ニューノーマル時代の地方都市交通のあり方~十勝から考える公共交通の未来

オンラインセミナー「十勝帯広リゾベーションシリーズ~北のリゾートで始まるイノベーションとモビリティ」の様子をご紹介します。

オンラインセミナー「十勝帯広リゾベーションシリーズ~北のリゾートで始まるイノベーションとモビリティ」の様子をご紹介します。

本記事は、2020年12月9日に公開いたしましたが、ご要望を受け、当時公開したセミナー動画を加え、再公開いたします。

少子高齢化と人口減少、自家用車の普及などの影響で乗客数の減少に苦しむ地方の公共交通に、新型コロナウイルス感染拡大による需要減がさらなる追い打ちをかけています。この苦境を乗り越え、「ニューノーマル」と言われる時代に公共交通が生き残っていくためには何が必要なのでしょうか?KPMGモビリティ研究所ではその答えを探るべく、当時としては先進的な手法で40年ぶりの乗客増という奇跡的な成果をあげた十勝バスの野村文吾代表取締役社長をゲストにお迎えし、同研究所アドバイザー(収録当時)でわが国における次世代モビリティサービス分野の牽引者でもある石田東生先生、同研究所所長の小見門を交えたオンラインセミナーを開催しました。

【講師】
十勝バス株式会社 代表取締役社長 野村 文吾氏
KPMGモビリティ研究所 アドバイザー 石田 東生 ※収録当時
KPMGモビリティ研究所 所長 小見門 恵

【進行役】
KPMGモビリティ研究所 パートナー 倉田 剛

1.奇跡的な再生を果たした十勝バスの取組み

お客様のニーズを汲み取る

倉田 剛(以下、倉田): 野村社長は2003年に、危機的な経営状況にあった十勝バスの社長に就任、経営改革の末、8年後の2011年には約40年ぶりの乗客増という奇跡的な復活を成し遂げられました。この改革はどのような経緯で進められたのでしょうか?

野村文吾社長(以下、野村):私が父の後を継ぐべく十勝バスに入社したのは1998年、34歳のときです。当時からすでに十勝バスの経営は危機的状況に陥っており、乗客数は減少の一途を辿っていました。ずっと「営業を強化してお客様を増やそう」と社内に呼びかけつつも、これといった手が打てずにいたのですが、2008年になって、ようやく社員の間に危機意識が芽生え、「社長が言っている営業強化というのをやってみよう」という声があがり、本格的に改革に向かって動き始めました。
とはいえ、大きく構えて始めると前に進むのが難しいので、最初は本当に小さな取組みからスタートしようということになりました。あるバス停に的を絞り、その周辺にお住まいの皆様にお話を伺うことにしたのです。すると、お客様からは「家の前を走るバスがどこに向かっているのかわからない」、「バスにはドアが2つあって、どちらから乗ればいいのかわからない」などと予想外の声が寄せられ、私たちは非常に困惑してしまいました。そう、お客様はバスの乗り方がわからないという不安感からバスに乗らなかったのです。ならば、お客様の不安を解消しようということになりまして、まずはお客様にバスの乗り方を説明する取組みを始めることにしたのです。すると少しずつではありますが、乗客数が増えてきました。
さらに、お客様とのコミュニケーションを通じて「バスは目的ではなく、移動するための手段だ」と認識されているという気付きもありました。そこで、バスそのものを説明することから、「この路線にはスーパーや銀行がありますよ」という具合に「目的」にフォーカスしたご案内を始めたところ、ますます多くのお客様にご利用いただけるようになっていったのです。同様の取組みを複数の停留所で水平展開していった結果、乗客数がなんと20%もの伸びを記録、他の路線のマイナス分をカバーする収益を上げることができ、2011年には40年ぶりに事業全体で対前年比でのプラスを達成しました。

MaaSの先駆けとも言えるアイデア

倉田:その後も定期券顧客への週末全路線乗り放題サービスや、雨の日だけ走る「雨バス」の運行など、斬新な企画を次々に展開し、2014年にはデジタル化にも着手されました。現在はどのようなことに取り組んでいらっしゃいますか?

野村:2014年に、それまですべてアナログだった取組みのIT化に着手し、まずは目的地から検索する時刻表アプリを開発しました。そして、もし他のバス会社も同じようなアプリを開発して連携すれば、十勝・帯広地域だけでなく、北海道全域どこにでもバスを乗り継いで行けるようになるのではないかと思いつき、すぐに連携を進めるべく動き始めました。今で言うMaaS(=Mobility as a service:ICTを活用し、いろいろな種類の交通サービスを、需要に応じて利用できる1つの移動サービスに統合すること)の発想だったのだと思います。とはいえ、当時はまだ周囲の皆さんにはMaaS的な発想が十分に理解されていなかったので、まずはアナログで繋がることを目指し、地域のバス会社やタクシー会社計15社で「十勝圏二次交通活性化推進協議会」を立ち上げました。そしてバス会社同士、タクシー会社同士、あるいはバス会社とタクシー会社が連携して、日帰り路線バスパックや日帰りタクシーパック、日帰りバス&タクシーパックを開発し、観光客や市民の皆様に提供してきました。
同時に自社のオープンデータ化も進め、今では当社の時刻表はすべてウェブで検索できますし、2020年10月中にはバスの位置がマップ上に表示されるバスロケーションサービスを地図アプリに掲載すべく、データ整備を進めています。また、北海道庁とともに進めている「シームレス交通戦略」では、もともと日帰りバスパックとして提供していたアナログ商品をIT化することによって、観光コンテンツと交通を繋げるMaaSの実現にも取り組んできました。さらに今年度は、生活コンテンツと交通を組み合わせた「生活MaaS」の実現を目指しているところです。今はまだアナログの段階ですが、このほど国土交通省のスマートモビリティチャレンジに採択されましたので、今後IT化を進めていきます。

2.地域や人と結びついた基盤の上にデジタルが

「町内会」づくりへのチャレンジ~十勝交通の次なる戦略

倉田:コロナの影響も大きいとは思いますが、今後はどのようなことにチャレンジされるのですか?

野村:当社の業績も概ね良好で、2018年こそ北海道を襲ったブラックアウト(大停電)の影響を受けましたが、2011年から2017年までは7年間連続で乗客数・収益ともにプラスを継続することができていました。しかし、今年は新型コロナウイルス感染拡大の影響が甚大で、他の公共交通事業者と同様、当社も大きなダメージを受けています。でも、ここで立ち止まってはいられません。この「ニューノーマル」と言われる時代を生き抜くには、バス会社であってバス会社ではない「モビリティ」になっていかねばならないとの思いを強くしています。では、具体的には何をするかというと、やはり選択と集中です。狭く深く限定したエリアに当社の経営資源、つまり、ノウハウ、人、資金のすべてを集中投下し、成果が出たら、それを水平展開していこうと考えています。そこで、まずは手始めに帯広市大空町で「大空ミクロ戦略」をスタートさせました。目指すのは、「まちづくり」ではなくて町内会づくり、コミュニティづくりです。生活様式が大きく変化しつつある、このニューノーマルの時代だからこそ、交通事業者として住みやすく、住み替えやテレワークで人が集まるエリアを創造する役割を果たしていきたいと考えています。

地域の良いものを結びつけるモビリティ

倉田:野村社長、示唆に富んだお話をありがとうございました。やはり、アナログでの信頼感があってこそのデジタルだということなのですね。石田先生、このあたりについてはどのようにお考えでしょうか?

石田 東生(以下、石田):十勝バスの取組みは、アナログとデジタル、地域の魅力とモビリティはどんな関係にあるだろうと考えるにあたっての、重要なヒントになると思っています。先ほど野村さんが住民の皆さんに、バスそのものではなく地域や目的地の案内をされたとおっしゃいましたが、地域の良いものを結びつけるのがモビリティの役割だと思うのです。十勝バスは住民との対話というアナログなコミュニケーションを通じて地域の良いものを発掘し、それをデジタル化しようとしているところが素晴らしいのです。今の時代、何でもデジタルで解決すると思われがちですが、十勝バスの取組みを見ると、地域やそこに住む人と結びついたアナログな基盤があって初めて、デジタルが花開いていくのだと実感します。考えてみると、これまでも人類はペストや天然痘などさまざまな感染症に苦しんできたわけですが、今回の新型コロナウイルスによって我々は人為的・意図的に交通を遮断するという、人類史上かつてない経験を強いられています。だからこそ長期的な視野で生活や移動について考えた上で、どのような未来構想図を持つかが問われているのではないでしょうか。
 

3.アナログとデジタル、リアルとバーチャルを総動員して作る未来構想図

求められるのは、アナログとデジタルの融合

倉田:ここからは、少しキーワードを拾いながら話を進めていきたいと思います。先ほど、アナログとデジタルの融合というキーワードが出ましたが、交通事業者がデジタル変革によって受ける影響も大きいはずです。このあたりについて、皆さんのご意見をお聞かせください。

野村:先ほども申し上げましたが、結果を出すための1番の近道は、アナログをベースにしたものをデジタルに切り替えていくことだと考えています。最近、コロナの影響で人と人が顔を合わせる機会がすごく減りましたよね。これまで、人は人と会うことを手段として目的を達してきたわけですが、これからは人と会うこと自体が目的になる時代がやってきて、新しいビジネスモデルが生まれるのではないかと見ています。例えば、交通の世界ではバスの存在意義がもう1度見直される時代になると思っています。というのも、実はバスが発展したのは、メインの乗り物が馬車から自動車に移行する時期だったからです。つまり、馬車と自動車の価格差が大きすぎて、自動車を買えない人のためにバスが登場し、発展していったわけです。今後、自動車に最先端の技術が装備されて自動運転できる車が普及すると、自動車の価格は非常に高価になり、再び一般の生活者には手の届かない存在になる可能性が大きいと思います。だとすると、馬車から自動車に移行したときと同じく、バスを始めとした公共交通の役割がもう1度求められる時代になるのではないかと考えています。
また、町内会づくり・コミュニティづくりにおいても、アナログとデジタルの融合が欠かせません。これからの時代、皆で協力しながら働く「協働」が求められる時代になるはずなので、ボランティアをどんどん組織することで、町内会づくりと連動していきたいと考えています。人があまり出歩かなくなると治安も悪化するでしょうから、見守り隊のようなボランティア組織も必要になるでしょう。それと、サザエさんに出てくる三河屋さんのような存在、つまり近所の御用聞きのような存在も求められるようになるのではないでしょうか。まさに昭和のスタイルですよね。ただし、単なる昭和のスタイルではなく、デジタル化は必須です。昭和スタイルをデジタル化して、近所でほとんどの用が足せるようになる暮らしこそ、アフターコロナ時代、ニューノーマル時代に求められる暮らしではないかと思います。そして、それを実現するのが、利用者のニーズに応じて柔軟な運行を行うデマンド交通です。デリバリー、宅配、貨物、サービスなど、生活に必要なあらゆるものを運ぶデマンド交通を運営するボランティア組織があれば理想的です。例えば、国土交通省で進めているコンパクトプラスネットワーク、これのミクロ版をいくつも作り上げて、俯瞰してみればきちんとしたコンパクトプラスネットワークができあがっているというのが、私のイメージです。これを帯広から十勝、さらには北海道中に広めていって、地方活性化に繋げていきたいと考えているところです。

世界の先進的モデルになる可能性も

石田:公共交通は英語で言うと「Public Transport」ですが、この「Public」の意味合いが日本と欧米では全く違うのです。日本では「Public=みんなが使う」という意味で捉えられていますが、欧米では「Public=政府が責任を取ること」を意味します。よく大学の先生方が日本のやり方では駄目だとおっしゃいますが、私はそんなことはないと思います。むしろ、野村さんのような方が民間で頑張っていらっしゃることが、日本の良いところなのではないでしょうか。さらに上手にやれば、世界の先進モデルになるのではないかとすら思います。だからこそ、Public Transportをどうしていくのかについて、みんなでもっと真剣に考えていくことが必要なのです。
話は飛びますが、二宮尊徳の言葉に「道徳なき経済は犯罪であり、経済なき道徳は寝言である」というのがあります。今の時代で言えば、データなきリアルというのは寝言のようなものだと思います。しかし、その一方でリアルなきデータというのは非常に非人間的であり、地域の魅力を損ねてしまうおそれがあるという気がします。やはり人間はいろんなところに行って、その空間に身を置きたいものなのです。その場の匂いを嗅ぎ、温度や風を感じたい、そういう生き物なのです。だからこそ、公共交通の未来について考えるにあたっては、やはりアナログとデジタル、リアルとバーチャルの融合が欠かせません。民間の活力と事業者の皆さんの知恵を活かしながら、地域に本当に役立つ公共交通、みんなの公共交通を作り上げることこそ、コロナ禍を公共交通が乗り越えるための非常に大きなテーマになるのではないかと考えています。

小見門 恵(以下、小見門):確かに公共交通というのは、みんなが使うものですよね。その意味で、公共交通には、皆様にリアルな体験をしていただくための「接点」としての役割もあるのではないかと思います。では、これからの時代、公共交通がどのような形になれば、皆様にとってより便利なものになるのでしょうか?それを考えるためには、ユーザーの気持ちや意見をきちんと吸い上げていくことが欠かせません。まずは野村社長のおっしゃるように小さな取組みから始めて、そこで成功したことをどんどん他に展開していくことが大切です。地域にとって大切な公共交通を守っていくために、私たちもぜひ何らかのお手伝いをさせていただきたいと願っています。

合意形成にはアナログ体験と不安感の払拭が不可欠

倉田:続いては、住民合意をテーマに話を進めたいと思います。先ほど野村社長に、まず住民の皆さんの声に耳を傾けることで合意形成をされたというエピソードをお話しいただきましたが、人口の多い都市部と十勝のような小さな町では、住民合意のあり方に何か違いがあるのでしょうか?

野村:前職ではリゾート開発会社で企画宣伝を担当していた関係で、マスメディアについてはよく理解していましたので、当初は地方でも住民の皆さんとの合意形成にはマスメディアが有効だと思っていました。しかし、あるとき帯広市内で戸別訪問をしたのがきっかけで、地方で住民の皆さんの合意を得るにはマスメディアではなく「口コミ」が非常に重要であることに気付かされました。もちろん市内の全戸を回れたわけではないのですが、訪問を続けているうちに「十勝バスの社長がうちに来たのよ」と市民の皆さんの間で話題になり、口コミで当社の取組みが伝わっていくようになっていったのです。このときの経験から、住民の皆さんからの合意をいただくには、口コミで伝わるレベルまでコツコツと周知を進めることが必要だと実感しています。
ただ、最近はコロナ禍の影響で明らかに人に会う機会が減り、口コミが伝わりにくくなっていますから、これまで以上にアナログの取組みが必要になってくると思います。当社では、介護事業や生活支援便利事業、学童保育事業などを立ち上げていて、それらを先ほどの「大空ミクロ戦略」のエリア内で展開することによって、リアルでユーザーの皆様にお会いする場を作り、常に積極的な対話を図っていこうと考えています。

石田:地方・都市部に関わらず、合意形成をするには、やはり住民の皆さんにMaaSの効果を皮膚感覚で実感していただくのが1番です。しかしこれが難しい。リアルでもバーチャルでもよいので、我々が持っている知識やデータを総動員して取り組まないと駄目だな、と最近感じています。

小見門:住民の皆さんの合意を得るには、口コミでもSNSでも、誰が何の目的で、誰のために何をしようとしているのかをしっかり伝えていかねばなりません。そして、野村社長が住民の皆さんのバスに対する不安を解消したように、住民の合意形成においては「変化に対する不安感」を取り除いていくことが大切だと思います。MaaSについても、今、全国でいろいろな実証実験が行われているので、その成果を直接関わっていない人たちにもきちんと伝えていくことができれば、少しずつ状況が変わっていくのではないでしょうか。

地方都市で公共交通が生き残るために必要なものとは?

倉田:では、最後に地方都市で公共交通が生き残っていくためには何が必要なのかについて、ご意見をお願いします。

小見門:地方は物理的にカバーする地域が広いのにユーザーが少ないので、公共交通を商業ベースに乗せてお金を回していくのは非常に難しくなっています。特に野村さんがおっしゃっていたような町内会のサイズのコミュニティの場合は、回せるお金も少ないので、維持が難しくなるおそれがありますよね。例えば何か財源を確保するとか、複数のコミュニティ間でデータを連携するなどの工夫をしていくことが重要なのではないでしょうか。

野村:そうですね。おっしゃるとおり、いろいろな施策を重ねてやっていかなければならないと思っています。例えば、どうしても公共交通が必要なエリア、そこまで必要ではないエリアなど、エリアごとの色分けが必要でしょう。それには、石田先生がおっしゃったように住民の皆さんからの了解が不可欠であり、皆さんとの「協働」が欠かせません。いろいろな人が協働しながらお互いの理解を深め、エリアを分けて取り組んでいく必要があります。そして、この「エリアを分ける」という発想は行政も取り入れるべきだと思っています。あっちのエリアにはあって、こっちのエリアにはないというのは、今の行政には馴染まない考え方かもしれません。しかし、石田先生がおっしゃってくださったように、我々民間も頑張っていますが限界があります。これから公共交通を守っていくために、行政と民間がどのように役割分担していくのかを今一度、考え直す時期にきているのではないでしょうか。都市政策・交通政策、デジタルとアナログ、さまざまな政策をしっかりと重ね合わせて、より綿密に地域のデザインをしていかねばなりません。
そして何より我々公共交通事業者が、もっと積極的に異業種と連携していかねばならないと思っています。異業種との連携が進めば意識改革が生まれ、その次のステップとして同業他社との連携もスムーズになるはずです。そうして最終的にあらゆる交通モードが連携していけば、それが結果としてMaaSになるのだろうと、私は考えています。

石田:私は経営のことはわからないので、どうしても政策や制度の話になってしまいますが、地域には結構モビリティ資源があると思っています。十勝にも十勝バスがありますし、物流業者もあります。病院や企業の送迎バスやスクールバス、何より自家用車がたくさんありますよね。これらはすべてモビリティ資源です。でも、残念なことにせっかくの資源を十分に活用できていません。この話を国土交通省の方にしますと、「スクールバスは文教部局、病院は医療、老人バスは福祉です」と分けて考えてしまって、全体像が見えていないのです。スクールバスは朝と夕方以外は使わないのだから、もっと自由にモビリティ資源として活用すればよいのに、組織が縦割りになっているので制度的に使えないのです。実に残念なことですね。野村さんを始め、民間企業が頑張ってくれているのだから、行政はその頑張りを支援できるような制度の再設計に取り組まねばならないと思います。
今、新型コロナウイルスの影響で、地方だけでなく東京の交通事業者も利用者が減って、非常に苦しい状態になっています。これは見方を変えると、現状の公共交通のシステムや料金は混雑を前提としたものだったということでもあります。これからは、そういうことも含めて、公共交通のあり方を議論していかなければなりません。同調性が高くて辛抱強いのは日本人の美徳ですが、これから地域を良くして生活を豊かにしていくために、もっといろいろな人に声をあげていだきたいなと思っています。

4.KPMGモビリティ研究所が提供する価値

ネットワークを活かしたインテグレーターとして、コロナの転機をポジティブに

倉田:なかなか正解が見いだせない領域だとは思いますが、この難題に立ち向かうにあたって、私たちKPMGモビリティ研究所としてどのような価値が提供できるかについてお話しください。

小見門:KPMGモビリティ研究所はグローバルに広がるネットワークを活用し、複数の産業分野にまたがる課題について、大企業やスタートアップ、行政、教育機関と連携して持続可能な解決策を検討する機関として、モビリティを中心とした新産業分野における新たな価値の創造、より多くの人が幸せに暮らせる社会の実現に貢献していきます。
特に公共交通の抱える課題についてはインテグレーターという立場で、交通事業者の皆様やモビリティ革命に関与するさまざまな企業や自治体の皆様のお役に立ちたいと考えています。具体的には今、社会が変わっていく中で、多くの事業者の皆様がいかに商業ベースに乗せるかというところで悩んでいらっしゃるので、会計系のファームであるという強みを活かし、お金が回る仕組みまで含めて、持続可能なビジネスモデルを作っていくことに貢献していきたいですね。
本日のお話でも明らかになったように、コロナ禍の影響で人の考え方、移動や生活の仕方が大きく変わってきています。変化には困難も多く伴いますが、この機会をポジティブに利用すれば、新たな世界が見えてくるのではないでしょうか。KPMGモビリティ研究所でもこの機会を活かして、さまざまな事業者やプレイヤーの方々に向け、新たな価値の創造に取り組んでいきたいと考えています。

    

講演動画

※本動画は、2020年9月25日に開催したオンラインセミナー「十勝帯広リゾベーションシリーズ~北のリゾートで始まるイノベーションとモビリティ(1) ニューノーマル時代の地方都市交通のあり方」の講演動画です。

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