIIIの会計処理を決定するに際してはIFRS第9号が出発点になると指摘しました。銀行は、以下の手順で会計処理を検討することとなります。

a.組込デリバティブの分離要否を検討する。なお、本件についてはこの論点はありません。

b.当初認識日において金融負債を公正価値で測定する。当初認識時の公正価値と取引価格の差異を会計処理し、実効金利を計算する。

c.金融負債を事後測定する。これには見積キャッシュ・フローの変更の会計処理が含まれる。

金融負債の当初認識と測定

TLTROIII負債が「純損益を通じて公正価値で測定される金融負債」に該当する場合を除き、銀行は当初認識日にTLTROIII負債を公正価値に取引費用を加減した値で測定します。当初認識時の公正価値はIFRS第13号「公正価値測定」に基づき測定されますが、通常は取引価格と等しくなります。当初認識時の公正価値が取引価格と異なる場合、IFRS第9号B5.1.1項は、取引価格の中に金融負債以外の何かが含まれていないかを決定することを要求しています。

IFRS-ICは、金融負債の金利が市場金利よりも低利となっているか否かを決定するのは金融負債に関連する事実と状況に基づく判断を要するとしながらも、金融負債の当初認識時の公正価値と取引価格の差異は金融負債の金利が市場金利よりも低利であることを示している可能性があるとし、以下のとおり指摘しました。

  • 銀行が、TLTROIII負債の当初認識時の公正価値は取引価格と異なるが、取引価格には金融負債以外のものは含まれていないと判断する場合、銀行はIFRS第9号B5.1.2A項を適用して当該差異を会計処理する。すなわちその公正価値がレベル1のインプットによる場合、もしくは観察可能な市場からのデータのみを用いた評価技法に基づく場合は差異は発生時に損益処理し、それ以外の場合は繰り延べる。
  •  銀行が、TLTROIII負債の当初認識時の公正価値は取引価格と異なるが、取引価格には金融負債以外のものが含まれていると判断する場合、銀行は当該差異がIAS第20号の政府補助金を表しているかを判断する。政府補助金を表している場合、IAS第20号の政府補助金の会計処理は当該差異についてのみ適用され、金融負債にはIFRS第9号が適用される。

TLTROIIIにIAS第20号の政府補助金が含まれているか

IAS第20号において、政府とは「地方、国家又は国際機関のいずれかを問わず、政府、政府機関及びそれに類似する機関」と定義され、また、政府補助金とは、「政府による援助であって、企業の営業活動に関する一定の条件を過去において満たしたこと又は将来において満たすことの見返りとして、企業に資源を移転する形態によるもの」と定義されています。合理的に価値を定めることのできない形態の政府援助又は政府との取引のうち企業の通常の商取引と区別できないものは政府補助金から除かれています。

IFRS-ICは、TLTROIIIにIAS第20号の政府補助金が含まれるのは以下の場合であると指摘しました。

a.ECBがIAS第20号の政府の定義を満たす。

b.TLTROIII負債に適用される金利が市場金利よりも低利となっている。

c.ECBとのTLTROIIIプログラムによる取引が、当該銀行の他の通常の商取引と区別できる。

ただし、上記事項の決定には特定の事実及び状況に基づく判断が要求され、したがって、IFRS-ICはTLTROIIIにIAS第20号の政府補助金が含まれているか否かについて結論付ける立場にないと指摘しました。また、TLTROIIIに政府補助金が含まれるとしても、当該補助金が補填することを意図している関連コストの特定にも判断を要すると指摘しました。一方で、もしTLTROIIIにIAS第20号の政府補助金が含まれているとしても、IAS第20号はその場合に銀行が政府補助金を会計処理するのに十分な基礎を提供していると結論付けました。

当初認識時の金融負債の実効金利の計算

IFRS第9号において実効金利は「金融資産又は金融負債の予想存続期間を通じての将来の現金の支払又は受取りの見積りを、金融資産の総額での帳簿価額又は金融負債の償却原価まで正確に割り引く率」と定義されているため、実効金利の計算において企業は金融負債の予想される満期日までの予想キャッシュ・フローを見積る必要があります。当初認識時点においてTLTROIII負債の実効金利を計算する際には、どのように将来キャッシュ・フローを見積るのか、特に、負債に付された条件を達成するかどうかの判断を将来キャッシュ・フローに反映させるのかが問題となります。この点、実効金利法の適用にあたって将来キャッシュ・フローの見積りに何を考慮すべきかは、今回の質問以外にも関連する論点であるとIFRS-ICは指摘しました。したがってIFRS-ICは、実効金利法の計算にあたり不確実な条件をどのように反映させるのかを検討することはより広範な問題であり、TLTROIII負債の文脈のみで議論すべきではないとし、この論点はIFRS第9号の分類と測定の適用後レビュー(PIR)の中で扱われるべきであるとしました。

償却原価法に基づく金融負債の事後測定

TLTROIII負債の利息は満期時(又は早期弁済時)の一括払いのため、金融商品のキャッシュ・フローが生じるのは決済時の1回限りです。

銀行は金融負債の当初認識時に将来キャッシュ・フローを見積り、当初の実効金利を算定します。その後実効金利を調整するか否かは金融負債の契約条件及びIFRS第9号の関連する規定に拠り、将来キャッシュ・フローの見積りに変化が生じた場合はIFRS第9号B5.4.5項もしくはB5.4.6項が適用されます。
IFRS第9号B5.4.5項は変動金利の金融負債に適用され、市場金利の変動を反映するように将来キャッシュ・フローの見積りが修正され、実効金利が改定されます。IFRS-ICは、変動金利金融商品とは契約上のキャッシュ・フローが市場金利の変動を反映するように定期的に調整されるように変動する金融商品であると指摘したうえで、変動金利金融商品には、変動金利要素のほか固定部分のその他の金利要素(例えば、TLTROIIIでECBが付与する0.5%のディスカウント)が含まれる場合があるが、B5.4.5項の適用対象は変動金利要素のみであるとしました。
一方、IFRS第9号B5.4.6項はIFRS第9号B5.4.5項が適用されないキャッシュ・フローの見積りの変更に適用されますが、条件変更によって契約上のキャッシュ・フローの変更が起きる場合は、企業は当該変更が金融負債の認識の中止をもたらすか否かをまず判断する必要があります。
IFRS-ICは、認識の中止には至らない条件変更又はその他の予想将来キャッシュ・フローの変化により、TLTROIII負債の決済予定額がTLTROIII負債の帳簿価額算定の前提となっていた将来キャッシュ・フローの見積りから乖離してしまった状況について検討しました。その場合、銀行は条件変更又は予想将来キャッシュ・フローの変化を反映して金融負債の帳簿価額を調整、従前の帳簿価額との差異を純損益で即時に認識します。したがって、銀行は過去の期間に認識された利息の調整は行いません。

IFRS-ICは、実効金利を決定するにあたり、金利に付された条件の達成を将来キャッシュ・フローの見積りや変更に反映させるか否かは広範な問題であり、TLTROIII負債の文脈のみで議論すべきではないとしました。したがって、IFRS-ICはこの論点はIFRS第9号の分類と測定の適用後レビュー(PIR)の中で扱われるべきであるとしました。

開示

ECBがIAS第20号の政府の定義を満たしており、ECBから政府援助を受けたと判断した場合、当該銀行はIAS第20号39項で要求される開示を行う必要があります。加えて、TLTROIIIに関して要求される判断およびリスクに鑑み、銀行はIAS第1号「財務諸表の表示」第117、122、125項で要求される開示、及び、IFRS第7号「金融商品:開示」第7項、21項、31項で要求される開示を行うことを検討する必要があります。これらの開示は、重要な会計方針と会計方針適用にあたって経営者が行った、財政状態計算書に認識されている金額に最も重要な影響を与えている仮定と判断についての情報を開示することを求めています。

上記を踏まえ、IFRS-ICは、以下のとおり結論付けました。

  • 銀行がTLTROIIIにIAS第20号の政府補助金が含まれていると判断する場合、IAS第20号は当該政府補助金を会計処理するのに十分な基礎を提供している。
  •  実効金利を決定するにあたり、金利に付された条件の達成を将来キャッシュ・フローの見積りや変更に反映させるか否かは広範な問題であり、IFRS-ICにおいてそれ単独では効率的に解決することができず、IFRS第9号の分類と測定の適用後レビュー(PIR)の中で扱われるべきである。

上記の理由からIFRS-ICは本論点を基準設定プロジェクトに追加しないことを暫定的に決定しました。

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