「クラウドコンピューティング契約にかかる導入費用(IAS第38号に関連)」 - IFRS-ICニュース

「クラウドコンピューティング契約にかかる導入費用(IAS第38号に関連)」 - IFRS-ICニュース

IFRS解釈指針委員会ニュース - 「 クラウドコンピューティング契約にかかる導入費用(IAS第38号に関連)」については、2021年4月の国際会計基準審議会(以下、「IASB審議会」)において審議された内容を更新しています。

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関連基準

IAS第38号「無形資産」

概要

IFRS-ICは、SaaS契約(顧客がサービスとして利用するクラウドコンピューティング契約)において、顧客がクラウドサービスを受けるために導入費用を支払った場合の当該導入費用の会計処理について質問を受け取りました。質問の取引は以下のとおりです。

  • 顧客はサービス提供者とSaaS契約を締結する。当該契約は、契約期間にわたり顧客がサービス提供者のソフトウェアにアクセスする権利を与える。この契約は顧客にとっての無形資産を創出するものではなく、したがって、このソフトウェアへのアクセスは、契約期間にわたって顧客が提供を受けるサービスとなる。
  • 顧客は当該クラウドサービスを受けるにあたっての導入費用 - クラウドサービスを受けられるようにするための設定作業や顧客の仕様に合わせるためのカスタマイズ作業のための費用 - を支払う。ここで設定作業・カスタマイズ作業は以下のものを指すとする。

i. 設定作業(コンフィグレーション)とは、アプリケーションソフトウェアの中で様々なフラグやスイッチを設定することをいう。設定作業によって、機能やパラメーターを定義し、ソフトウェアの既存のコードを特定の仕様で機能するように設定・修正する。

ii. カスタマイズ作業とは、ソフトウェアのコードを変更したり、追加のコードを作成することをいう。カスタマイズによって、通常はソフトウェアの機能が変更されたり新たな機能が追加されたりする。

  • 顧客は他の財又はサービスを受け取らない。

ステータス

IFRS-ICの決定(2021年3月)

IFRS-ICは、以下の2つの点を検討しました。

a. 顧客は、設定及びカスタマイズにかかるコストについて、IAS第38号を適用し無形資産を認識するか(質問1)

b. 設定及びカスタマイズにかかるコストが無形資産として認識されない場合、顧客はこれらをどのように会計処理するか(質問2)

顧客は、設定及びカスタマイズにかかるコストについて、IAS第38号を適用し無形資産を認識するか(質問1)

  • 企業は、ある項目が無形資産の定義と認識要件(IAS38.21-23)の両方を満たす場合に、これを無形資産として認識する(IAS38.18)。IAS第38号は、無形資産を“物理的実体のない識別可能な非貨幣性資産”と定義し、資産は企業によって支配されている資源としている。また、資産から生じる将来の経済的便益を獲得し、当該便益への他社のアクセスを制限できるパワーを持っている場合に、資産を支配しているとしている(IAS38.13)。
  • 質問の状況では、サービス提供者が顧客がアクセスできるソフトウェアを支配している。ソフトウェアの設定及びカスタマイズの作業が顧客の無形資産として認識されるか否かは、設定作業とカスタマイズ作業の性質及び成果物に依存する。
  •  IFRS-ICは、質問で示されたSaaS契約においては、設定・カスタマイズの対象となるソフトウェアを顧客が支配しておらず、これらの作業はソフトウェアとは別に顧客によって支配される資源を創出しないため、多くの場合無形資産は認識されないと指摘した。しかしながら、ある状況においては、契約により、例えば、追加のコードが作成されることで顧客が将来の経済的便益を獲得し他社からのアクセスを制限するパワーが創出されるかもしれない。その場合には、追加のコードが無形資産として認識されるかを判断するため、顧客は追加のコードが識別可能であるか、IAS第38号の認識要件を満たすかを評価する。

設定及びカスタマイズにかかるコストが無形資産として認識されない場合、顧客はこれらをどのように会計処理するか(質問2)

  • 顧客が設定及びカスタマイズにかかるコストを無形資産として認識しない場合、これらのコストを会計処理するために、顧客はIAS第38号68-70項を参照する。IFRS-ICは以下のとおり指摘した。

a. 顧客は設定及びカスタマイズのサービスを受領した時にそのコストを費用として認識する(IAS38.69)。IAS第38号69A項は、“サービスは、サービス提供者が契約条件に従ってサービス提供を履行した時に受領され、企業が他のサービスを提供するためにそれを使用した時ではない”としている。したがって、コストをいつ費用として認識するかを評価するにあたっては、IAS第38号は、サービス提供者が契約条件に従っていつ設定作業及びカスタマイズ作業のサービスを履行したかを顧客が決定することを要求している。

b.  サービス提供者が契約条件に従ってサービスの提供をいつ行ったのかを決定する際に、IAS第38号には顧客が受領したサービスを識別する規定はない。そのため顧客は、IAS第8号「会計方針、会計上の見積りの変更及び誤謬」に基づき、類似及び関連する事項を扱ったIFRS®基準を参照し、その適用を検討する必要がある。IFRS-ICは、IFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」は、サービス提供者が顧客との契約において提供する財又はサービスを識別する際の要求事項を含んでいることを指摘した。当該IFRS第15号の規定は、質問の状況において、サービス提供者が設定及びカスタマイズのサービスをいつ履行するのかを顧客が判断するうえで、類似及び関連する事項を扱っている。

c. 契約に基づく設定及びカスタマイズのサービス提供がSaaS契約のサービス提供者により行われている場合(SaaS契約のサービス提供者から他の第三者に業務が下請けされた場合も含む)、顧客はIAS第38号69-69A項を適用し、当該サービス提供者がいつ設定及びカスタマイズのサービスを履行したのかを以下のとおり決定する。

i. 顧客が受領したサービスが別個のサービスである場合、顧客は、サービス提供者がソフトウェアに対して設定作業及びカスタマイズ作業を行った時に、当該コストを費用として認識する。

ii. 設定・カスタマイズのサービスが顧客のソフトウェアへのアクセス権とは独立して識別されず、したがって別個のサービスには該当しない場合、顧客は、サービス提供者が顧客にアクセス権を付与する契約期間にわたって、当該コストを費用として認識する。

d. 契約に基づく設定及びカスタマイズのサービス提供が他の第三者により履行されている場合、顧客はIAS第38号69-69A項を適用し、当該第三者がいつ設定及びカスタマイズのサービスを履行したのかを決定する。これらの要求事項を適用するにあたっては、顧客は当該第三者がソフトウェアに対して設定作業及びカスタマイズ作業を行った時に、当該コストを費用として認識する。

e. 顧客が設定作業及びカスタマイズ作業のサービス提供を受ける前に支払いを行った場合は、前払いを資産として認識する(IAS38.70)。

また顧客は、IAS第1号「財務諸表の表示」117-124項に基づき、開示を行うことが財務諸表利用者にとって有用となる場合は、設定作業及びカスタマイズ作業のコストについての会計方針を開示します。

IFRS-ICは、2021年3月のIFRS-IC会議で、現状のIFRS基準の原則及び要求事項が十分な判断の基礎を示していると判断し、アジェンダに追加しないことを決定しました。当該アジェンダ決定は、2021年4月のIASB審議会で議論され、反対がなかったため、2021年4月に公表されました。

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