創造的破壊(Disruption)は、金融サービス業界を作り変え、金融サービス企業の物理的・戦略的オペレーション、テクノロジーシステム・データセキュリティ、商品・サービス、顧客とのやり取り、サードパーティとの関係・提携の全側面に影響を及ぼすでしょう。本レポートではこれらによって生じる、規制課題の各領域で重視する10の規制インサイトを取り上げています。

変革管理

2020年に起こった変動は2021年も継続すると予想され、金融サービス企業は変革管理プロセスにおいて俊敏性を示す必要に迫られています。COVID-19のパンデミック下における予期せぬ変革は、金融サービスの未来を変える可能性があります。規制当局には、法規制の継続的な遵守とともに、企業のガバナンス構造と一貫性のある健全な変革管理が期待されています。

信用リスクとLIBORの変革

金融機関は、COVID-19パンデミックによる経済的低迷に対処する顧客やコミュニティの支援への取組みに代表される、さまざまな課題に取り組んでいます。2021年は、継続する不透明性と相まって、年間を通じて信用リスク管理プロセスに注目が集まる年になるでしょう。金融機関はパンデミックの影響緩和のために借り手と協力したローンの条件変更への取組みを奨励されていますが、規制当局はこれらの変更の根拠とともに不良債権のリストラクチャリングの分類、リスク評価、発生状況、引当金の妥当性、銀行資本に関する影響に注目しています。

気候とESG

金融サービス規制当局は2021年、ESGの「E」の気候変動に焦点を定め、同時に多様性(「S」の要因)と企業のコミットメント(「G」の要因)にも取り組むことになるでしょう。一方、企業は自社の投資戦略、デューデリジェンス、リスクプロセス全体にわたるESG方針へのコミットメントをすでに公表しており、他企業にも奨励しています。

中核リスク管理

中核リスク管理の役割は進化し続けており、中核リスク管理に対する規制当局の注目も高まっています。テーマ別の、蔓延する、あるいはシステミックなリスク問題が特定され、それが不十分なリスク管理と判断された場合には、重い罰金を含む措置が取られる可能性があります。

オペレーショナル・レジリエンスとサイバーセキュリティ

パンデミック等をはじめとする最近の事象は、規制当局の注目領域の変化とサイバー攻撃脅威の拡大と影響し合い、テールイベントが同時発生するリスクとオペレーショナル・レジリエンスへの影響を理解し、計画を立てる必要性を浮き彫りにしました。金融サービス企業が重要なサービスをエンドツーエンドで提供する能力に個々の資産がどのように貢献するか、そのバリューチェーン上で起こるDisruptionが重要なサービスを提供する企業の継続的能力にどのような意味を持つかを理解するために、さらなる注意と計画の導入が必要となるでしょう。

コンプライアンス・リスク

Disruptionによる変革と経済刺激策が発動される可能性があることで、2021年はコンプライアンス部門とガバナンス・プロセスへの負担が予想されています。規制当局は、コンプライアンス・プログラムの有効性を検討するとともに、企業がコンプライアンス機能に十分なリソースを投入することを期待しています。
 

不正および金融犯罪

金融機関には金融犯罪防止能力および検知能力を強化し、規制当局へ情報を提供するという義務があります。多くの企業は導入スケジュールが長期になることが原因で、古いモニタリング・システムの改善に苦慮しています。COVID-19パンデミック下における不正の懸念は変化しており、検知・報告プロセスの調整にはオペレーションの柔軟性が必要です。金融機関は不正や金融犯罪にリソースを割く必要があるでしょう。

消費者/投資家の保護

金融サービス事業者は2020年、2021年を通じて、顧客の扱いに関する規制当局からのモニタリング検査を受けることを予想すべきです。モニタリングは、消費者と事業者の顧客からの注目により厳しいものとなるでしょう。

決済

決済業界の変化の速さは消費者需要の変化にもつながり、企業組織と提供モデルを一変させています。決済バリューチェーンにおける金融機関はこの変化に順応するために、フィンテック、ノンバンク、国内最大の小売業者(一部)との提携に向かいつつあります。消費者はかつてないほどの選択肢を手にし、より速く低コストで決済が行える新サービスを探し続けています。規制当局は消費者保護の必要性を重視し、責任あるイノベーションの推進と監督強化とのバランスで選択肢を評価しています。

規制権限の拡大

フィンテック、ノンバンクなどの金融サービス企業にライセンス/免許を付与する連邦の規制当局と州の規制当局は緊張関係にあります。独立の特別目的国法銀行免許の確立を目指すOCCの取組みは継続していますが、州からは反対の声が上がっており、2021年、さらに以降もこの論争は続きそうです。2021年を通じて、金融サービス企業は以下から影響を受ける可能性があります。

  • 一部の大手ノンバンクは、預金等受入業務と連邦決済システムへのアクセスを許可される連邦の免許を求め、また実際に認可を受けています。
  • 新興企業の買収を含め、金融サービス市場における反トラストおよび反競争的行為に対するDOJおよびFTCの注目が高まっています。
  • 州の法規制は、新たな監督部門または広範に適用される厳格な規制を確立しつつあります。
  • 既存の規制権限を、人工知能やESG問題などの新たな領域に拡大しています。

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