カナダ2021年度連邦予算案 – ファースト・インプレッション

カナダの副首相兼財務大臣であるクリスティア・フリーランド氏は2021年4月19日に2021年度連邦予算案を提出しました。本予算案では2020/2021年度に3,542億カナダドルの赤字を見込んでおり、2021/2022年度ではさらに1,547億カナダドルの赤字を見込んでいます。

2021年度のカナダ予算案について解説します。

我々の初期的見解では、本年度の予算は新型コロナウイルス禍からの経済復興対応に焦点を当てたという印象を受けております。本予算案では個人・法人に係る連邦税率の変更はないものの、「カナダ緊急賃金補助金Canada Emergency Wave Subsidy (CEWS)」、「カナダ緊急賃貸補助金Canada Emergency Rent Subsidy」や「ロックダウン・サポート Lockdown Support」の適用期間を9月25日まで延長する上に、新たに「カナダ雇用回復プログラム Canada Recovery Hiring Program」を導入することを提案しております。

本予算案では特定のカナダ企業を対象に、利子の損金算入を制限する新たな規制を2023年以降に適用することを発表しております。また、カナダの多国籍企業に影響を及ぼすことになるであろう新たなハイブリッド規則についても記載されております。さらに、2022年1月1日に導入を予定しているデジタルサービス税の詳細も含まれております。

一方で、キャピタルゲインに対する課税率の引き上げ、主たる住居に対する免除(Principal residence exemption)規則への変更、富裕税の適用等については本予算案では触れていません。また、包括的な税制改革に関する発表もありませんでした。

カナダ2021年度連邦予算案 税制改正案の要点

過大支払利子税制

本予算案で提案された過大支払利子税制は、企業が課税所得を計算する際に損金として算入可能な額を「Tax EBITDA」の固定比率以下に制限するというOECDの推奨内容に沿ったものになっております。

「Tax EBITDA」は、課税所得から税務上損金算入可能な支払利子、受取利息、所得税、および減価償却費を除いたものです。

本予算では、特定の企業において損金算入が可能な利子の額を、導入初年度は「Tax EBITDA」の40%までに制限し、それ以降は30%まで引き下げることを提案しております。立法案の草案は、2021年後半を目途に発表される予定です。

なお、この税制は、2023年1月1日以降に開始する課税年度に適用され、既存および新規の借入金が対象となります。

ゼロ・エミッション技術生産者を対象とした所得税率の引き下げ

適格ゼロ・エミッション技術生産者に適用される法人税率が一時的に引き下げられます。対象となる場合、7.5%(通常であれば15%課税される場合)、または4.5%(通常であれば9%課税されるスモールビジネスの場合)の軽減税率を適用することが可能となります。

その他の税制改正案

法人税に関する主な改正案

  • 2021年4月19日以降に購入し、利用可能となる特定のクリーン・エネルギー機器に対する減価償却適用条件の変更を発表
  • 所得税法における取引報告規制の変更、通知可能な取引を報告する新たな要件、又は特定の企業が不確実な税務ポジションを報告する新たな要件など、開示を義務付けるための規則を強化する提案を協議すると発表
  • 2021年4月19日以降の資産譲渡において、租税回避防止規定の回避を目的としたプランニング・トランザクションに適用すべき規制を提案すると発表
  • カナダの一般的租税回避防止規定(GAAR)を強化し、更新することを目的とした協議を行うことを発表

国際税務に関する改正案

  • 多国籍企業がハイブリッド・ミスマッチを利用し、優遇措置を受けることを回避する目的として、新たな規制を提案すると発表。 法案は2021年後半に公開予定で、2022年7月1日から段階的に施行される予定
  • カナダの移転価格税制の変更について協議すると政府の意向を発表

間接税に関する改正案

  • 多国間のアプローチが一致するまでの間、カナダのエンド・ユーザーを対象とするデジタルサービスに関する売上に対して3%のデジタルサービス税を課すと発表。 対象は、2022年1月1日時点で総売上高が7億5000万ユーロ以上の大企業
  • 2020年秋のエコノミック・アップデートで発表されたように、eコマースビジネスに適用されるGST/HSTに関する規制内容を調整すると発表

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