世界における脱炭素化に向けた取組みが加速するなか、電力分野においてはグリーン電力の導入を促進する仕組みが各国で導入され、特に欧米においては主力電源の1つとしての地位を確立しつつあります。翻って、日本におけるグリーン電力調達のハードルは需給双方に存在し、諸外国に比べて高いと言わざるを得ません。しかしながら、顧客や投資家からの脱炭素化の要請が高まるという今後のトレンドに鑑みると、脱炭素化を積極的に推進する海外企業を顧客に持つ企業や欧米市場を重視する企業にとって、ハードルが高いながらもグリーン電力調達を通じた脱炭素化の推進が市場で競争力を持つ要件の1つになると考えられます。

ポイント

  • グリーン電力調達の目的は、環境負荷の軽減やブランディングだけでなく、中長期的な競争力の源泉の獲得にまで発展している。
  • グリーン電力を取り巻く環境についての将来シナリオを複数想定し、シナリオごとの打ち手をあらかじめ決めておくことで、市場環境の変化に対応した最適な電力調達の意思決定を迅速に行うことができる。

先進市場におけるグリーン電力導入の状況

世界レベルで気候変動対策に取り組むパリ協定が採択されましたが、新興国の人口増加や経済発展の影響で今後さらに炭素排出量の増加が見込まれており、目標達成には課題が山積している状況です。係るなか、カーボンプライシング導入などによる化石燃料由来電力のコスト増と、グリーン電力のコスト減により、グリーン電力の相対的な価格競争力が向上しています。こうした動きを受け、需要家企業によるグリーン電力調達の目的は、これまでの環境負荷軽減やブランディングにとどまらず、中長期的な競争力の維持・獲得にまで発展しています。グリーン電力の需要の高まりにつれて、発電事業者と需要家企業との間のグリーン電力購入契約(コーポレートPPA)のグローバル市場は大きく拡大しています。

グリーン電力導入における日本の位置付けと課題

世界では、グリーン電力の調達に積極的な団体が複数存在しており、なかでもRE100は事業運営に使用する電力を2050年までに100%グリーン化することを目標とするグローバルな企業連合です。日系企業のRE100加盟社数は50社を超え、米国に次いで世界で2番目になりました。しかしながら、供給サイドは供給量の少なさ、需要サイドはスイッチングの難しさという課題があり、日本はグリーン電力の調達が難しい国の1つとなっています。

日本企業にとっての脅威と機会

ステークホルダーからの要請により、グリーン電力調達を通じた脱炭素化の推進が事業上の競争力の要件となってきており、将来的には企業の事業継続における脅威となり得るでしょう。ESG投融資の重要性も高まっており、グリーン電力を活用することで有利な条件での資金調達が可能となります。一方、グリーン電力の相対的なコスト競争力の向上や、調達の選択肢の増加など、グリーン電力導入に関する機会も増えており、企業にとってグリーン電力の調達を検討することの重要性は日々増しています。また、2022年度以降のFIT(Feed-In-Tariff、固定価格買取)制度からFIP(Feed-In-Premium)制度への移行により、PPAモデルの需要が一層顕在化するとみられています。加えて、グリーン電力調達に対する補助金や税優遇などインセンティブの多様化が進み、グリーン電力調達の選択肢増加の追い風となっています。

グリーン電力の調達手段と特徴

グリーン電力の調達手段は、以下の3つに大別されます。

  • 自家発電:需要家の敷地内で自家消費分の電力を発電するもの
  • コーポレートPPA:第三者が発電するグリーン電力を購入するもの
  • 証書:グリーン電力から環境価値を分離して証券化したもので、購入によりグリーン電力を調達したとみなされるもの

これまで、スイッチングコストや需給のマッチングなどの障壁が低い証書導入が先行して普及してきましたが、足元では本質的な低炭素化に寄与するPPAに舵を切る企業が漸増しています。

日本企業がグリーン電力調達において目指すべき方向性

グリーン電力を使わないことによる実質価格競争力の低下や、ESGに取り組まないことによる資金調達の機会損失など、事業を取り巻く環境の変化を踏まえると、グリーン電力調達の重要性は以前より増しており、特に脱炭素化を積極的に推進する海外企業を顧客に持つ企業や欧米市場を重視する企業にとっては喫緊の課題になっています。一方で、グリーン電力の市場における需要に対応した供給量や、供給者のビジネスモデルの進化など、不確定要素も依然として多いため、複数シナリオを想定し、「市場変化の何をトリガーとして、どう舵を切るか」を想定しておくべきです。

執筆者

KPMGジャパン エネルギー&インフラストラクチャーセクター
株式会社KPMG FASストラテジーグループ
執行役員 パートナー 鵜飼 成典

株式会社KPMG FAS
シニアマネージャー 六田 康裕