ロンドン・シティ「2021年はRegTechにとって重要な年」を公表

英国では、FCAとBOEがデジタル規制報告(DRR)という改革を進めるなど、金融規制について新技術の活用を図る動きが本格化しています。本稿は、国際金融センターとして名高いロンドン・シティがRegTechについて公刊した調査報告書です。RegTechの現状、主要発見事項、課題、推奨事項を記しています。

ロンドン・シティが4月に公表したRegTechに関する調査報告書の総論部分を、著作権者の許可を得て翻訳しました。

解説

City of London Corporation(以下「ロンドン・シティ」という)は、「2021:A Critical Year for RegTech」と題する調査報告書(全78頁)を2021年4月16日に公表した。本稿は、このうち、冒頭の総論的な部分および図表1.1を著作権者(ロンドン・シティおよびその委託調査実施先のRegTech Associates)の許可を得て翻訳したものである。翻訳の責任は翻訳者にある。

国際金融センターとして名高いロンドン・シティは、Brexitとコロナ禍のダブルパンチを受けている。

しかし、後者については、迅速なワクチン接種展開を梃子に先進国の中でも先駆けてポストコロナに向かいつつある。

英国の金融規制については、FCA(金融行為規制機構)とBOE内のPRA(健全性監督機構)がデジタル規制報告(Digital Regulatory Reporting:DRR)という名前の改革を進めている。本年2月23日にはFCAとPRAの両長官連名による「データ報告徴求の見直しについて」(注)と題する被規制機関CEO(民間銀行頭取等)宛のレターが発出・公表されるなど、金融規制面での新技術活用が本格化している。

(注)Transforming data collection – an update on progress and plans for 2021

シティ・オブ・ロンドン自治行政庁が公表したこの報告書は、冒頭に「The Global City」と掲げるなど、「国際金融センター」としてのロンドン・シティの今後の成長・発展を強く意識し、金融規制のデジタル化とそれに対応する被規制機関(民間銀行等)のRegTech導入の意義を強調している。報告書のタイトルは「2021年はRegTech飛躍のために正念場の年」といった意味である。

- EUでは3月にEBA(欧州銀行監督機構)がEU域内の対規制当局報告の統合について、ディスカッションペーパーを公表し、市中協議を始めている。米国ではFDIC(連邦保険公社)が新技術の活用をテーマにした特設サイトFDiTechを示すとともに、RPPという対規制当局報告改革の検討を進めている(注)。

(注)https://www.eba.europa.eu/eba-launches-discussion-paper-integrated-reporting
   https://www.fdic.gov/fditech/rpp.html

我が国では、金融庁が国際金融センターについての特設ページ(注)を本年3月30日に新設している。

(注)「アジアの、世界の国際金融センターへ」

また、金融庁と日本銀行は、将来的に、データ収集・共有の更なる効率化およびモニタリングの高度化を実現するため、金融庁・日本銀行の共同プラットフォームに関して、共同研究を開始している(注)。

(注)「金融庁・日本銀行の更なる連携強化に向けた取り組み」(本年3月22日、金融庁公表資料)

金融規制対応関係での新技術の活用は、(1)マネロン等金融犯罪対策、(2)規制・法令遵守の管理、(3)対規制当局報告などについて、人手による対応を脱し、実効性を高めるとともに費用を削減するものとして、改めて注目されている。

(参考)ロンドン・シティ等について

ロンドン・シティは、シティを管轄地域とする自治体であり、ロードメイヤーを長とし、ギルドホールに拠点を置いている。
シティは、スクエアマイルの別名ももつロンドンの金融を主要産業とする行政区域である。
ロンドン市(グレーターロンドン)は、シティと32の区(boroughs)から成る。
ロンドン・シティは、シティ・オブ・ロンドン・ポリスという独立した警察組織をもつことも特徴である。彼ら自身の役割につき、「通常の地方自治体の役割を超える」と説明している。

今回同行政庁が公表した冊子は、RegTech AssociatesというロンドンのRegTechの専門家からなる調査機関に調査を委託して作成されている。

本報告書冒頭の総論的な部分および図表1.1の日本語版は、添付のPDFをご覧ください。

なお、翻訳にあたっては、Andrew Barger、小関秀和、福島玲奈、川上千裕が貢献した。

英語コンテンツ

執筆者

有限責任 あずさ監査法人
ディレクター 水口 毅

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