2. COVID-19が業績に与える影響

COVID-19と不正リスク第2回 - 2021年3月期の第1四半期(6月)とリーマンショック後との比較、業種別の業績動向について考察します。

2021年3月期の第1四半期(6月)とリーマンショック後との比較、業種別の業績動向について考察します。

  • COVID-19感染拡大が個人の社会行動に大きな変化をもたらしたことにより、企業が提供する財やサービスに対する需要に大きな変化(増加、減少、又は消滅)が生じ、企業の業績に大きな影響を与えています。
  • 全上場会社の売上高と営業利益の合計値により次の分析を行います。営業利益は会計基準の差異を考慮し、日本基準適用の3月決算会社のみとしています。
    • 2021年3月期の第1四半期(6月)とリーマンショック後との比較
    • 先に示した(1.COVID-19による各業界への影響)4つの分類に属する代表的な業種の業績動向

売上高と営業利益に与える影響(リーマンショック時との比較)

【注】リーマンショックは年度で、COVID-19は四半期単位で、数値を集計しているため数値の規模が異なっています。

売上と営業利益 リーマンショック
売上と営業利益 リーマンショック
売上と営業利益 COVID-19
  • 2008年9月に投資銀行であるリーマンブラザーズの破綻を契機に、世界的な株価下落と金融危機が生じ、我が国においても2008年度から2010年度にかけて多くの企業で業績の悪化がみられましたが、各国政府・中央銀行の財政・金融政策などにより2010年度を境に回復に転じています。
  • 2020年3月期(FY2019)以降のCOVID-19の感染拡大により、多くの国でロックダウン等の措置が取られたことから、2020年3月期を境に営業利益が悪化し始め、2021年3月期(FY2020)の第1四半期(6月)には売上高と営業利益が急激に悪化していることがわかります。
  • 今後の感染の拡大状況、政府等の対応、ワクチンの開発と配布の時期などの外部要因が個人の社会行動に影響を与えることから、企業の将来の業績動向については不確実性が高い状況が続いています。
     

COVID-19が業種ごとの売上高と営業利益に与えている影響

人の動きが止まることにより多くの需要が蒸発したと言われているコロナ禍ですが、売上高及び営業利益を分析すると、業種により影響を受ける度合いが大きく異なることがわかります。

1. 外食産業や航空会社等
3. 製薬会社やIT企業等
2. 自動車メーカーや建設会社等
4. アパレルや食品メーカー等
  1. 外食産業や航空会社等
    売上高、営業利益ともに、2020年3月期から急速に悪化していることがわかります。国内、海外への移動が制限されることにより、航空・外食業界に対する需要も急激に縮小した状況がみられます。2021年3月期(FY2020)の第2四半期(Q2)以降もこの状況は継続しています。2021年3月期第2四半期において通期予想を発表した企業を分析すると、航空・外食業界では35%の企業が業績予想を発表しておらず、未だ将来の業績見通しの不確実性が高く、業績の回復も遅れていることが伺えます。

  2. 自動車メーカーや建設会社等
    2020年3月期の業績悪化は見られませんでしたが、多くの企業で生産を停止していた2021年3月期(FY2020)の第1四半期(Q1)の業績の落ち込みは大きくなっています。一方で足元の基調としては、第2四半期以降、生産が開始され、抑制されていた需要が戻り、売上高、営業利益ともに回復傾向に転じています。

  3. 製薬会社やIT企業等
    2020年3月期の売上高、営業利益の減少幅は緩やかであり、2021年3月期(FY2020)の第1四半期(Q1)の営業利益は回復に転じています。医療品へのニーズやテレワークの推進等により、医療・通信業界に対する需要が追い風になっている状況がみられます。第2四半期以降もこの傾向は継続し、通信業界では業績が好調な企業もみられます。

  4. アパレルや食品メーカー等
    2020年3月期に業績が悪化し、回復基調には至っていませんが、2021年3月期(FY2020)の第1四半期(Q1)の減少幅は緩やかであり、生活必需品に対する需要が業績を下支えしている状況がみられます。第2四半期以降も同じ状況が続いています。

執筆者

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