新しい現実

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックで消費者トレンドは様変わりしました。リーダーは新しい現実に目を向け、政治的・経済的・社会的・技術的な4つの要因に対応する必要があります。

4つの消費者トレンドとは

経済的影響 - 概要

消費者は支出の減少を予測しており、貯蓄を優先しています。パンデミック前と比較した支出予測の純減は、経済的に困窮している人々から、経済的に安定している人々まで幅があります。

信頼の低下 - 概要

COVID-19によりブランドへの信頼は低下し、わずかに回復してきたものの市場間に差が出ています。パンデミックで影響を受けた国は、フランス、イタリア、スペインが挙げられます。

デジタルの台頭 - 概要

COVID-19によって減少した顧客との対面での対応をデジタルチャネルがカバーしました。急速に加速したデジタルチャネルの利用は今後も続いていくでしょう。

家は新しいハブ - 概要

消費者が家にいることにより、新しいライフスタイルが形成されています。消費者の37%が、COVID-19以前と比べて在宅勤務の割合が増えており、今後も在宅勤務の割合は高い状態が続くでしょう。

4つの消費者トレンドが企業にもたらす意味

銀行

経済的影響
金利の低下に対処するため、銀行はコスト削減プログラムを実施し、新オペレーティング・モデルの導入や経営統合まで検討しています。

信頼の低下
銀行は他のセクターに比べれば信頼は損なわれておらず、顧客を支援し信頼を生み出しています。しかし、懸念事項も抱えており、こうした要因が問題となれば、長期的なレピュテーションリスクが発生する可能性もあります。

デジタルの台頭
銀行はデジタル化だけでなく、差別化にも焦点を当てる必要があります。また、コストを削減するには、商品・サービスを簡素化する必要があります。

家は新しいハブ
顧客の生活様式の転換は、支店の地域分布に関心を生む可能性があります。市内中心部の支店は、複雑なプロセスに対応するため、引き続きフルサービスを提供する必要があります。

保険

経済的影響
保険への加入は経済的に影響を受けた市場だけでなく、中国でも増加しています。保険は保険会社が十分に活用していないデータ共有に依拠しているため、今後重大な混乱をもたらす可能性を示唆しています。

信頼の低下
保険セクターへの信頼はパンデミック前より高くなっていますが、今後、保険金が請求されるにつれ、COVID-19による保険対象の問題がリスクになってくるでしょう。

デジタルの台頭
レガシーなプラットフォームを持つ保険会社のデジタル化は、費用と時間がボトルネックとなっています。しかし、デジタル化の推進は、顧客との直接的な関係が構築可能となり、コスト削減につながるでしょう。

家は新しいハブ
消費者が家で多くの時間を過ごせたことにより、加入する保険の種類に影響を与えました。自動車保険、住宅保険、生命保険、健康保険の加入が増加しています。

消費財・小売

経済的影響
パンデミック下において、直接的に影響を受けた消費者と、影響は軽微で貯蓄を増やした消費者の二極化が進みました。小売業者は、AIと心理統計学を使い、2つのグループのニーズを理解する必要があります。

信頼の低下
食料品以外の小売チェーンは、顧客の安全を最優先していないと認識されているため、小売業者は安全への明確な目的とコミットメントを示す必要があります。

デジタルの台頭
消費者向け商取引への移行が加速しており、消費者に直接アクセスできるブランドが勝者となるでしょう。小中規模の企業は、ブランド存続のためにインフラ統合を行う必要に迫られています。

は新しいハブ
消費者は地元で調達された製品に多くの対価を支払うことに前向きです。消費者が家で過ごす時間が増えるにつれ、小売業者は本質的なものとそうではないものを迅速に理解する必要があります。

レジャー・旅行

経済的影響
レジャー・旅行の需要の回復は、中国本土などで観察されています。迅速な対応がビジネスの回復を促した事実は明るい材料になっています。

信頼の低下
信頼を喚起するための安全性に関する明確なコミュニケーションは、業界にとって存続のキーとなるでしょう。柔軟で順応性のある企業が勝ち残るでしょう。

デジタルの台頭
オンラインコンサート、劇場などが視聴可能となり、ストリーミングサービスは需要が伸長し、大きなビジネスチャンスをむかえています。

家は新しいハブ
レジャー業界は、デリバリーとテイクアウトによりビジネスモデルの再定義を行っています。旅行業界は困難に直面する一方で、消費者の潜在的な旅行意欲が一筋の光明となっています。

購入を決定付ける要因と国別の状況

企業が従業員と顧客の安全と健康に重点を置いた結果、日常生活のあらゆる側面を変えました。過去4ヵ月間の上位の購入要因として「金額に見合う価値」が挙げられています。
また、12の国・地域の各市場では、ソーシャルディスタンスの手段も市場ごとに異なり、社会的・経済的な違いとも相まって、消費行動も多様な結果となりました。

英語コンテンツ(原文)

中村 吉伸

KPMG FAS 執行役員パートナー/KPMGジャパン ターンアラウンド&リストラクチャリング(事業再生・事業変革)サービス統括

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